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どうやってウイルスが私たちのうわべの礼儀正しさを取り去ったのか

2020年、2月8日、上海のショッピングモールにて、警備員が男性の体温を確認している(AFP)
2020年、2月8日、上海のショッピングモールにて、警備員が男性の体温を確認している(AFP)
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09 Feb 2020 08:02:59 GMT9
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コーネリア・メイヤー

コロナウイルスがもたらす本当の経済的打撃がどうなるのか、正体が明らかになりそうである。中国はグローバルサプライチェーンの中心であり、グローバルな組み立てライン用に製品を生産する工場の閉鎖は、世界経済に影響するだろう。

車メーカーのヒュンダイは、すでにいくつかのプラントを閉鎖しなければいけなかった。世界中の他社もそれに続いた。輸送において石油は第一の燃料であるため、中国へ向かう、そして中国発の欠航便と、数百万に及ぶ未出荷の製品が石油価格を経済的混乱へと向かわせている。1月上旬と比べ、1バレル当たり14ドル以上の値下げである。

ウイルスの全体的な評価は困難であるが、流行が社会や人間の相互作用に与える影響よりも簡単に計算できるその経済的な影響については、これだけである。

最初にウイルスが同定された武漢と近隣の湖北省は封鎖下にある。誰も入れず、誰も外に出られない。中国のその他の地域では封鎖は若干緩和されている。北京や上海の街路に人通りは無く、紫禁城では観光客の立ち入りを禁じている。多数の出稼ぎ労働者は仕事場に戻ることができない。もしできたとしても、彼らの工場は閉鎖したままだろう。彼らは必要な収入を見送るしかない。

香港のいくつかの国境は封鎖された。中国本土から香港に戻る住民は数週間隔離されることになっている。隔離から免れた場合は懲役刑を受ける。

日本沿岸の2隻のクルーズ船と香港を出港した1隻は2週間の隔離中である。乗客たちは優雅な休暇の代わりに実質的に投獄されたようだと訴えている。

このアウトブレイクから一つ我々が学べることがあるとすれば、それは私たちの多文化社会における寛容さはカミソリの刃のように薄いということだ。

コーネリア・メイヤー

人々と同じく、政府も恐れている。世界保健機関事務局長のテドロス・アダノムがウイルスの拡散について警告を発した際、彼はWHO加盟国に対して連帯を要請した。多数の政府は同情するよりも安全でいる方が良いと考え、フラッグキャリアに対し中国へのフライトを運行停止するよう指示した。

このアウトブレイクから一つ我々が学べることがあるとすれば、それは私たちの多文化社会における寛容さはカミソリの刃のように薄いということだ。中国のような、中央政府が運営する国がウイルスが持つ公衆衛生への脅威を封じ込めるために厳しい基準を適用することは、驚くべきことではないかもしれない。中国政府は基準を押し付けるもっともな理由がある。人民を保護しなけれないけないのだ。

日本は異なるケースである。国民の面倒をみることに誇りを持つ国なら、普通なら情報も同情も無しに何千人もの人をクルーズ船の上で漂流させることはない。しかし日本の識者は公衆衛生における社会全体の利益を主張したかもしれない。つまり、多数を安全にするのか、少数の市民的自由かということだ。

ヨーロッパではより複雑な状況になっている。これまで、いくつかのウイルスの報告はあったが、保健当局がコントロールしているようだ。武漢から帰国した英国市民の送還と、その後の人道的で快適な環境での検疫が良い例だ。

しかし、アジア系の風貌をしている人々は路上で野次を受けており、いくつかの英国の大学の中国人学生は他の学生からのいじめを訴えている。中央ヨーロッパのある国では、レストランのオーナーは、彼らがベトナム人であって中国人ではないことを宣伝する必要性を感じた。

人々が恐れる時、普段は支持している寛容さや包摂性など、高尚な原則を忘れがちである。これは、私たちが信じているのは私たちは何者なのかである、ということを忘れないように二重に注意する必要があるということだ。 困難な状況に陥ったとき、簡単に核となる価値観を捨てすぎることのないように気をつけなければいけない。

・コーネリア・メイヤーはビジネスコンサルタント、マクロ経済学者、エネルギー専門家である。Twitter: @MeyerResources

免責事項:このセクションで著者が表明した見解は独自のものであり、必ずしもアラブニュースの視点を反映するものではありません

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