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アラブ・イラン対話、ドーハで前進

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31 May 2023 09:05:45 GMT9

今週ドーハで非公式のアラブ・イラン対話が3日間開催された。大部分は非公開で行われたこの会議は特別な意義を持つものとなった。新しい諸展開によって、我々が新たなはじまりの前に立っているかもしれないということが示された直後に開催されたからだ。

イラン側の参加者は元政府関係者のほか、大学や半官半民機関のハイレベル代表などだった。彼らは同国の地域政策について様々な視点を提供した。彼らの大半は関与・和解・協力への新たな意欲を表明した。また、イランの核開発計画に関して湾岸協力理事会(GCC)と協議を行うことを初めて受け入れた。さらに、地域のいくつかの問題に関して柔軟性を示した。それはメインの会議の傍らで行われた話し合いの際に特に顕著だった。ただ、過去にこだわっているように見える人や、新たな案を提示しない人もいた。

1979年に革命が起きて、その革命を輸出するという目標が宣言されて以来ほとんどの期間、イランと各国の関係は困難なものだった。イランはそれ以降、自国のモデルを地域の一部に輸出することに成功したが、同国と近隣諸国の両方にとって悲惨な結果をもたらした。イラン経済の軍事化や国外事情のもつれのせいで国民は貧しくなり、かつて栄えた国は崩壊の瀬戸際に立たされた。イランが関与しているシリアやイエメンなどの国の状況はもっと悪い。

5月18日にジェッダで開催されたアラブ連盟首脳会議は、地域のエスカレーション抑制に向けイニシアティブを取った。その目的に向け、イエメン、シリア、イラク、レバノンなどイランが関与する地域の危機のいくつかの沈静化を試みるとともに対話と和解を促進するべく、イランに対する立場が再検討された。イランの緊密な同盟者であるシリアのバッシャール・アサド大統領が招待されたのもそのような努力の一環だった。この首脳会議の議長国を務めたサウジアラビアは2024年の次回首脳会議までアラブ連盟を率いるため、ジェッダで下された決定の実施を形作る機会を得ることになる。

サウジアラビアとイランは3月、中国の支援のもと、7年間断絶していた国交を再開することで合意した。この外交的ブレイクスルーは地域全体に衝撃波を広げ、アラブ連盟首脳会議で採択された和解的立場への道を開いた。両国は北京で出した共同声明の中で、単なる国交再開の域を超えて、「各国の主権、およびその内政に対する不干渉」という、イランとの対立の背景にある2つの重要な原則へのコミットメントを強調した。このコミットメントを行うことにイランが同意したという事実はもう一つのブレイクスルーだった。

アラビア湾の両岸では、地域が比較的平和で安全で安定した状況の中にあった過去の時代に戻ろうという切なる声が大きく上がっている。両岸で同じ部族や家系が何世紀もの間ずっと暮らし、豊かな文化的関係や盛んな経済的関係を享受した時代があったのだ。

しかし、過去40年の間に状況は複雑化した。双方の間に大きな不一致が存在している。一方で、双方は同じ空間を共有し、同じくらい重要な経済的・戦略的利益を共有しているため、それらの不一致に対処することが必要不可欠となっている。一致が難しいそれらの問題に関しては、国家間関係についての国際的な基準・規範に従って政治的かつ平和的に対処する明確な方法があるはずだ。

アラブ連盟首脳会議は、アラブ地域の安全保障が不可分であることを強調した。湾岸地域の安全保障はアラブ地域の安全保障の不可欠かつ重要な一部であり、同様にアラブ諸国の安全保障も湾岸地域にとって重要なものである。イランはこの事実に困惑している。同国がシリア、レバノン、イエメンなどのアラブ諸国を支配していることをGCC諸国が懸念している理由を理解していないのだ。また、アラブ諸国において民兵組織を作って資金や武器を提供することを控える必要性も分かっていない。これらの組織が武力で権力を掌握し深刻な人権侵害に関与しているにもかかわらずだ。

イランと湾岸諸国の間には国際的な安全保障協力をめぐる深刻な不一致も存在する。GCC諸国はいくつかの重要な安全保障パートナーシップの積極的なメンバーである。38ヶ国の活動を調整して非国家主体による海賊行為や密輸などの違法活動と闘う「合同海上部隊」もその一つだ。

アラビア湾の両岸では、地域が比較的平和で安全で安定した状況の中にあった過去の時代に戻ろうという切なる声が大きく上がっている。

アブデル・アジーズ・アルウェイシグ博士

イランは逆に、外国の安全保障上のプレゼンスに激しく反対しており、植民地主義や外国による支配を終わらせろといったポピュリスト的言説を用いている。

エスカレーション抑制の維持を視野に、地域諸国間の関係を規定するルールや信頼構築手段について合意することを通して、喫緊の懸念事項に関する実のある協議を成功させるための舞台を入念に整えなければならない。これらの問題は相互につながった5つのルートに沿って話し合うことができるだろう。

政治・外交ルートは、パレスチナ、シリア、レバノン、イエメンなどの地域的問題に関する協議をカバーする。政治的目標実現のために武力や脅迫を用いることなく、国連決議に従った政治的解決を促進することが目的だ。また、特に非国家主体への核、ミサイル、ドローンの拡散の問題を扱う。

安全保障ルートは、テロ、宗派的民兵組織、法律の外で活動するその他の武装組織をカバーする。

経済ルートは、再生可能エネルギーを含む貿易・投資の機会を探る。

持続可能性ルートは、気候変動を抑制し湾岸の海洋環境を回復させるための取り組みにおける協力の可能性を探る。

最後に、文化ルートでは歴史的に豊かなアラブ・イランの文化交流の復活について議論できるかもしれない。

この取り組みの成功を確実にするためには、政府チャネルと、企業グループ、大学、研究施設などの非政府チャネルの両方で議論を行う必要がある。

イランとその近隣諸国が必要な信頼と協力・統合の精神を回復することができれば、GCC諸国が過去数十年に経済、社会的発展、教育、文化、芸術などの点で実現した大きな前進をより強固で包括的で持続可能なものにすることができる。そうなればイランは、GCC諸国が既に手にしているのと同じ統合のメリットを得ることができるだろう。

  • アブデル・アジーズ・アルウェイシグ博士はGCC政治問題・交渉担当事務次長で、アラブニュースのコラムニスト。本記事で表明されている見解は個人的なものであり、必ずしもGCCの見解を代表するものではない。

    ツイッター: @abuhamad1
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