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コロナウイルスで見通しが暗いにも関わらず、先週原油が反発したのはなぜか

中国の上海の洋山港の石油貯蔵庫で見られる石油タンク。(ロイター通信/資料写真)
中国の上海の洋山港の石油貯蔵庫で見られる石油タンク。(ロイター通信/資料写真)
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18 Feb 2020 09:02:21 GMT9
18 Feb 2020 09:02:21 GMT9

コーネリア・マイヤー

先週、市場がしばしば冷徹な厳しい事実よりも、感情や直感的見通しに反応しがちであることがまたもや証明された。

コロナウイルスの流行は、石油需要に深刻な影響を与えている。これは、先週石油輸出国機構(OPEC)と国際エネルギー機関(IEA)の両機関が発表した見通しで明確になった現状だ。

IEAは今年の需要予測を1日36万5,000バレル(bpd)引き下げ、82万5,000 bpdとし、2011年以降最低となった。また2020年第1四半期については石油需要が43万5,000 bpd下落すると見込んでいる。

OPECの下方修正幅はあまり劇的ではなかった。石油需要は2020年に99万 bpd増加すると予測し、これには23万 bpdの下方修正幅が含まれている。

2つのレポートは、コロナウイルスの悲観的なニュースの中で発表された。中国の石油需要に与える影響は厳しく、精油所のランレートは300万bpd程度減少している。ウイルスの影響で、今年第1四半期には中国で110万bpd減少し、第2四半期には34万4,000 bpd減少する見込みだ。これらは全てIEAに基づく。

状況は、複数のサプライヤーが市場シェアを維持するために、東向けの貨物の石油価格を割り引くのもいとわないほど深刻になってきている。S&Pグローバルによると、これは主にブラジル、ロシア、アンゴラに影響を与えているという。

これらの数値は、コロナウイルスの拡大が世界のサプライチェーン、特に自動車と技術分野に与えてきた影響に注目すると、理にかなっている。ヒュンダイは韓国の工場を、クライスラー・フィアットはセルビアの工場を閉鎖した。ヒュンダイ自動車はアメリカの生産ラインとイギリスの複数の工場が部品不足により営業時間を短縮したことを懸念している。

アップルは特に影響を受けており、部品の製造やiPhoneの組み立てを行っている同社の中国の複数の工場で、旧正月以降の再開に遅れが生じている。仮に再開するとしたらではあるが。

世界経済の展望は暗い。1月に、国際通貨基金(IMF)は2020年の世界の経済成長率を0.1%引き下げ、3.3%とした。これはコロナウイルス懸念が露になる前の数値だ。

日曜日、IMFのクリスタリナ・ゲオルギエバは専務理事が、成長率を0.1%から0.2%さらに引き下げることを表明した。同時に彼女は、現時点ではウイルスがどのような展開をするのかあまりに不確かなので、軽率な予測をすることに警鐘を鳴らした。

コロナウイルスの経済的影響がどのように展開するかによっては、60bpdの減産は効果があるかもしれないし、市場のバランスを取るかもしれない

コーネリア・マイヤー

ウイルスの影響は2つの要素から成る。1つは長期的なもので、もう1つは最悪の状態が終わった後のリバウンドにつながるものだ。前者は中国の旧暦の新年を通じた消費や旅行、観光の落ち込みで、1度に打撃を与えるもので、取り戻すことはできない。

2つ目の影響は、世界のサプライチェーンにおける生産の落ち込みだ。業界は、時間と共に発生した在庫の帳尻を合わせることになる。そのうち、恐らく予想を上回る石油、それも輸送用のプレミア燃料の需要が生じることにつながるだろう。配送が再開し、工場では在庫の埋め合わせをする必要が出て来るからだ。

では、短期的な見通しがこれほど暗い一方で、石油価格が上昇したのはなぜだろうか?事の展開は、その他のほとんどのコモディティ、特に銅で見られた動きとは逆になった。ブレントは1バレル当たり3.6ドル以上値上がりし、週当たりでは7%近く上昇した。価格はそれ以降少し下落したが、月曜日のアジアの前場の取引ではブレントで1バレル当たり$57.39に達した。

答えは単純だ。短期的展望はマイナスである一方で、アナリストやトレーダーは今後のOPECプラス会合に期待している。これはOPECの加盟国とロシアをはじめとする10の協力国で構成されるグループだ。

大臣らは3月5日と6日にウィーンに集まる予定で、アナリストの大半は、今月これまでに開催された作業部会の提言に従うことになると予想している。この部会では、同グループはさらに60万bpdの減産を行うべきと取り決めた。これは、昨年12月にOPECプラスが決めた170万bpdの減産幅をさらに拡大するものだ。別の会合が予定されている6月まで、最大230万bpdの減産が続くことになるはずだ。

コロナウイルスの経済的影響がどのように展開するかによっては、60万bpdの減産は効果があるかもしれないし、市場のバランスを取るかもしれない。しかし、事の展開に影響を与えうるその他の要素もある。

1つは、リビアの政治的・国内の緊張で、同国はこれ以上石油を輸出できなくなっている。ベルリン・プロセスで今後、今四半期中に望ましい成果を得ることができた場合、リビアの生産やその輸出は再開され、供給過剰に拍車をかけるかもしれない。

2つ目に、アナリストはOPECプラスが3月にどのようなやり取りをするのか、様子を見ることだろう。サウジアラビアは3月への会合繰り上げを希望していたが、ロシアは緊急性がないと拒否した。ロシアはこれまでのところ、OPECプラスの会合を前に何度も強気の発言を繰り返してきた。最終的にロシア政府は折れ、市場のバランスを保つために求められる行動の一翼を担うことに同意した。

3月の会合に変化は全くなさそうな気配が濃厚で、これはまさにトレーダーが期待していることである。もしそうならない場合は、原油価格が3月6日以降下落することが見込まれる。

  • コーネリア・マイヤーはビジネスコンサルタント兼マクロ経済学者で、エネルギーの専門家である。ツイッター:@MeyerResources
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