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バイデンのアラブ・アメリカ「パートナーシップ」はどのようなものになるのか

2020年7月28日、アメリカのデラウェア州ウィルミントンでの選挙運動イベントで、人種的不平等と闘う計画について語るジョー・バイデン。(ロイター通信)
2020年7月28日、アメリカのデラウェア州ウィルミントンでの選挙運動イベントで、人種的不平等と闘う計画について語るジョー・バイデン。(ロイター通信)
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14 Jan 2021 10:01:37 GMT9
14 Jan 2021 10:01:37 GMT9

レイ・ハナニア

ジョー・バイデンは来週、アラブ系、ムスリム系、パレスチナ系アメリカ人有権者の支持を受け、宣誓式を行って第46代アメリカ大統領に正式に就任する。しかし、重要な問題は残る。バイデンへの投票は、多くのアラブ系やムスリムの非難を受けた退陣政権に対する単なる抗議だったのか、あるいは、彼ならアラブ世界全般や特にパレスチナ人に対して実際に変化をもたらせるという確信によるものだったのだろうか?

バイデンが、昨年にはアラブ系アメリカ人が「歴史的」と呼ぶ、6ページに及ぶアラブ社会との「パートナーシップ計画」を発表し、これまでの政権と比べるとより少し広く扉を開いたことは明らかだと、私は考える。バイデンがこの文書で表明したようなやり方で、アラブ系アメリカ人の不安に直接対処した大統領候補は他にはいない。

しかし、これの本当の意味は何だろう?確かに、バイデンは迅速に動き、複数のアラブ系アメリカ人を政権の主要ポストに指名した。しかし、指名を受けたこれらの人々は、自分たちにどのようなことが期待されているのかについて、アラブ系アメリカ人に対する明確な言及を控えている。そして彼らは既に親イスラエル運動の攻撃に晒されている。親イスラエル運動は、「反イスラエル」的な意見を抱いているとして、彼らを非難している。ほとんど誰も問いただすことができない、アメリカ政治の中の聖なる機関だというのだ。

バイデンの「パートナーシップ」文書は、より自由な移民の形の支持など、いくつかの重要な問題に言及している。トランプが、「ムスリム入国禁止令」と表現する措置を利用して移民を規制し、イスラム教徒が大半を占める6ヶ国からの入国を停止した一方、次期大統領は、これは「倫理的に間違っている」とし、禁止令を終了することを公約した。また、引き続き市民権を求めて闘うアメリカ不法移民の子どもたち、いわゆる「ドリーマーズ」に対する保護の強化も約束した。

バイデンは、「アラブ系アメリカ人を標的にし、社会全体に疑念を投げかける差別的政策」と闘う計画も約束した。これらはどのような政策なのだろうか?多くの民主党議員を含め、米国議会の親イスラエル系議員から非難されてきた、1948年のパレスチナ人のナクバに関する事実の歪曲など、反アラブ人種差別を声高に非難するのだろうか?

2001年9月11日のテロ攻撃の後、アメリカではアラブ人とイスラム教徒に対する差別が高まったが、その多くは沈静化した。しかし、9・11後の数週間に、「中東人」である、あるいはそのように見えるという理由で何十人ものアメリカ人が殴られたり、殺害されたりしたことを認めなかったアメリカ議会の失敗の埋め合わせについては、何も行われていない。バイデンは、テロへの関与が疑われる個人を対象とした国土安全保障省の搭乗禁止リストや監視リストを見直し、外見に基づく容疑者の人種プロファイリングを終了すると発言している。

また、今後のアメリカ国勢調査に「中東および北アフリカ」の区分を導入することを支持するとも語っており、これはアメリカのアラブ人の特定を促すことになるだろう。10年ごとに行われている国勢調査では現在、22の人種・民族集団が記載されている。これらの統計は、何十億ドルもの助成金や資金を、記載されている民族・人種集団に配分するのに役立てる目的で活用される。

バイデンのパートナーシップ文書は、よく読むと、実はアラブ人だけではなく、あらゆる人々の市民権の保護に関して、多くの肯定的な表現に満ち溢れている。最も重要な部分は、一番冗長ではなく「世界全体での民主主義と人権の擁護」と題されている。これは、イスラエルが非ユダヤ人市民に対して差別する時に、イスラエルを検閲することを意味するのだろうか?バイデンは占領下で生活するパレスチナ人の権利のために立ち向かうのだろうか?彼は「紛争地」ではなく「占領地」と呼ぶことで、中東紛争用語を現実に即したものに戻すことになるのだろうか?

バイデンは、ボイコット、投資撤収、制裁運動を支持する人に対する罰則や契約上の制限を求める30以上の州が可決した法律に声高に反対するだろうか?違法かつ人種差別的な入植者の動きによって奪われたパレスチナ人の土地の搾取を理由に、イスラエルをボイコットすることの問題は、アメリカや世界で大きな論点となってきたが、バイデンの文書の中では取り上げられていない。

バイデンのようなやり方で、アラブ系アメリカ人の不安に直接対処した大統領候補は他にはいない。

レイ・ハナニア

次期大統領には、自分が守ると発言していることについては全て守ってもらいたいと思う。これまでの多くの大統領は、同じ公約を口にし、その後守れなかった。

アラブ系アメリカ人に尋ねないといけないのだが、我々は本当に何を期待しているのだろうか?バイデンは、勇気を持ってイスラエルの人種差別的政策に抵抗し、パレスチナ人がエルサレムを首都とする独自の主権国家を持つ、二国家解決を実現するだろうか?あるいは、アラブ人、イスラム教徒、パレスチナ人ら全てを、これまでの政権、つまり、パレスチナ人の権利を保護したり、アラブ世界の民主主義を擁護したりするために、実質的には文字通り何もしなかった指導者らの時代に、単に逆戻りさせるだけだろうか?
どんなアメリカ大統領でも、それはあまりにも期待し過ぎだというのなら、こう尋ねなければならない:それに何の意味があるのだ?

  • レイ・ハナニアは、受賞歴のある元シカゴ市役所の政治記者でコラムニスト。お問い合わせは彼の個人的なウェブサイトHanania.comまで。Twitter:@RayHanania
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