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国連人権問題担当高官、ガザ地区での残虐行為の「極めて現実的な」危険性を安全保障理事会に警告

(AFP)
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イスラエルとパレスチナのハマス運動との間で現在も進行している戦闘の最中に、イスラエル軍の空爆で損壊したガザ地区内最古のモスクであるガザ市のオマリ・モスク。2024年1月5日。(AFP)
イスラエルとパレスチナのハマス運動との間で現在も進行している戦闘の最中に、イスラエル軍の空爆で損壊したガザ地区内最古のモスクであるガザ市のオマリ・モスク。2024年1月5日。(AFP)
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13 Jan 2024 08:01:56 GMT9
13 Jan 2024 08:01:56 GMT9
  • 国連のイルゼ・ブランズ・ケリス人権担当事務次長補は、パレスチナ人に立ち退きを強制する事は強制移転に相当し「戦争犯罪」足り得ると語った
  • 国連のマーティン・グリフィス人権問題担当事務次長は、停戦の呼びかけと、安全保障理事会に対する戦争終結のための緊急行動の要請を繰り返した

ニューヨーク:イスラエル指導者層の一部による他国へのパレスチナ人の恒久的な移住を求める「扇動的な発言」により、パレスチナ人が意図的にガザ地区から放逐され帰還を禁じられるのではないかとの不安が広がっている。国連で主導的な役割を果たしている人権問題担当の高官は、1月12日、安全保障理事会に対して、「看過してはならない」と述べ、パレスチナ人への退去の強制は戦争犯罪足り得るとの警告を発した。

国連のイルゼ・ブランズ・ケリス人権担当事務次長補は、安全保障理事会の各理事国に対して、「10月7日の恐ろしい襲撃についての説明責任をハマスが果たさなければならない点が忘却されることがあってはなりません」と語った。

しかし、強制移住の脅威は、パレスチナ人に「特別な感情」を呼び覚ますとブランズ・ケリス事務次長補は付言した。

「数百万人ものパレスチナ人が自宅住居を追われれた1948年のナクバ、または『大惨事』と呼ばれる事件によって、強制移住の脅威はパレスチナ人の集団意識に焼き付けられています」と、ケリス事務次長補は語った。

ケリス事務次長補は、アルジェリアの要請を受けて開かれた安保理の会合で、パレスチナ人がガザ地区で直面している強制移住の脅威について発言した。

大規模退避は、イスラエル当局が、軍事力行使に先立って10月12日に、ワディ・ガザ以北に居住する民間人に対して、自宅を離れ南部に向かうよう勧告したことから始まったと、ケリス事務次長補は述べた。

「イスラエル側は退避勧告はパレスチナの民間人の安全のためだと述べましたが、そうした移転が国際法に準拠していることを確実とする、適切な衛生や健康、安全、栄養、避難所へのアクセスの確保、さらには家族が離散する危険性を最小限にする方策といった措置をイスラエル側はほとんど講じていません」と、ケリス事務次長補は語った。

「したがって、このような強制退避は、合法性を確保する必要条件を満たしていないため、強制移転すなわち戦争犯罪足り得ます」

「イスラエルの避難勧告は、しばしば紛らわしく、いわゆる『人道地帯』や『既知の避難場所』への移動を民間人に求めています。そうした場所の多くが、その後、イスラエルの軍事作戦中に攻撃されています。また、避難所には避難民を受容する余力が既に無いという状況にも関わらず、そうした退避勧告が出されるのです」

ガザ地区の人口の90%以上が深刻な食料不足に苦しんでおり、その多くが「本来は回避可能な、人為的な」飢饉の危機に瀕しているとケリス事務次長補は付言した。戦争戦術として、民間人を飢餓に追いやることは国際法で禁止されていると、同事務次長補は強調した。

「容認出来ない高い民間人の死傷率や必要不可欠な民間インフラのほぼ完全な破壊、人口の圧倒的大多数の強制退避、220万人が耐えることを強いられているこの忌まわしいほど非人道的な状況は、戦争犯罪が行われている可能性について深刻な懸念を抱かせます。また、より一層重大な国際法違反や、さらには残虐行為の危険性すら現実化しかねない状況なのです」と、ケリス事務次長補は語った。

「パレスチナ人たちは、エジプト国境沿いのガザ地区の最も狭小な区域に押し込まれています。援助が不十分なため基本的なサービスの提供が崩壊した過密で悲惨な人道的危機の状況に置かれたパレスチナ人たちの間では、今後、飢餓と病気が蔓延すると考えられています。他方、ガザ地区中部とハーン・ユーニスは継続的な空爆の対象となっており、累積的にさらに大規模な退避が発生する危険性が高まっています。場合によっては、大規模な退避は国境を越える可能性すらあります。人々が安全と安心を切望している現在、これは安保理が注意を払うべき危険性です」

パレスチナ人が自身の土地の自宅に帰還する権利には「鉄壁の保障」が与えられなければならないと、ケリス事務次長補は付言した。

国連のマーティン・グリフィス人権問題担当事務次長は、ガザ地区の人口構成に変化を加えようとするあらゆる試みは、「断固として拒否」されなければならないと安保理の各理事国に警告した。グリフィス事務次長は、ガザ地区での戦争を、「民間人への影響がほとんど考慮されない」まま行わている戦争であると特徴づけた。

イスラエルのガザ地区に対する容赦のない軍事力の行使はほぼ100日間に及び、数万人が死傷し、その大部分が女性と子供であると、グリフィス事務次長は述べた。ガザ地区の総人口の85%に当る190万人の民間人が強制的に退避させられ、心的外傷を受けた人々は爆弾やミサイルが雨のように降り注ぐ中、逃げ惑い続けなければならなくなっていると、グリフィス事務次長は付言した。

グリフィス事務次長は、避難所から人々が溢れ、食料と水の供給が減少し、飢餓の危険性が増大していると現状を言い表した。ガザの医療制度が崩壊の危機に瀕しており、その結果、女性の出産や子供たちを対象とした予防接種、病人や負傷者の治療といった病院の業務を安全に行うことが出来なくなっているとグリフィス事務次長は述べた。感染症は増加の一途を辿っており、人々は病院の敷地を避難場所とすることを余儀なくされていると、グリフィス事務次長は付言した。

「ガザ地区に安全な場所はありません」と、グリフィス事務次長は語った。「人間としての尊厳ある生活はガザ地区ではほぼ不可能になってしまっています」

ガザ地区北部に人道支援物資の車列を派遣する取り組みは、遅延や許可の拒否により難航しており、援助活動の従事者は危険に晒されているとグリフィス事務次長は付言した。

「人道的通知システムが尊重されていないため、援助活動の従事者のあらゆる移動が危険にさらされています」と、グリフィス事務次長は語った。

「最近数日間に、何とか北部にたどり着いた、援助活動の同僚たちは道路には死体が放置され、明らかな飢餓の兆候がある人々が生存のために手に入るものを求めてトラックを止めるといった酷く恐ろしい光景について語っています」

「そして、たとえ人々が自宅に戻れる状況になったとしても、多くの人々にはもはや帰還する家屋自体がありません」

ガザ地区全域への人道支援の提供は、最重要となっている地域へ到達する手段が制限されていることからほぼ不可能と考えられるとグリフィス事務次長は述べた。戦闘がさらに南方へと拡大を継続した場合、近隣諸国へ大量の避難民が溢れ出すことがあり得るため、人口の強制移転や国外追放の可能性への懸念が高まっているとの警告を同事務次長は発した。

グリフィス事務次長は、「民間人および民間人が依存するインフラの保護、生存上の必需品の提供、必要とされている規模の人道支援の円滑化、人道的な」取り扱いと人質全員の即時解放を含む国際人道法の順守をさらに徹底する事」を求めた前回の呼びかけを繰り返した。

また、グリフィス事務次長は、停戦を呼びかけると共に、安全保障理事会に対する戦争終結のための緊急行動の要請を繰り返した。

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