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遺伝子治療科学者と日本ムスリム協会がKFP2024の受賞者に選ばれる

リヤドでKFP2024の受賞者を発表するトゥルキ・アル・ファイサル王子。(キング・ファイサル財団)
リヤドでKFP2024の受賞者を発表するトゥルキ・アル・ファイサル王子。(キング・ファイサル財団)
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12 Jan 2024 12:01:41 GMT9
12 Jan 2024 12:01:41 GMT9

ラシード・ハッサン

リヤド:神経筋疾患の遺伝子療法や革命的なRNAの発見で画期的な成果を挙げた著名な科学者たち、そして日本ムスリム協会が、今年の「ファイサル国王賞」(KFP2024)の受賞者に名を連ねた。

10日夜、ファイサル国王賞事務局は次のように発表した。「KFP2024選考委員会は、1月8日〜10日にかけて行われた綿密な審議の結果、医学、科学、イスラムへの奉仕、イスラム研究、アラビア語・アラビア文学、の5部門における受賞者を決定した」

この賞は、アラブ世界で最も名誉あるものとなる。今年の医学賞は、神経筋疾患のスクリーニング、早期診断、治療における画期的な貢献が評価され、ジェリー・メンデル教授に授与された。生物学分野の科学賞では、遺伝子の調整と機能における長鎖ノンコーディングRNAの重要性を明らかにし、また、DNA制御領域を特定するためのゲノムワイド解析手法の前進において貢献したハワード・チャン教授が今年の受賞者として発表された。

医学部門の賞のテーマは「末梢障害の管理」であった。

メンデル氏の研究は、脊髄性筋萎縮症(SMA)、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)、および肢帯型筋ジストロフィー(LGMD)患者のスクリーニング、早期診断、治療に関するものである。

SMAはかつて、乳児死亡の主要な遺伝的要因と考えられていた。SMAと診断された乳児の約95%は、2歳を超えて生存することはなかった。SMAタイプ1の乳児は、発達に不可欠な遺伝子である運動神経細胞生存1(SMN1)遺伝子が欠如しており、その結果、動く、話す、飲み込むこと、そして最終的には呼吸することができなくなる。

米国ネーションワイド・チルドレンズ病院の遺伝子治療センター長であるメンデル氏は、遺伝子治療を用いて健康な遺伝子(SMN1)を患者の細胞に導入し、SMA1型と診断された患者に対する高用量のアデノ随伴ウイルス(AAV)を介した遺伝子治療の安全性と有効性を初めて実証した。

AAVは、DNAを送達するように設計された人工ウイルスであり、SMA治療の文脈では、健康なSMN遺伝子をコードする遺伝子を運ぶ。

メンデル氏はまた、進行性の神経筋疾患である筋ジストロフィーで最も一般的な、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)患者の遺伝子変異を修正するためにも遺伝子治療を行っている。

400以上の論文を執筆しているメンデル氏は、米国遺伝子細胞治療学会(ASGCT)からトランスレーショナル・サイエンス賞を授与されている。

今年の科学賞は、遺伝子の調整と機能における長鎖ノンコーディングRNAの重要性を明らかにし、また、DNA制御領域を特定するためのゲノムワイド解析手法の前進において貢献したチャン氏に授与された。

彼の研究は、大規模な遺伝子群がどのように同時にオン・オフを繰り返すのかを扱っており、これは正常な発達、癌、そして老化の理解に役立つ重要なポイントである。

医師科学者であり、皮膚科学と遺伝学の教授であり、スタンフォード大学のバージニア&D.K.ルートヴィヒ癌研究教授でもあるチャン氏は、RNA医薬品分野において重要な貢献をしている。

彼は、タンパク質合成を担う、よく知られたメッセンジャーRNA(mRNA)とは対照的に、タンパク質をコードしないRNAの長い配列を発見した。チャン氏は、これらの配列がDNAのアクセシビリティに影響を与える役割を果たしていることを発見した。

チャン氏の研究室は、染色体を形成するDNAとタンパク質から成り、ゲノムの構造と遺伝子発現を制御する「クロマチン」のマッピング技術の先駆者である。彼の研究室が革新した画期的な技術の一つが「トランスポソームによる網羅的オープンクロマチン領域解析(ATAC-seq)」である。この技術は、Tn5トランスポソームと呼ばれる酵素を利用してDNAをコピー&ペーストすることで、ヒト細胞内の制御DNA(エピゲノム)のマッピング感度を100万倍、速度を100倍向上させた。

医学と科学に加えて、KFPはイスラム研究の分野における優れた思想家、学者、そしてイスラム教、ムスリム、人類に対して重要な役割を果たした模範的な指導者を表彰した。

コロンビア大学のアヴァロン財団人文学教授であるワエル・ハラーク教授は、「イスラム法制度と、現代におけるその応用(Islamic Legislations and their Contemporary Applications)」という研究テーマでイスラム研究賞を受賞した。

彼は、伝統的なオリエンタリズムの著作と並行して学術的な参考文献を提供しており、世界中の大学に影響を与えた。それは、多くの言語に翻訳された数々の著作や、イスラム法の発展のための指針を確立することに成功したことからも明らかである。

イスラムへの貢献賞では、日本ムスリム協会とムハンマド・サムマク博士が共同受賞者として発表された。

2024年度のKFPアラビア語・アラビア文学賞は、「非アラブ系機関とアラビア語普及への努力」がテーマだったが、候補作が受賞基準に満たなかったため、授与は見送られた。

KFPは1977年に設立され、最初の賞は1979年にイスラムへの奉仕、イスラム研究、アラビア語・アラビア文学の3部門で授与された。さらに2つのカテゴリー、医学と科学が1981年に導入された。最初の医学賞は1982年に、科学賞はその2年後に授与された。

1979年以来、KFPは幅広い部門で290人の受賞者に賞を授与しており、これらの受賞者は様々な科学分野および大義における顕著な貢献をしている。各賞の受賞者には20万ドル、200グラムの24金メダル、そして、受賞者の名前、および賞を受賞する資格を得た作品の要約が記載された証明書が授与される。

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