
Ephrem Kossaify
ニューヨーク市:サウジアラビアの国連常駐代表、アブダラ・アル=ムアリミ氏は安全保障理事会に対し、イランに対する武器禁輸措置の延長を「非常に慎重に」検討するよう要請した。
禁輸措置は10月、国連安全保障理事会決議2231号に記載された日に期限が切れる予定になっている。それは、イランの核合意としても知られる、2015年の包括的共同行動計画(JCPOA)を支持し、実行を支援した。
禁輸措置の延長は、「正しい(そして)慎重な行動であり、国際社会が(イランの)行動や活動に対して期待できる最小限の対応」であるとアル=ムアリミ氏は述べた。
アル=ムアリミ氏が「歓迎すべきだが、提出期限を大幅に過ぎている」と言っている、アントニオ・グテーレス国連事務総長による報告書について、安全保障理事会が1日に説明を受けた後、アル=ムアリミ氏のコメントは出された。その報告書では、昨年サウジアラビアの石油施設と空港への攻撃に使われた巡航ミサイルの「出どころがイラン」だったことが確認されている。その報告書は先月出されたものだが、その攻撃におけるイランの役割をグテーレス氏が公然と認めたのはこれが初めてだ。
アル=ムアリミ氏は、イランの行動を非難し、サウジアラビアは、フーシ派への武器の供給を禁止している「安全保障理事会決議第2231号及び第2216号の規定に反し、サウジアラビア王国の民間人を標的にし、多数の攻撃を開始する際に、イエメンのフーシ派民兵(を支援すること)によって、イランが犯している重大な違反行為」に常に安保理の注意を向けさせてきた、と述べた。
「イランの行動パターンは、イエメンであろうとレバノンであろうとシリアであろうとイラクであろうと、ならず者グループを支援し、駆り立てることによって、その地域に無政府状態を作り出すことを目指しています。武器禁輸が10月に解除されれば……このような行動がどのように発展するのか、想像することしかできません」と同氏は付け加えた。
アル=ムアリミ氏は、最近のアラビア湾での攻撃により、イランが「常に脅威を与えている」ことが示されていると述べ、「私たちは、こうした挑発や攻撃に対し、高いレベルで自制し続けてきましたし、できる限りのことをし続けていきたいと考えています」と付け加えた。
同氏が最近リヤドを訪れた際、米のイラン担当特別代表であるブライアン・フック氏は、マイク・ポンペオ米国務長官のメッセージを繰り返した、と同氏は述べた。ポンペオ氏は、武器禁輸を解除すれば、イランに違法行為を続ける許可を与えることになる、と警告している。
禁輸措置の延長は、米国とサウジアラビア、双方の利益になる、とアル=ムアリミ氏は指摘し、「米国が私たちに求めているのは、各方面で私たちの声を聞いてもらうことであり、私たちはできる限りそれをやろうとしています」と付け加えた。
安全保障理事会常任理事国であるロシアと中国の、イランや当該地域に対する見方を考えると、禁輸措置の延長を承認するよう2カ国を説得するのは難しいかもしれないことを同氏は認めた。
「(ロシアと中国は)ともに、サウジアラビアの領土への攻撃の後、サウジアラビアとの連帯を表明しました。ですから、私たちはそれを基に、(それらの攻撃を非難する)唯一の方法は、イランに対する現在の武器禁輸を維持することだということを示せると期待しています」とアル=ムアリミ氏は述べた。
「私たちは、この地域における(ロシアと中国の)利益の保護を尊重しますが、この種の脅威に常に直面するよりも、この地域の安定に平和をもたらしたほうが、これらの利益が守られ、高められると考えています」
イランのミサイルは、米軍基地がある多くの国々同様、遠く離れたインドやポーランドを攻撃する能力があるだろうというポンペオ氏の警告に言及し、「イランが与える脅威は、サウジアラビアとその周辺地域だけではなく、広範囲に及ぶ可能性があります」と同氏は補足した。
アル=ムアリミ氏は、イランは、米国と欧州諸国、ロシアと中国の間に生じた相違を利用し、それらを活用している、と述べた。
「イランは国際社会の分断を利用し続けていますが、私たちは、共通したビジョンと、より建設的なアプローチを促進しようとしています」と同氏は述べた。
イランが近隣諸国への内政干渉を続け、2015年のJCPOA署名によって出てきた楽観論が「徒労」に終わったことは遺憾だ、と同氏は付け加えた。ドナルド・トランプ米大統領は2018年に米国を核合意から離脱させた。
「私たちは初め、JCPOAに賛同しましたが、(今は)この協定には、利点より欠点のほうが多いです」とムアリミ氏は述べた。
「(イランのジャヴァード・)ザリーフ外相は昨日、こう明言しました。『ここは私たちの地域なので、好きなように干渉します』。違います、ザリーフさん、ここは、あなたが自由に干渉していい地域ではありません。これらは主権国家であり、あなたはこれらの国々に干渉すべきではありません。イランの内政には好きなだけ干渉して構いません」
アル=ムアリミ氏は、「イランの行動に最も影響を受けている」湾岸諸国を巻き込んでの再出発を呼び掛けた。
一方、2018年にイスタンブールのサウジ領事館内で起きた、ジャーナリスト、ジャマル・カショギ氏殺害事件に関連して起訴されたサウジの関係者の裁判が3日、トルコで始まる予定だ。
アル=ムアリミ氏は、サウジアラビアが裁判でトルコに協力するかとの質問に対し、トルコ政府はそのような協力を避けている、と答えた。
「私たちはトルコに、サウジアラビアでの司法手続きに役立つであろう、トルコが持つ全ての証拠、資料、あらゆるものを私たちに提供するよう要請しました。返答はありませんでした」と同氏は述べた。
「サウジアラビアで行われた裁判には、トルコ側の代理人が常に立ち会い、裁判の進行を見守っていました。この問題を、単に政治的交渉の場として利用するのではなく、この問題への協力と善意を示すことを決めるのは、トルコの友人たちです」
「司法は重要で、当事者によって政治ゲームや政治目的に利用されてはいけません」
12月、サウジアラビアの裁判所は、カショギ氏殺害容疑で5人に死刑を宣告し、他の3人は合計24年間投獄された。