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サウジアラビア、メッカ巡礼の安全のために、あらゆる措置を講じる

27 Jul 2020
サウジアラビアの最優先事項は、巡礼者が常に大巡礼(Haji)と小巡礼(Umrah)の儀式を安全かつ安心して行えるようにすることである。(Photos/Supplied)
サウジアラビアの最優先事項は、巡礼者が常に大巡礼(Haji)と小巡礼(Umrah)の儀式を安全かつ安心して行えるようにすることである。(Photos/Supplied)
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Updated 27 Jul 2020
27 Jul 2020
  • 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生当初から、サウジアラビアは迅速に行動し、疾病の影響を抑制するため、空の旅を制限し、外出禁止令を課し、何千人もの人々を検査し隔離した

ジョナサン・ゴナル

ロンドン:サウジアラビアの巡礼省が、6月22日に今年の大巡礼(Haji)はすでに国内に居住している少数の巡礼者に限定されると発表したとき、その報道は、世界中の数十万人のイスラム教徒を失望させる一方で、特に大きな驚き無く迎えられた。

世界的に新型コロナウイルスが蔓延し出した当初から、サウジアラビアは迅速かつ迷うことなく行動して疾病の影響を抑制するために、空の旅を制限し、外出禁止令を課し、何千人もの人々を検査し隔離した。

当局は、2012年の中東呼吸器症候群(MERS)発生後に学んだ過酷な教訓を忘れることはなかった。

ラクダとの関わりがあるMERSは、サウジアラビア王国で始まり、27ヵ国に広がり、850人以上の命を奪っている。しかし、MERSと同じくらい悪いウィルスであるにもかかわらず、新型コロナウイルス感染症による影響たるや、MERSによる影響を覆い隠してしまう程である。

金曜日までに、世界中で1,600万件を超えるコロナウイルスの症例が記録され、645,000人以上の命が失われている。

3月上旬に最初の症例(イランから帰国したサウジアラビア人だった)を記録して以来、王国では264,973件の症例と2,703人の死者を出している。

衝撃的な数字ではあるが、ジョンズホプキンス大学コロナウイルスリソースセンターがまとめた統計からも明らかなように、この数字は国家の取り組みによってともかくも緩和されている。

この病気にかかった人の中で、サウジアラビアの死亡率はわずか1%で、英国(15.3%)、イタリア(14.3%)、フランス(14.1%)を含む多くの国よりもはるかに低い数値に留まっている。

また、王国は、多くの国よりも人口10万人あたりの死者数が少ない—たとえば、英国と米国の10万人あたり死者数がそれぞれ68人と43人であるのに対し、サウジは7.49人に過ぎない。

早くも2月27日には、サウジアラビアで最初の新型コロナウイルス感染症の感染者が見つかる前に、王国は小巡礼(Umrah)に対するビザを一時停止している。ウムラは、年中いつでも実行できる「小巡礼」を指す。2019年には、小巡礼には19百万人が参加し、そのうち750万人が国外からの巡礼者である。

大巡礼(Haji)に関する最終決定は可能な限り遅らせているが、4月初めに巡礼を所管する大臣、モハメッド・サリー・ベンティン博士は世界中のイスラム教徒に旅行の予約を延期するように助言している。

「私たちは、巡礼者の安全と公衆衛生を最優先事項として、伝染病の経過が明らかになるまで、大巡礼集団に加わるかどうかについて急ぐことのないよう世界に要請しました」と彼は述べている。

2019年には、大巡礼(Haji)は250万人の巡礼者をメッカに集め、そのうち185万人が海外からの渡航者だった。6月22日までに、巡礼省は、「混雑した集会で新型コロナウイルス感染症が感染するリスク」を考慮すると、200万人の巡礼者がメッカに巡礼に行くともなれば、災害を招くことは明らかと述べていた。

今年の大巡礼(Haji)の巡礼者の人数は、「サウジアラビアにすでに居住しているさまざまな国籍」の人々の中から選ばれた引換券を持つ1,000人に制限するという決定が下された。この決定は、世界保健機関(WHO)によって直ちに歓迎された。

WHO事務局長のテドロス・アダノム・ゲブレイェソス氏は次のように述べている、「私たちはこの決定が容易なものではなかったことを理解しています。また、今年の巡礼を楽しみにしていた多くのイスラム教徒にとって大きな失望であることも理解しています」

WHOの事務局長は、「(サウジアラビアの決定は)健康を何よりも優先するために、すべての国が見習わなければならない難しい選択だった」とも述べている。

1932年のサウジアラビアの建国により、アラビア半島に法と秩序がもたらされて以来、大巡礼(Haji)を制限せざるを得なくなったのは初めてであるが、毎年の大巡礼が中断されたのは史上初めてではない。

4月の初めに、アブドゥルアジズ王研究アーカイブ財団(ダラー)は、「病気の蔓延、伝染病、政治的混乱、安全保障の不安定さ」などの理由によって、大巡礼(Haji)がこれまでにキャンセルされた、または巡礼者の人数が厳しく制限された40回の出来事に焦点をあてた声明を発表している。

西暦865年、イスマイル・ビン・ユーセフ・アルアラウィとその追随者たちが、メッカ近くのアラファト山で巡礼者を虐殺するアッバース朝のカリフに反抗したとき、大巡礼(Haji)はキャンセルされている。

大巡礼(Haji)の最初の大規模な中断は10世紀に起こっている。 サウジアラビアの現代の東部州にあるカティーフのオアシスに拠点を置くシーア派が、、古代のダーブ・ズバイダ・トレイルに沿ってバグダッドからメッカに向かう巡礼キャラバンを攻撃したことが発端だった。

927年には、巡礼者は一人として聖地にたどり着くことが出来なった。それから2年間は、誰も旅の危険を冒す者はいなかった。 930年にメッカ巡礼を完結しようと冒険した人々は、メッカで聖域ではなく恐怖を見ることとなった。

16世紀のオスマン帝国の歴史家、クトゥブ・アルディン・アルナフラワリによると、アブ・タヒル・アルカルマティ「腐敗した…異端派」の「卑しく、悪意に満ちた」リーダーは、彼の拠点をハジュル(現代のカティーフ)、メッカ巡礼の中心に置いた。

アルナフラワリによると、「彼のイスラム教徒に対する残忍な殺害と彼による信者の流血の増加により、状況は非常に厳しくなり、彼の時代は、彼と彼の無法な一派に対する恐れから巡礼は止まった」

悲劇は930年1月に頂点に達した。「メッカの巡礼者たちは、タルウィヤの日に神の敵であるアブ・タヒル・アルカルマティと彼が率いる大群に不意を突かれ、ハラム、メッカや街の渓谷で約3万人を殺された」

ダラーによれば、メッカに対する血の襲撃の影響で、メッカ巡礼は何年も行われなかった。

しかし巡礼者が戻ったとき、彼らは彼らを待っている別の敵と遭遇することとなった。 その中には、2020年の新型コロナウイルス感染症によってほぼ全面的に巡礼が停止されなければ、どのような結末となったのか予兆するような出来事もあった。

968年に、メッカ巡礼は病気(おそらくコレラまたは腺ペスト)が多くの巡礼者の命を奪ったため、一時停止されている。

病気によってメッカ巡礼が停止となったことが知れているのはその時が初めてであったが、最後とはならなかった。

19世紀から20世紀にかけて、コレラの複数回の発生により、メッカ巡礼中に何千人もの巡礼者が亡くなっている。

また、空路によって新型コロナウイルス感染症が現代の世界で急速に広まったのと同様、蒸気船の開発も恐ろしく効率的に病気を蔓延させるのに役立った。

1994年にニューヨーク大学の中東およびイスラム研究の教授であるフランシス・ピーターズによって発表された研究によると、1821年に2万人程の巡礼者が1817年にインドで始まったコレラの流行により死亡している。

別の伝染病は1865年のメッカ巡礼を襲い、15,000人の巡礼者を殺し、さらに遠方まで広がり、世界中で200,000人以上の死者を出している。

歴史家のジョン・スライトが2013年のエッセイ『ハッジとラージ』に記しているように、19世紀後半から20世紀半ばまで、大英帝国は「圧倒的にイスラム教徒の帝国」であり、「毎年、数千人のイギリス植民地の住民、その大部分を占めたインド人が、アラビア海を越えてメッカ巡礼のためのヒジャズへの長い旅路に出た」

1865年の災害後、英国のコレラ対策担当官たちは、流行は常にインドで始まり、「アラビア海を巡る巡礼者の毎年の海上通過は、この病いが中東、北アフリカ、ヨーロッパに広がる重要な経路だった」と結論付けている。

1866年にイスタンブールで国際会議が開催され、この会議についてスライトは、「コレラからヨーロッパを守る最善の方法は、インドから伝染病が外に出ることを防ぐことだと結論づけた」と書いている。

それは、言うほど簡単なことではなかった。英国は紅海に検疫措置を導入し、メッカオスマン帝国当局は追加の衛生対策を導入したが、その措置は完全に効果的とは言えず、コレラは何年もの間メッカ巡礼を苦しめ続けた。

現代のサウジアラビアでは、コレラはメッカ巡礼にとって過去のものとなっている。 しかし、現在、コレラは、同様に危険な別の脅威に取って代わられてる。

6月22日、巡礼省はイスラム世界が待ち望んでいた避けられない声明を発表した。

巡礼省は、王国の最優先事項は、「イスラム教徒の巡礼者が常に大巡礼(Haji)と小巡礼(Umrah)の儀式を安全にそして安心して行えるようにすること」であると述べている。

パンデミックが終息していないこと、混雑したスペースや大規模な集まりでコロナウイルスが蔓延するリスクを考慮すると、今年の大巡礼(Haji)は、参加を望んでいた200万人の巡礼者の僅か一部に限定される。

同省は、この決定は「人間の生命を守るイスラム教の教えに従って」行われたものであると述べた。

よって、これはイスラム教徒の誰からも過ちを指摘されるような決定ではない。結局のところ、この決定は預言者言行録(Hadith)に記録されている預言者ムハンマドの教えを反映したものであると共に、今日のWHOと世界中の公衆衛生機関の声明を反映している:「(伝染病)がある土地で広まっていると聞いたら、その土地に行ってはいけない。もしそれがあなたのすでにいる土地で起こったら、そこから逃げ去ってはいけない」

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