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数世紀にわたって火山の噴火口上に存在したサウジの村

タバとその周辺は火山活動地帯だ。1983年、亀裂や地割れと共に起きた地盤沈下により、噴火口に沿って割れ目が長距離に広がり、住民は避難を余儀なくされた。(提供)
タバとその周辺は火山活動地帯だ。1983年、亀裂や地割れと共に起きた地盤沈下により、噴火口に沿って割れ目が長距離に広がり、住民は避難を余儀なくされた。(提供)
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17 Nov 2020 10:11:16 GMT9
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  • サウジアラビア国内のネイチャーツーリズムのさらなる拠点とするため、現場付近の施設建設を呼びかけ

タリク・アル・タカフィ(Tareq Al-Thaqafi)

メッカ:ハイル地方東部にあるタバ村の住民が、何世紀も前からこの村が火山の噴火口上で暮らしてきたことを知ったのは1983年のことだった。

サウジアラビア北部のサルマ山にあるこの村は、平和と調和を絵に描いたような村だった。村人たちはあちこちで揺れを感じ、地割れを目撃したが、誰も大きな問題とは考えなかったという。

事態が悪化したのは1980年代。この地域で開発プロジェクトが始まり、アスファルト工事の会社が村の地下水を引くために道路を舗装し始めたのがきっかけだ。

地下水位の変動によってひどい騒音と地盤沈下が起こり、数軒の家が倒壊した。こうしたことから政府は、村民を安全な場所へ移し、補償として火山帯の外に家を提供した。

旧タバ村で生まれたハラフ・ナーイフ・アル・ハッシャーさん(70)はアラブニュースの取材に対し、この村はサウジアラビア北部の重要かつ有名な場所で、住民たちは親切で思いやりがある人たちだと知られていたと語った。

「裂け目、亀裂、地盤沈下などの地質現象が起きたため、親族とタバから移りました。その頃のことはしっかりと覚えています」

「私たちは揺れを感じ、あちこちでわずかな地割れを見ましたが、誰も気にしていませんでした。村民たちはその現象に悩まされてはいませんでした」

ハッサンさんが「新たなタバ」と呼ぶ移住先への引っ越しは急いで行われたという。村の数軒の家が損壊したためだ。当時、村の人口は1,500人だった。

この村はそれまで水の消費による不均衡で影響を受けたことはありませんでした。不均衡が生じたのは農業で給水装置を使うようになった後からです。開いた隙間を埋めるために地盤が下がり、それが揺れを引き起こしたのです。

ムバラク・アル・サラマ(地質学者)

「アスファルト工事の会社は、地下水で有名なタバで、地下水を大量に使用しており、住民たちは水をこの会社に販売していました」

アル・ハッシャーさんは、自分も当時居合わせた人たちも、地面から聞こえたぞっとする音をいまだに覚えていると語った。

「みんな揺れの強さや激しさを感じていました。その揺れが地盤沈下を引き起こしたのです」とハッシャーさんは言う。「ひびが入った家屋は今でも残っています」

アル・ハッシャーさんによると、サウジ政府は絶妙なタイミングで介入し、会社はすぐに行動を起こし、250軒の損壊した家々を調査したという。その後、政府は旧タバ村から約3km離れた火山帯の外にある別の居住区に全村民を移すことを決めた。

タバ村に住んでいたハマド・アル・マウカさん(57歳男性)は、アラブニュースの取材に対し、村に大きな地割れが見られるようになったのは30年以上前からだと述べた。それまでは村民が飲み水や灌漑に少量使用するだけだった地下水を、開発のために枯渇させたことで事態が悪化したという。

アル・マウカさんは当時を思い起こしながら次のように語った。「数日で地下水はすべて空になり、雨が降らなかったため、村は失われた水を埋め合わせることができませんでした。地殻のバランスを崩し、村中に地割れや亀裂を引き起こしました」

砂漠と環境ツーリズムを専門とする地質学者のムバラク・アル・サラマ氏は、タバ村はサウジアラビア国内外の観光客にとって魅力的な場所になるとアラブニュースに語った。

「(1983年)当時、政府は内務・農水省、石油鉱物資源省、地方自治省から成るチームを派遣しました。私は、地割れ、節理、亀裂を調べた後、勧告を行ったチームのメンバーでした。この勧告を受け、政府は住民を火山の噴火口の外に移し、彼らに新しい家を提供したのです」とサラマ氏は述べた。

アル・サラマ氏の説明によると、亀裂や地割れと共に起きた地盤沈下により、噴火口に沿って割れ目が長距離に広がり、やがてそれは直径約2kmまで達した。「これをきっかけに円錐型の火山が漏斗型に変形しました。排水路が閉ざされたため、雨水が火口内に溜まり、地下水の貯水池ができました」

村民の避難につながった状況を説明しながら、アル・サラマ氏は次のように述べた。「この村はそれまで水の消費による不均衡で影響を受けたことはありませんでした。不均衡が生じたのは農業で給水装置を使うようになった後からです。開いた隙間を埋めるために地盤が下がり、それが揺れを引き起こしたのです」

地質学者のサラマ氏によると、タバでは吹き飛ばされた崖や柱状図が見られるため、火山噴火が何度か連続して発生していることが分かるという。

アル・サラマ氏は、タバの人々は、専門家を除くこの地域の他の住民と同様に、土地の一部が陥没するまでこの事実に気付いていなかったと述べた。

「タバとその周辺は火山活動地帯です。アル・ナーイ村もハティマ火山の頂上にあります。アブダ村の周辺は死火山の噴火口です。これらの地域には、地域全体に利益をもたらす観光資源として機能させるための投資が必要です」とサラマ氏は述べ、さらにこう続けた。

「泥や玄武岩といった、この地域にある原材料で建てたロッジなどの観光施設が利用できれば、この地域はハイルで最も重要な観光地の1つとなるでしょう」

「私たちはサルマ山近辺のネイチャーツーリズムの重要性を考慮すべきです。ここはハイキング、登山、パラグライダーに適しています。さらに素晴らしいのは、ファイドの街とズバイダ街道(Darb Zubaida)のイスラム文化遺産や歴史観光です。ズバイダはカリフ(最高権力者)ハールーン・アッラシードの妻で、雨水採取やエンジニアリングにおけるアラブ人の創意工夫を象徴する貯水池を通じて永遠に生き続けています」

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