
レベッカ・アン・プロクター
リヤド:人工知能(AI)、デジタル経済、デジタルメタバースといった用語はソウルやシリコンバレーで行われるカンファレンスで耳にするものだと平均的なテック愛好家は思うかもしれない。しかし今週は、あらゆるテクノロジーが話題になる場所はサウジの首都リヤドだ。
2月6日から9日までの間、世界中のテック専門家のためのグローバルプラットフォームである第2回LEAPカンファレンスが開催され、10万人以上のテックイノベーターや第一人者が一堂に会する。
HLEAPと並行して、サウジ・データAI庁が主催するAIイベント「ディープフェスト」も初開催される。両イベントは、技術的に世界で最も進んだ国の一つになるというサウジアラビアの目標を示すものだ。
サウジ通信によると、サウジアラビアは2025年までに様々なテクノロジーに240億ドル以上を支出することを計画しており、これは世界最高額である。
昨年のLEAPカンファレンスにおいて、サウジのアブドゥラー・アルスワハ通信情報技術相は、中東・北アフリカ地域最大のデジタル経済国としてのサウジアラビアの地位をさらに強固なものにするために、未来のテクノロジーおよび起業の分野に64億ドルを投資すると発表した。
サウジビジョン2030の目標に沿ったサウジアラビアのテック産業の成長は、同国にとって石油・天然ガス収入依存から脱却し経済を多角化する手段となっている。
「エコノミスト・インテリジェンス」による2022年のレポートによると、サウジアラビアは2022年に「中国、インド、インドネシア、韓国などのアジアのダイナミックな大国や、低迷するG7、他の主要な新興国を上回り」世界で最も高い成長率を示した主要経済国だった。
昨年初開催されたLEAPは、過去最大のテックイベントとして新記録を作った。今年の回も前回以上とは言わずとも同程度の規模で開催され、世界中からテック業界トップの専門家がリヤドに集まる予定だ。
経営コンサルタント企業PwCミドルイーストでデジタル&テクノロジープラットフォーム責任者を務めるイマド・アブイズ氏はアラブニュースに対し次のように語る。「最近のサウジアラビアによる自国のデジタル経済や情報通信技術分野への投資は、中東・北アフリカ地域における主導的な情報通信技術市場としての同国の地位を強固なものにする助けとなりました」
サウジアラビアは7年前にサウジビジョン2030を発表して以降、社会経済的改革の手段としてのテクノロジーを重視する一連のイニシアティブを立ち上げてきた。
ビジョン2030のもとでの戦略的アジェンダは、国のデジタルインフラ再生を通して経済成長や知識を強化し日常生活を向上させることに焦点を当てている。この目標に向け、サウジアラビアは2040年までに開発・研究・イノベーション分野にGDP比2.5%の年間投資を行うことを約束している。
サウジアラビアのテクノロジー計画は、2019年8月に国王令により設立されたサウジ・データAI庁(SDAIA)によって支えられている。
同じく2019年、サウジ政府はスマートフォンアプリ「Absher」の提供を開始した。サウジアラビア国民や住民が様々な行政サービスにアクセスできるアプリだ。
PwCミドルイーストでデジタル政府コンサルティング責任者を務めるファディ・コマティ氏はアラブニュースに対し、「政府による支出は、デジタル化に大きな重点を置いていることを示しています」と語る。「この分野が急成長している理由は、この国の人口の多数を占める若者が最先端テクノロジーを前進させようという意欲を持っていることです」
「政府のデジタルトランスフォーメーション、そして情報通信技術(ICT)やイノベーションに対する継続的な投資は、民間部門と公共部門の両方にとっての多くの機会の基礎を作っています」
コマティ氏は、テック産業に対する政府の投資は「民間部門の成熟を促し、ひいては国外企業のサウジアラビア進出につながる刺激やインセンティブも作り出している」と強調する。
「サウジアラビアで民間テック部門がますます発展しているのは、この部門に対する政府の投資の結果です」
同様に、サウジのテック起業家で民間投資会社テック・インベスト・コムのCEOであるフセイン・アッタル氏はアラブニュースに対し次のように語る。「サウジアラビアに関しては、NEOMなどの始動しつつあるギガプロジェクトは全てテクノロジーのイノベーションに大きな重点を置いています。全てのギガプロジェクトには投資部門があり、テクノロジーに投資しています。サウジアラムコも独自のテクノロジー投資ファンドを持っています」
サウジアラムコは昨年のLEAPカンファレンスにおいて、起業支援ファンド「プロスペリティ7ベンチャーズ」を通してスタートアップの育成に10億ドル相当を投資すると発表した。NEOMテック&デジタル・ホールディングCo.は、未来のテクノロジーに10億ドルを投資し新AIエンジン「M3LD」やデジタルツインメタバース「XVRS」を立ち上げることを明らかにした。
サウジアラビアのテクノロジー投資は同国の環境目標にとっても極めて重要な意味を持つ。アラムコは2022年10月の第6回未来投資イニシアティブにおいて、持続可能性に焦点を当てた世界最大級のベンチャーキャピタルファンドである15億ドル規模のサステナビリティファンドを発表した。
最近のデータが示すところでは、サウジアラビアは地域的にも国際的にも、民間部門と公共部門の両方において高成長のグローバル拠点として台頭している。マグニットが作成した2022年のサウジアラビア・ベンチャーキャピタル・レポートによると、同国は10億ドル近い前年比成長を記録した新興市場の一つだった。
サウジアラビアのテック産業の発展は、同国にとって地域および世界とつながる手段となっている。最近スイスのダボスで開かれた今年の世界経済フォーラムでも注目を集めたAIは、テック分野におけるサウジアラビアの成長にとって極めて重要なものだ。
2022年9月、サウジ公的投資基金が所有するサウジ人工知能会社は、中国の商湯科技(センスタイム)とのジョイントベンチャーに7億7600万ドルを投資してサウジアラビアでAIエコシステムを開発すると発表した。
サウジのテクノロジー開発・イノベーション専門家トゥルキ・アルムガイテーブ博士はアラブニュースに対し次のように語る。「サウジアラビアの先進的なテクノロジーインフラ、AI分野における質の高い開発、政府当局が設計した高い水準が、地域のトップ市場におけるAI企業の参入・成長を促しています」
また、サウジアラビアは日常的な問題の実践的な解決策を見出すためにグローバルAIプロバイダーと多くのパートナーシップを結んでいると同博士は指摘する。「AIはサウジアラビアのアジェンダの中で非常に高い優先順位を与えられています。テクノロジーが桁違いに大きな利益をもたらすためのメカニズムと考えられているからです」
テクノロジー投資や、サウジアラビアがテクノロジー成長やイノベーションのために探索している数々の手段は、教育のため、そして同国の国民・住民や同国を訪れる全ての人々によりよい生活を提供するためのものでもある。
アルムガイテーブ博士に言わせれば、サウジアラビアがテック大国の地位に上るうえで重要な要因は、「この国で素晴らしい人的資源が育成されていることに加え、教育のある若い国民(その多くが国外で経験を積んでいる)がこの分野にいることだ」