• この84万平方メートルの島は、86艇収容可能なマリーナやヨットクラブ、ゴルフクラブ、3つの高級ホテルを有することになる
• 建築家らは、紅海の自然の景観を利用し、唯一無二の建築デザインを創出しつつある

ラワン・ラドワン

ジェッダ：何十年もの間、ギリシャの島々やフロリダのキーズ、カリブ海、地中海沿岸は、ヨットやボートのオーナーたちの間で最もポピュラーな目的地だった。しかし、来年オープンするシンダラー島により、紅海沿岸のこの地域が富裕層の旅行者やヨット愛好家たちの注目を集めることになるだろう。

ルカ・ディーニ・デザイン＆アーキテクチャーの世界的に活躍する建築家たちにデザインされたシンダラー島は、計画進行中のサウジアラビアのスマートシティ・ギガプロジェクトNEOMの最初の実例のお披露目となる見込みだ。ムハンマド・ビン・サルマン皇太子が、2022年12月にこのプロジェクトでの開発・建設計画を発表して以来、空撮画像やビデオで島の特徴や構造物の一部が紹介されてきた。

このアイランドリゾートは、ビーチクラブやヨットクラブ、ホリスティックスパなどの観光スポット、そして、サウジアラビア初のマリオットの「オートグラフコレクション」のホテルと2024年開業予定の同マリオットホテルチェーンの「ラグジュアリーコレクション」の2つのホテルを初めとする複数のホテルを有することになる。

立地と自然特性により、シンダラー島は際立った観光目的地となる。それぞれの構造物は、周囲の環境と融合し、自然と周囲の都市計画の調和を実現すると共に動植物の生息環境を手つかずのまま確実に保全するようデザインされている。これがNEOMの理念なのだ。

中東地域やヨーロッパの船舶やヨットのオーナーの多くにとって、この島は、立ち寄るのに最高の位置にある。シンダラー島は地中海のごく近傍にあり、ヨットでの航行先の多くはスエズ運河経由で一日以下で到達可能だ。

地中海は夏の間はスーパーヨットで埋め尽くされてしまうため、紅海は長きにわたってダイバーや喧噪に縁の無い魅惑的なクルージングエリアを求める人々向けの目的地だった。紅海は地中海に隣接し、ヨットのシーズンを長く楽しみたい人々にとって非常に魅力的な気候を備えている。

「シンダラー島はスーパーヨットで新しいシーズンを過ごす場所になります。冬を便利の良い土地で過ごしたいヨットのオーナーたちにとって、シンダラー島は夢のような選択肢になることでしょう。75メートルまでのヨットに対応した86艇収容能なマリーナや180メートルまでのスーパーヨットに対応した係留ブイ、魅力的なヨットクラブ、豪華なホテル、ゴルフクラブ、広大な小売店舗区域、並外れた飲食施設と、シンダラー島で提案されているすべては世界の他の場所には無い唯一無二のものです」と、ルカ・ディーニ・スタジオのCEOのルカ・ディーニ氏はアラブニュースに語った。

「私たちには航海分野において豊富な経験があります。その経験から私たちが得た、世界で最も特別な顧客のニーズについての知識、細部へのこだわり、『何もかも見てしまった』はずのヨットオーナーたちを驚嘆させる能力を活用します」と、ディーニ氏は述べた。

「シンダラー島は、サウジアラビアで私たちが強く感じた、情熱と力強さを持って未来を希求する、伝統と密に結びついた人々の精神がデザインを通して具現化したものになります。私たちを深く魅了する場所になります。シンダラー島で建造されるものは、すべて、人々をまとめ、美しい環境と密接に関わりつつ、野外での体験を満喫できるようにデザインされているのです」と、ディーニ氏は語った。

自然生息環境のかく乱や破壊の懸念は、このギガプロジェクトの技術担当者らと協働している専門家らが行う継続的な調査により払拭される。シンダラー島の手つかずの自然景観、海岸、岩石は、ディーニ氏の言葉を借りれば、「インスピレーションの源」であり、建造されるもののすべてが、太陽や風、海を初めとする自然の力を高めるようデザインされている。

「建設物は、この島にずっと昔からある、自然が造形した岩石のようにデザインされています。シンダラー島の砂と貝殻は、村落の建材の基礎原料として使われています。独自の半透明の素材が夕日を取り込み、ホテルの西向きのファサードを照らし出します。マリーナプロムナードの屋根の下に設置された素晴らしい色あいのクリスタルが海の反射光を捉え珊瑚のように語りかけてくるのです」と、ディーニ氏は話した。

世界で最も原初的な自然環境への取り組みとして推進されているNEOMの各プロジェクトの構造物では、自然環境の持続可能性、保護、保全に焦点を置いた取り組みが為されている。手つかずで唯一無二の海洋環境は、NEOMの成功にとって極めて重要である。

「NEOMのすべてのプロジェクトがそうであるように、保護と環境保全を再定義するという私たちの信念が最優先です。NEOMは、シンダラー島を周辺環境と調和し共存する最高の観光目的地へと発展させています」と、NEOMの都市計画部門の責任者であるアントニ・バイブス氏はアラブニュースに語った。

自然環境の劣化を防ぎ自然の再生を図る新たな方法を推進するというNEOMの構想と目的に従って、シンダラー島でのプロジェクトは紅海の比類の無い水中動植物を保護し涵養することになる。NEOMの持続可能的循環型経済モデルに沿った取り組みである。シンダラー島での取り組みで、NEOMの持続可能性関連ポリシーのフレームワークの下で、ホテル開発におけるLEED PlatinumとENVISIONサステナビリティ認証、ランドスケープとゴルフ場についてのGEO認証といった複数の主要な持続可能性関連の認証の取得を目指す方向なのだとバイブス氏は付け加えた。

「NEOM地域の海と景観、生物種の多様性、動植物の生息環境、豊かな文化遺産がNEOMの構想の中心です」と、バイブス氏は述べた。「シンダラー島が地域的にそして世界的に重要な生物的多様性と文化的独自性の源であることに私たちは誇りを持っています。そして、自然生態系の保護と健全化の両方において、「シンダラー島が環境スチュワードシップの新基準となることを目標にしています」

レジャー用ボートは重要な経済活動であり、環境に有害な影響を与える可能性があるものの、世界中でその人気は高まっている。レジャーボートが環境に与え得る影響には、錨泊の海草への影響やモーター音によるかく乱、有毒の防汚製品、外来種の持ち込みといったことが挙げられる。他の影響として、雑排水、大気汚染、燃料やその他油分の漏れ、堆積物の再浮遊、汚水の排出、海ごみの放出、人工光の放射、動物への餌やりもある。

海洋放出は、ボートやスーパーヨット、他の海上船舶から頻繁に行われている。こうした海洋放出に対して、NEOMは、地域の動植物の自然生息環境を保護する規制を引き続き堅持する姿勢だ。バイブス氏は、シンダラー島では「必要に応じて修正を行いながら、継続的なコンプライアンスを確保する」ために定期的に環境的、社会的影響の評価を実施すると確言した。

「周辺の環境と生態系への建設時の影響を最小限に抑えるために、私たちは環境マネージメントシステムを駆使しています」とバイブス氏は述べた。

「環境に対して有害な行動を回避し軽減することは、NEOMの構想と目的の核心です。私たちの海洋と岩礁の保護は重要な優先事項です。そして、私たちは、シンダラー島内で、NEOMの環境関連の規則を共同体として確実に厳守します。この島での運輸関連の計画では、電気やグリーンエネルギーの船舶など、環境負荷の少ない輸送形態を模索することに焦点を置いています」と、バイブス氏は語った。