Since 1975
日本語で読むアラビアのニュース
  • facebook
  • twitter
  • Home
  • 中東
  • トルコ大統領選、候補者たちを選択するために投票所に出向く有権者たち

トルコ大統領選、候補者たちを選択するために投票所に出向く有権者たち

5月28日の大統領選決選投票に向けて、選挙集会で語るトルコのタイイップ・エルドアン大統領。トルコ、イスタンブール。2023年5月26日。(ロイター通信)
5月28日の大統領選決選投票に向けて、選挙集会で語るトルコのタイイップ・エルドアン大統領。トルコ、イスタンブール。2023年5月26日。(ロイター通信)
Short Url:
28 May 2023 09:05:12 GMT9
28 May 2023 09:05:12 GMT9
  • トルコは世界最大の難民受入国であり、同国内務省のデータによると、500万人の移民がおり、その内330万人がシリア人だという

トルコ、アンカラ:トルコの有権者は、日曜日に再度投票所に赴き、長年指導者を務めた現職のエルドアン大統領の増々権威主義となりつるある政権運営の20年以上の継続を是とするのか、より民主主義的な社会を取り戻すと公約した対立候補による同政権の終結を選択するのかを決定する。

20年間にわたってトルコの指導者を務めているレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は、5月14日の第1回投票では完全勝利とはならなかったものの決選投票でさらに5年の任期を獲得することが有力視されている。

自国トルコを地政学的プレーヤーへと変貌させた、賛否両論あるポピュリスト政治家であるエルドアン大統領は、6政党連合の統一候補で中道左派最大野党の党首であるケマル・クルチダルオール氏に第1回投票で4%の差をつけた。エルドアン大統領は、インフレの深刻化や3か月前の破滅的な大地震の影響にも関わらず、好結果を収めたのだ。

74歳の元官僚である対立候補のクルチダルオール氏は、今回の決選投票を「トルコの未来を決める国民投票」と表現している。

投票所は午前8時開場で、有権者数は6,400万人以上である。

トルコでは出口調査は行われないが、速報値の発表は午後5時の投票終了後数時間以内と見込まれる。

トルコは、ヨーロッパとアジアの十字路に位置し、NATOで重要な位置を占めており、決選投票の結果はトルコの内政にとどまらない影響を持つ可能性がある。

トルコはスウェーデンのNATO加盟を拒否し、ロシアのミサイル防衛システムを購入したことにより、米国主導のジェット戦闘機プロジェクトから米国により排除された。しかし、エルドアン政権は、ウクライナの穀物の出荷を可能にして世界的な食糧危機の回避を図るための重要な取り決めの仲介に貢献してもいる。

5月14日の第1回投票での投票率は87%で、日曜日の決選投票にも高い投票率が見込まれている。この投票率の高さは、表現や集会の自由が制限されているトルコにおける有権者の選挙への関心の高さを反映している。

この決選投票で勝利すれば、69歳のエルドアン大統領は2028年まで政権を維持し得る。首相を3期、大統領を2期務めた敬虔なイスラム教徒であるエルドアン大統領は、保守的で宗教性の強い公正発展党(AKP)の党首であり、トルコの指導者としては既に最も長期にわたって在任している。

これまでの在任期間の前半では、エルドアン大統領は、欧州連合(EU)加盟のための協議に向けた改革と多くの国民を貧困から抜け出させるための経済成長に注力し成功を収めた。しかし、その後は、同大統領による自由とメディアの抑圧、そして、さらなる権力の掌握が顕著となった。特に、米国を拠点とするイスラム教聖職者のフェトフッラー・ギュレン氏が仕掛けたとトルコでは見做されているクーデターが失敗した後、その傾向は一層強まった。ギュレン氏はこのクーデターの企てへの関与を否定している。

エルドアン大統領は、2017年の国民投票で辛うじて勝利しトルコの議会内閣制を解体し、主として儀礼的な役割しか有していなかった大統領職を大きな権力を備えた要職へと一変させた。2014年にエルドアン氏は直接選挙で選ばれた初の大統領となり、2018年の選挙で初の行政府大統領制の大統領となった。

5月14日の大統領選は、エルドアン大統領が一方的な勝利を収めなかった初めての選挙だった。

評論家らは、エルドアン大統領の特異な経済政策がインフレの急上昇を招き生活費危機の深刻化に繋がったとの批判を展開している。また、多くの人々が、トルコ国内で死者数50,000人以上となった地震へのエルドアン政権の対応の遅れを批判している。

それでもやはり、エルドアン大統領は、世俗主義的な原則に基づくトルコにおいてイスラム教の地位を高め、世界政治においてトルコの影響力を高めることを望む保守的な有権者たちの支持を保っている。

エルドアン大統領は、インフレに苦しめられている有権者の取り込みのために賃金と年金の引き上げや電気・ガス料金の補助を行いつつ、トルコ国産の防衛産業製品やインフラプロジェクトの国外への紹介に務めている。

また、エルドアン大統領は、319,000戸の住宅の年内の建設を初めとする地震被災地復興の公約を再選キャンペーンの中核に据えた。エルドアン大統領を安定の礎と考える人は多い。

クルチダルオール氏は、物腰の柔らかい元公務員で、親世俗的な共和人民党(CHP)の代表を2010年以来務めている。彼は、エルドアン大統領による民主主義の後退を反転させ、従来の政策へ回帰して経済を回復し、欧米との関係を改善することを公約として選挙運動を行った。

決選投票で民族主義的な有権者に訴えかける懸命な努力の一環として、クルチダルオール氏は、当選した場合には、難民の送還を行い、クルド人武装勢力との和平交渉を一切行わないことを確約した。

トルコ国民の多くは、戦火を逃れトルコの一時的な保護下にある隣国シリアからの難民を国家的な負担とみなしており、今回の大統領選でもシリア難民の送還が重要な論点となっていた。

エルドアン大統領は、第1回選挙で第3位となった民族主義政治家のシナン・オガン氏の支持を週初めに取り付けた。オガン氏の得票率は5.2%で、同紙は決選投票には参加しない。

その一方で、オガン氏の大統領選への立候補を支援していた、反移民政策を掲げる政党はクルチダルオール氏の支持を発表した。

クルチダルオール氏が敗北した場合、同氏は、エルドアン大統領に選挙で敗北した人々の長いリストに名を連ねるというだけでなく、CHP党の党首職辞任の圧力も受けることになると考えられる。

エルドアン大統領のAKP党とその同盟勢力は、同じく5月14日に実施された議会選挙で、過半数の議席を維持した。議会選挙は、日曜日には繰り返されない。

また、エルドアン大統領の政党は地震被災地域においても優勢で、これまで同大統領を支持してきた地域の11州中10州で勝利を収めた。大統領選については、この内8州でエルドアン大統領は優勢となった。

これまでの選挙と同様、エルドアン大統領は国家の公的資源とメディアに対する支配力を用いて有権者の支持を得ようとしている。

5月14日の投票後、海外のオブザーバーらは、また、エルドアン大統領が「不当に有利」だった理由として、偽情報の流布の違法化とネット検閲を指摘した。さらに、海外のオブザーバーらは、今回の選挙はトルコの民主主義の復活力も示したと述べている。

エルドアン大統領は、クルチダルオール氏が「カンディルから指令を受けている」と最近の選挙集会で繰り返し語ったが、これは違法化されたクルディスタン労働者党(PKK)が拠点を置くイラクの山岳地帯に言及した発言である。

「私たちは神と国民の命令に従います」と、エルドアン大統領は述べた。

オスマン帝国崩壊後のトルコ共和国建国100周年を記念して、この選挙は行われた。

ロイター

特に人気
オススメ

return to top