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トルコのエルドアン大統領、シリア難民送還を公約するも前途多難

エルドアン大統領は、1年以内に100万人の難民を反体制派支配地域に帰還させることを目指すと言っている。(ロイター)
エルドアン大統領は、1年以内に100万人の難民を反体制派支配地域に帰還させることを目指すと言っている。(ロイター)
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01 Jun 2023 10:06:35 GMT9
01 Jun 2023 10:06:35 GMT9
  • トルコは340万人のシリア難民を受け入れている
  • 反難民感情が高まる中でエルドアン大統領は100万人を送還したいと考えている

アンカラ:タイイップ・エルドアン大統領は、指導者としての3度目の10年を確保するべくナショナリズムの波に乗った際、シリア難民100万人を送還する計画を喧伝した。しかし、隣国シリアで内戦が長引く中、その公約を守るのに苦労する可能性がある。

シリアのバッシャール・アサド大統領の反対勢力から長年同盟者と見なされてきたエルドアン大統領は、28日に行われたケマル・クルチダルオール氏との決選投票に向けた苦しい選挙戦の中で難民送還を強調していた。クルチダルオール氏はこの問題に関してさらに強硬な立場を取っていた。

選挙に向けて難民送還に焦点が当てられたことで、反難民感情が高まっているトルコに住む340万人のシリア人の間に警戒感が広がった。

難民の多くはシリアのアサド政権支配地域から来ており、同大統領が権力の座にいる限りは故郷の町や村には戻れないと言っている。

エルドアン大統領の計画では、彼らはそうする必要はない。同大統領によると、トルコはカタールからの支援を得てシリア北西部の反体制派支配地域に新たな住宅を建設している。トルコはこの地域に軍隊を駐留させており、その存在によってシリア政府からの攻撃が抑止されている。

この計画は、トルコが長年にわたって影響力を築き上げてきた反体制派支配地域に対する関与を倍加させることを示唆するものである。アサド大統領から関係回復に向けた前進の条件としてトルコ軍撤退のタイムテーブルを要求されているにもかかわらずだ。

トルコの有権者が反難民感情をますます高める中(トルコは他のどの国よりも多くの難民を受け入れている)、エルドアン大統領の計画は難民問題を対シリア政策の中心に据えている。国境地域で飛び地を掌握しており、トルコから国家安全保障上の脅威と見なされているシリアのクルド人組織に関する懸念と共にだ。

エルドアン大統領は、1年以内に100万人の難民を反体制派支配地域に帰還させることを目指すと言っている。同大統領の政権のスュレイマン・ソイル内相は先週シリアの町ジャラーブルスで、シリア人帰還者を入居させるための住宅プロジェクトの落成式に出席した。

エルドアン大統領は28日の勝利スピーチの中で、「我が国にふさわしい方法・手段を通してこの問題に関する国民の期待に応えることは我々の義務だ」としたうえで、既に60万人近いシリア人が自主的に安全な地域に帰還したと述べた。

しかし、トルコに住む多くのシリア人にとって、この計画は魅力のあるものではない。

シリア人でアフメドと名乗るアンカラ大学の学生(28)は、「シリアには帰りたいですが、ジャラーブルスは嫌です(…)故郷のラタキアに帰りたいです」と語る。ラタキアは地中海に面した政府支配地域の都市だ。

「帰りたいですが、アサド大統領が留まっているなら安全上の心配があるので無理です」

北西部の大半も数多くの武装組織に支配され無法地帯となっている。

シンクタンク「センチュリー・インターナショナル」のシリア専門家であるアーロン・ランド氏は次のように指摘する。「シリア北部の状況は依然として非常に悪く不安定なため、大規模な帰還を手配するのは難しいだろう。トルコとカタールが住宅やインフラを建設しているとの報道が出ているが」

「焼け石に水のように思われる。全体的な経済状況は悪化し続けている」

トルコは、難民帰還を実現するという目標も部分的な動機となって、シリアに対する外交方針を転換し、エルドアン大統領がかつて「虐殺者」と呼んだアサド大統領との関係を他の地域諸国に続いて再開した。

しかし、トルコとシリアの和解は、アサド大統領とそのかつてのアラブの敵対者らとの間の雪解けと比較するとゆっくりと進んでいる。これは、ロシア、イラン、米国も軍を展開しているシリアにおいてトルコがより深い役割を担っていることを反映したものだ。

アナリストらは、撤退のタイムテーブルを提示せよとのアサド大統領からの要求にトルコは簡単には同意しないだろうと考えている。トルコ軍が撤退の兆候を少しでも示せば、北西部がアサド政権の支配下に戻ることを恐れてトルコに避難しようとするシリア人が増えるだろうからだ。

シンクタンク「国際危機グループ」のダリーン・ハリファ氏は、「トルコが軍の撤退に関して譲歩する可能性は極めて低い。イドリブから撤退すれば数十万人の難民がトルコに向かうことになるからだ」と指摘する。

トルコに住むシリア人の多くはクルチダルオール氏の敗北に安堵した。同氏は選挙運動中、アサド政権との関係を回復して難民帰還の計画について話し合うつもりだとしたうえで、その帰還は2年以内で完了させるが強制はしないと言っていた。

同氏は第1回投票でエルドアン大統領の後塵を拝してから姿勢を硬化させ、全ての移民を母国に送還することを公約した。

エルドアン大統領の首席外交政策顧問を務めるイブラヒム・カリン氏は29日、トルコは安全で品位のある自発的な帰還を望むと述べた。

国際難民法は、全ての帰還は自発的なものでなければならないと明記している。

カリン氏はある国内メディアに対し、「まず100~150万人のシリア人を帰還させる計画を作っているところだ」と語った。

イスタンブールの非営利研究機関「ハルムーン現代研究センター」のサミール・アラブドゥラー氏は、選挙戦が終わった今は大きな変化は起こらないと見ているという。

同氏は次のように語る。「シリア人はエルドアン大統領の勝利に安堵している(…)自発的な帰還には何の問題もない。移住に関する政策の変更はないと見ている」

ロイター

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