
カリンヌ・マレク
ドバイ:サウジアラビア王国では急速な改革が進んでおり、女性の「目指すべき姿や未来を担うリーダー」に対してオープンな社会となっている。王国の女性たちは、そのチャンスを上手く掴んでいる、と雇用者たちの声も挙がっている。
サウジアラビアの女性たちは、これまで以上に職場に対して「情熱、エネルギー、熱意」を向けるようになっている。そうアラブニュースに話すのは、リヤドにてDiriyah Gate Development Authority(DGDA)のマーケティング・コミュニケーションズ最高責任者を務めるダニエル・アトキンス氏。
アトキンス氏によると、王国の働く女性の数は急増しているとのこと。
「私が働く女性に求めるのは、情熱、起業家精神、そして献身さであり、今のチームにいるサウジアラビア人女性には、これらが全て揃っています」と同氏は述べている。
「今、サウジアラビア人女性にとって最高の波が来ています。」
アトキンス氏の意見は、世界銀行の報告書を基にしている。その報告書では、190か国の内、2017年からの比較で最も改革した国および改善した国をランキング形式で発表されており、そこでサウジアラビアの男女平等化に対する急速な進展が取り上げられた。
銀行による「Women, Business and the Law」(WBL)2020の報告書では、王国のスコアを100満点中70.6としており、前回から38.8ポイントも上がる形となった。その結果、湾岸協力会議では一位、アラブ諸国の中では二位という成績を収めることとなった。
WBLでは、法律から見られる男女不平等さの測定、および女性の経済参加にとっての障壁の特定を行い、差別的な法律の改革を奨励している。
報告書では、8個ある指標のうち6つにおいてサウジアラビアが改善を果たしたことを取り上げており、パスポートの取得や海外旅行への制限の排除に伴う、女性のモビリティの項目の改善が顕著であった。
モビリティ(100)の他に改善が多くみられたのは、職場(100)、結婚(60)、親子関係(40)、起業家精神(100)および年金(100)であった。
また、新しい法改正では居住場所の決定権も女性に与えられ、夫婦別居も許可されている、と報告書は述べている。
このような男女共同参画の「見違えるほどの変化」は、ムハンマド・ビン・サルマーン王太子が改善目標を謳った、サウジアラビアのビジョン2030策定のお陰ではないか、とアトキンス氏はアラブニュースに述べた。
「最近では、女性が政府の上級役割に任命されていたり、伝統的に男性中心の分野であった科学分野や医学分野で活躍している」と同氏は語っている。
「彼女らは未来の目標の姿となるでしょう。」
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職場においては、セクハラや性差別を犯した場合の法律や刑事罰が制定された。
結婚については、女性が世帯主であることが許可され始めており、夫に従わなければならないという法的義務は排除された。子育てに関して、UAEと同様にサウジアラビアでも、妊娠している労働者の解雇を禁止とした。
「ビジョン2030の目標の一つは、働く女性の割合を現在の22%から30%増加させることです」とアトキンス氏は述べる。
「DGDAチームメンバーの83%はサウジアラビア人で、そのうち34%は女性です。マーケティングチームの女性割合は更に高く、57%となっています。
「私が最初に雇った三人は全員サウジアラビア人女性でした。この場所に新しい者としての印象として、この変化は国と個々のCEOによって進められているということを感じています。これが、サウジアラビアの業界全体に波紋のように広がっていくことを望んでいます。」と同氏は述べた。
王国は起業率を高めるため、金融サービスにおける性差別を禁止し、女性がクレジットをより簡単に保持できるようにした。この法的条項の改正は、女性の金銭へのアクセスを増やすことが証明されているにも関わらず、115の経済圏ではまだ実施されていない。
年金においては、退職をして年金を満額受け取ることのできる年齢(60)を男女とも平等にした。また、それにより女性と男性の両者とも、60歳での定年が義務となった。
王国で進行を遂げている変化のうち、最も有望と見えるものの一つは、元々は男性しか認められなかった職業分野に参入するために女性が教育を受け始めているということである。それらは、所謂STEMと言われる科学、技術、工学、数学の分野を指す。
例えば、昨年リヤドのプリンセス・ヌーラ・ビント・アブドゥッラハマーン女子大学(PNU)を卒業した5,200人の学生のうち、1,400人はSTEM系の学部の卒業生であった。
「近い将来、これらの分野で女性が大活躍する日が来るでしょう。」そう述べるのは、PNUの学長であるエイナス・アルエイサ氏。スイスのダボスで毎年開催される世界経済フォーラムにて、アラブニュースに語った。
「サウジアラビアから発信されている良い話の一つは、例えば世界では技術分野に従事する女性の数が減少しているのに対して、スアジアラビアでは増加していることです。他の場所では、女性はこれらの分野から離れていますが、王国では常に増加しています。」
オランダ地域の投資、エネルギー、インフラに関する助言を行うコンサルタント会社であるVEROCYのディレクターを務めるシリル・ウィダーショーベン氏は、サウジアラビアの女性の地位の改善はオフィス、職場、そして街を見ても明らかであると述べている。
「サウジ経済において、女性が果たす役割は明確です。労働が可能な人々であり、労働力とするべきなのです。」と同氏は述べる。
「同時に、労働力の多様性によって全体の生産性、収益性、持続可能性は高まります。
「女性に対して活動分野の教育を行い、戦略を立てることが必要なのです。」
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世界銀行の報告書によると、最も経済改革が進んでいる国トップ10のうち、中東、北アフリカ、そしてサハラ以南のアフリカの経済が9つ占めている。
王国の画期的な改革の中には、2018年に公的・民間の雇用におけるセクハラを犯罪化したことや、昨年に女性への経済的権限を大きく広げたことが挙げられる。
法的改正により、現在では、求人広告や雇い入れを含む雇用における女性差別は保護されており、そして雇用者が妊娠中や産休中に女性を解雇することを禁止となっている。
「これらの改革は、2015年には女性が地方選挙で投票したり立候補することが初めて認められ、2017年には女性が運転することが認められたという、サウジアラビアの歴史的変化に基づいている」と報告書は述べている。「この改革は、サウジアラビアをビジョン2030の目標に近づける上で、女性が重要な役割を担っているという認識が促進力となっている。
「サウジアラビア経済の担い手を石油やガス以外にも多様化させ、民間企業の成長を促進したり、起業を支援したりすることによって、サウジアラビア経済を近代化するという野心的な計画には、女性の労働率を増やすという目標も含まれている。」
報告書では、女性の経済参加に対する法的制約が未だ残ることも言及もしており、それらを改善すれば、女性の経済貢献度を高めることができると記載している。
卒業後に若い女性が取る進路について、ビジョン2030の戦略では、女性の労働力の大幅な増加を想定しており、今後10年間で最大30%まで伸びるとしている。
最近の統計によると、王国はその目標に向かって着実に進んでおり、民間企業の労働力の23.5%が女性であることが示されている。
「世界中どこでもそうであるように、卒業後の進路を決められるのは、卒業生らの権限です。」とアルエイサ氏は述べる。
サウジアラビアが多様化して前進するためには、王国の女性が経済的に独立すること、そして労働力のギャップを埋めることが必要である、とウィダーショーベン氏は述べる。
「ヘルスケアから金融、エネルギー、農業、産業まで、若い女性を中心として、その力は驚くべきものです」と同氏は述べる。