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サウジアラビアがクラウドシーディング技術を支援

淡水化で淡水を生成するにはコストがかかります。(Shutterstock)
淡水化で淡水を生成するにはコストがかかります。(Shutterstock)
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20 Feb 2020 12:02:25 GMT9
20 Feb 2020 12:02:25 GMT9

Caline Malek

ドバイ: サウジアラビアを含む湾岸協力会議(GCC)加盟国は、飲料水や公衆衛生のための水を長年にわたって提供してきました。

しかし、平均年間降雨量が100mm未満の湾岸諸国の生態系と水資源は、中東や北アフリカの乾燥地域全体よりも大きなストレスにさらされています。

このため、サウジアラビア政府が最近、同国の降雨量を20%近く増加させることを目的としたクラウドシーディング計画を承認したことは驚くべきことではありません。

環境農林水産省によると、この計画は、世界各地の取り組みを検証し、他のアジア諸国を訪問してクラウドシーディングの体験を調査した後に策定されました。

昨年11月に発生した3日間の集中豪雨でアラブ首長国連邦の一部地域が洪水に見舞われて以来、この地域ではクラウドシーディングが異常な大雨の原因ではないかという憶測が飛び交っていました。

UAEのクラウドシーディング計画を実行している国立気象地震センター(NCMS)によると、当時クラウドシーディング計画は活発だったものの、雷雨を引き起こすほどの気象前線が作り出されることはありませんでした。

クラウドシーディングの成果を正確に評価する方法はありませんが、1つ確かなことは、GCC諸国はこの方法を取らざるを得なかったということです。

研究によると、この技術は雲の質に応じて雨量を最大70%増加させることができるといわれています。

米国気象学会は2010年、クラウドシーディングの運用は、比較的小さな投資で大きなメリットをもたらす可能性があると発表しました。

[caption id="attachment_9842" align="alignnone" width="768"] 淡水化プラントの多くは、高濃度の海水を海洋に投棄しています。(Shutterstock)[/caption]

2007~2008年にサウジアラビアのクラウドシーディングプロジェクトのチームメンバーであった土木技師のMohamed Shamrukh博士は、最新の計画は地下水の補給に役立ち、降雨量を10~20%、あるいはそれ以上増やせる可能性があると述べています。

同氏はArab Newsに以下のように語っています。「サウジアラビアの地下水資源は、さまざまな用途への需要が高いことから過剰取水に悩まされており、クラウドシーディングは地下水を持続的に利用するための涵養を強化する際のファーストチョイスの1つとなっています。ペルシャ湾のような乾燥地帯でのクラウドシーディングは非常に複雑な物理工程が必要で、費用はかさみますが淡水化などの方法に比べて競争力があります。」

アラブ首長国連邦と同様に、サウジアラビアのクラウドシーディング計画は、特定の種類の雲を対象に、その物理的性質を利用して雨を降らせます。

通常、特定の雲に触媒 (一部は自然由来)を蒔き、水を最大限に放出させます。技術的に雲を作り出すようなことはせず、代わりに雲粒を作り出すことで降雨量を増やすことを目的としています。

サウジアラビアがクラウドシーディングに取り組む理由は非常に簡単です。平均降雨量は年間約59mmで、世界で最も乾燥した国の1つであるためです。

廃水をリサイクルし、節約と効率化を促すことで国民に水の賢明な利用を促すことが目的であるにもかかわらず、水の消費はさまざまな理由により増加すると予想されています。

人口増加と産業、エネルギー、運輸、鉱業、および農業分野の成長に伴い、水資源に対する圧力は高まっています。サウジアラビアビジョン2030の改革計画では、将来有望なさまざまな分野において、サウジアラビアを先進工業国および国際物流プラットフォームへと変貌させることを目指しています。

サウジアラビアの総水需要の約85%が地下水源によって満たされていますが、抽出率は、降雨量が少ない場合の取替率よりも大きくなっています。

その他のサウジアラビアの水需要は、毎年約27億立方メートルの海水を淡水化することでほぼ賄われています。

しかし、広大で焼け付くような砂漠が支配する世界で、海水から淡水を生成するには、経済的にも環境的にも高いコストがかかります。

淡水化プラントでは、高濃度の塩水が生成され、多くの場合は海洋に投棄されます。

国連大学水環境保健研究所によると、「サウジアラビア、アラブ首長国連邦、クウェート、カタールでの濃縮塩水の生産は世界全体の55%を占める」といわれています。

淡水化は、地球温暖化への懸念が高まっている折、炭素排出をもたらすエネルギー消費の激しい工程にも依存しています。昨年はこれまでに最も高温な3年のうちの1年になると予想されていました。

中東ではますます多くのエネルギーが必要になると予測されており、状況が悪化することを意味しています。

専門家によると、手頃な価格になりつつあるソーラーパネルを使用してこの地域で電力を生成できれば、問題の多くは解決するだろうといわれています。

クラウドシーディングは、この工程を補完する可能性を秘めています。クラウドシーディングで数日間の豪雨を降らせることができれば、幸運にも、1か所の淡水化プラントの数年分の生産量に相当する豪雨をもたらす可能性があります。このため、クラウドシーディングは淡水化よりもはるかに安価に済みます。

サウジアラビア当局によると、同国が世界気象機関と協力してクラウドシーディングの研究を始めたのは、はるか昔の1976年のことだといわれています。

ワイオミング大学との間で、アジア初のクラウドシーディングの実験を1990年に行うことで合意しました。

実験はサウジアラビアの中央部、特にリヤド、カシム、ヘイル、北西部、南西部で続けられており、サウジアラビアの専門家グループが参加しています。

その結果、クラウドシーディングによる状況改善の可能性が高いことがわかりました。

報告によると、米国コロラド州のスキーリゾートでは、降雪量を増やすためにクラウドシーディングを使用しており、2008年の北京オリンピック開幕時には、中国で人口消雨技術が使われたといわれています。

アラブ首長国連邦は1990年から、上空の雲に蓄えられた一滴一滴の湿気を取り込もうとしています。サウジアラビアと同様に、乾燥化が進む国の上位10か国に入っています。

アラブ首長国連邦の年間平均降雨量は約78mmで、サウジアラビアに次ぐ世界第2位の淡水生産国であり、世界の生産量の14%を占めています。

アラブ首長国連邦のNCMSは、クラウドシーディング計画の一環として、アブダビを拠点に活動している気象予報士に、アルアインを拠点に活動しているパイロットに対して離陸のタイミングを知らせる気象レーダーを監視させています。パイロットは、ソルトフレアを装備したBeechcraft King Air C90を操縦していますが、このフレアによって対流性の雲が形成され、水滴と雨が増加します。

Shamrukh教授は、クラウドシーディングによる降雨量の増加の有無、およびその増加量について明確な結論を導き出すには、さらに現場検証が必要だと述べています。

さらに教授はこう付け加えています。「ペルシャ湾地域におけるクラウドシーディングとその実現可能性の評価は、統合された科学的方法と地表面での同時降雨測定を組み合わせて行う必要があり、この2つの問題に対して科学的に正確に回答できるようになるには、この実験を最低でも5年行う必要があります。」

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