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現金依存が明かす日本社会のパラドックス

アラブ人が日本に抱いている最大の誤解は、その現金依存度の高さだ。(AFP)
アラブ人が日本に抱いている最大の誤解は、その現金依存度の高さだ。(AFP)
28 Oct 2019 12:10:08 GMT9
  • YouGovによるパンアラブ調査では日本経済の相対的規模に関する高い認識が明らかになった
  • 現金依存の継続は日本における伝統と現代性の混在を反映しているとされる

Tom Graus ロンドン

多くのアラブ人は日本経済の規模について正確な見解を持っていることがArab NewsとYouGovによる最近の調査で明らかになった。だが同時に日本の現金依存を過小評価する見方も多く、このような依存の根本にあるパラドックスが露呈された。

MENA地域全体を対象に数多くの日本に関する質問を行った広域アンケートでは、世界3位である日本の経済規模に関する認識は高く、63%の回答者が世界のトップ5に入るとの見解を示した。

この認識は高年齢層の方が高く、40歳以上の回答者のうち68%が日本経済はトップ5に入ると回答した。一方16~24歳でこの認識を持つ回答者は58%だった。

興味深いことに、日本を訪れたことがあるアラブ人の方が日本の経済規模について誤認していることが調査で示されている。日本に行ったことのある回答者で日本は世界の5大経済国に入ると答えたのは、わずか48%(全回答者中4%)であった。

また67%が日本はG20の加盟国であるという正しい知識を持っている一方、世界の主要経済国で構成されるG7のメンバーであると認識しているのは59%となった。

後者のケースでは年齢層管で大きな相違があり、日本がG7のメンバーであると回答したのは40歳以上で69%、16~24歳で48%であった。

しかしながら、アラブ人が日本経済に関して抱いている最大の誤解は、その現金依存度についてだ。日本ではいまだに現金が最も一般的で、買い物の際は5回中4回が現金払いだ。アラブ人の多くはこれを知らず、日本で最も利用されている支払い手段が現金であると回答したのはわずか10%だ。

これとは対照的に、クレジットカードが最も利用されている支払い方法だと回答したのは46%で、さらに仮想通貨が最も一般的だと考える回答者は、現金よりも多い12%であった。

色々な意味で、この結果は想定内だと言える。ジャパンタイムズ紙に最近掲載されたAnne Beade氏の記事にもある通り、いまだ続く日本の現金主義は、「未来的・革新的な国としての評判」に当てはまらない。特に、他の技術的先進国におけるキャッシュレス化の速度を踏まえるとなおさらだ。Beade氏によると、韓国では今や90%の決済がデジタル化されているという。

だが日本の現金依存は、伝統と現代性の混合という、同国の中心的なパラドックスの典型でもある。現金依存の継続は、日本の低犯罪率やATMの可用性などを含めた多様体だ。だがBeade氏も指摘する通り、1つの大きな要因は高齢化社会による変化への順応の遅れだ。CIAのワールド・ファクトブックのデータによると、日本の人口のほぼ3分の1が65歳以上だという。サウジアラビアの場合、この割合はわずか3.32%だ。

続く日本の現金依存が高齢化する人口と未来的要素との間に存在する軋轢を示すとするならば、両者がより調和のとれた関係を形成できるという例もある。10月15日に開催された「ドバイ世界自動運転交通会議」で、トヨタはモビリティ企業へ転換するという計画を発表し、いかに技術が日本の高齢化社会における課題の解決に役立つかという例を示した。

自動運転の開発を行うToyota Research Instituteの自動運転担当副社長マンダリ・カレシ氏は、高齢者の足となっていた鉄道が閉鎖された日本北部の北海道を例に挙げ、自動運転技術を解決策として提案した。

カレシ―氏は、「時とともに年齢を重ね、自分自身で運転することに自信がなくなります。日本では運転免許の自主返納も求められるようになりました。」とし、「そこで考えてみてください。公共交通機関がなく、自分の車も運転できない。だからといって妥協しなくても良いではないでしょうか。私たちは技術が少なくともこのような変化に役立つと考えています。」と述べた。

日本と現金の関係に対するアラブ人の誤解は広く浸透しているが、日本のハイテクなイメージからすると当然ともいえる。しかしそのような誤解は、伝統と現代性という問題を浮き彫りにすることで、思いがけず日本の最も興味深いパラドックスに光を当てる。

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