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宇宙医学は意欲的なサウジ医師たちにとっての新たなフロンティアを開くと見る専門家

ラヤナ・バルナウィ氏 — サウジアラビア初の女性宇宙飛行士でISSに滞在した初のアラブ人女性 — アクシオム ミッション2において、ヒト組織工学や再生医療を含む科学実験を行った。 (ツイッター/Astro_Rayyanah)
ラヤナ・バルナウィ氏 — サウジアラビア初の女性宇宙飛行士でISSに滞在した初のアラブ人女性 — アクシオム ミッション2において、ヒト組織工学や再生医療を含む科学実験を行った。 (ツイッター/Astro_Rayyanah)
ファルハン・M・アスラール博士とカナダのジェレミー・ハンセン宇宙飛行士。(提供画像)
ファルハン・M・アスラール博士とカナダのジェレミー・ハンセン宇宙飛行士。(提供画像)
微小重力下でのヒト免疫細胞とその炎症反応についての実験を行うためにライブ・サイエンス・グローブ・ボックスを使用するサウジアラビアのラヤナ・バルナウィ宇宙飛行士。(アラブニュース写真
微小重力下でのヒト免疫細胞とその炎症反応についての実験を行うためにライブ・サイエンス・グローブ・ボックスを使用するサウジアラビアのラヤナ・バルナウィ宇宙飛行士。(アラブニュース写真
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17 Jul 2023 02:07:12 GMT9
17 Jul 2023 02:07:12 GMT9

ラシッド・ハッサン

リヤド:宇宙探査の新時代、サウジアラビアは、宇宙飛行士プログラムと航空宇宙医学研究の好機到来により、宇宙分野における地域リーダーになりつつあり、また、医療専門家にとっての新たなチャンスが生れつつあると専門家が指摘した。

トロント大学の家庭医学・地域医学教授で、カナダ宇宙庁とNASAとの協働研究者としてISS免疫プロファイル研究に参加したファルハン・M・アスラール博士は、「サウジアラビアは宇宙分野において地域のリーダーになりつつあります。そして、サウジアラビアの宇宙飛行士プログラムの支援のために宇宙医学が必要とされており、また、この分野のサウジアラビアへの導入はサウジアラビアが独自に獲得した専門知識や知的財産の信頼度の一層の向上に役立つことになります」と、アラブニュースのインタビューで語った。

宇宙医学は、宇宙における人間の健康管理を主眼とする学際的かつ集学的な医学の分野である。それは、宇宙で生活し作業を行う人々の健康を確保し、宇宙飛行において発生する独自の課題に対応する医学分野だと、アスラール博士は語り、「宇宙医学は、宇宙での生理学的変化や研究調査、予防、診断、治療、医学的課題の管理を包含しています」と付け加えた。

トロント大学医学教授 ファルハン・M・アスラール博士

「宇宙飛行士の宇宙でのミッションに青信号を出すにあたっては、健康管理が重要な条件になります。最高の科学技術、最高のロケット、その他の応用技術を地球上で確保したとしても、宇宙飛行士のミッションは、健康面やそのミッションの安全性やリスクに対処していない限り承認されることはありません」と、アスラール博士は語った。

「こうしたことは、サウジアラビアでも湾岸諸国でもこれまで行われたことがありませんでした。つまり、このような取り組みは、この地域にとっては初のことなのです」と、アスラール博士は述べた。

「サウジアラビアの数多くの大学や機関が宇宙関連のイベントや取り組みを企画していることにお気づきかもしれませんが、現在までのところ工学、通信や衛星、ビジネスや天文学関連の企画はあっても医学関連の企画はありませんでした。宇宙飛行士を対象とした宇宙での健康や生理学に関連したいくつかの研究プロジェクトはありますが、宇宙医学全体に焦点を置いたものは皆無なのです」と、アスラール博士は付け加えた。

アスラール博士は、宇宙医学や宇宙保健の分野の開拓と確立では、医師や医療専門家のみが必要とされるわけではないと語った。

この宇宙医学・保健の分野には、工学者や政策立案者、医療専門家、栄養士、法律家などが参集し、協働することになるのだと、アスラール博士は付け加えた。

サウジアラビアの宇宙飛行士であるアリ・アルカラニ氏とラヤナ・バルナウィ氏の2人は、最近、国際宇宙ステーションへの10日間の飛行において、科学的実験とメディア・アウトリーチを行い、アクシオム ミッション2を成功裏に遂行した。

5月のアクシオム ミッション2で、微小重力が脳の電気活動に与える影響を計測するアリ・アルカラニ宇宙飛行士。(ツイッター/AstroAli11)

サウジアラビア初の女性宇宙飛行士でISSに滞在した初のアラブ人女性であるバルナウィ氏は、薬物送達やヒト組織工学、再生医療を初めとするナノ材料の治療応用に関連した幅広い実験を行った。バルナウィ宇宙飛行士は、また、ISSでは初となるDNAナノ材料の作製も行った。

アルカラニ氏とバルナウィ氏の両宇宙飛行士は、微小重力下での凧の空気力学的挙動の実例を示すためにドリームアップ・ナノラックス・スペースカイト実験装置の試験運用も実施した。

スルタン・ビン・サルマン王子は、1985年、イスラム教徒として、また、アラブ人としても、サウジアラビア人としても初めて宇宙へと飛び立った。サウジアアラビアは、その後、この分野で飛躍的な発展を遂げ、宇宙分野への大規模投資を行い、サウジアラビア国内製を含む10機以上の人工衛星を宇宙に打ち上げ、NASAや他のロシア、英国などの国々の宇宙機関との協力を推進してきた。

宇宙分野や宇宙医学はサウジ・ビジョン2030の、「活気ある社会」、「繁栄する経済」、「野心的な国家」という3つの柱のすべてに貢献し得るものです。

トロント大学医学教授 ファルハン・M・アスラール博士

サウジアラビアで現在進行中の様々な取り組みは、サウジ・ビジョン・2030において重要な役割を果たすことになる。

アスラール博士は、「私は、サウジアラビアのいくつもの大学の医師、執行部のメンバー、教員、研究者と議論し、会合を開いてきました。同様にサウジアラビア宇宙庁や計画中のサウジアラビアのスマートシティNEOMの専門家とも話し合いをしてきました」と、アラブニュースに語った。

「他にも数多くの機関の責任者や教育家、大学、医師らが会合を設定し、私との協力について話し合うために連絡を取ろうとしてくれています。それなので、これからもまだ私は会合にいくつも出席します」と、彼は語った。

サウジアラビアは、湾岸協力会議のリーダーとなることを目指している。また、サウジアラビアは、戦略的、外交的に重要な役割を果たし、国際的なパートナーシップと協力を強化していこうとしている。(提供写真)

「他の大学や、関連の省庁、さらには、リヤドのイルミ科学・発見・イノベーションセンターなど宇宙に関連があり今後実行に移される主要プロジェクトやその他、宇宙医学に関して、様々な方たちが私に連絡し、繋がりを持つ機会を増やせれば幸いだと私は思っています」と、アスラール博士は付け加えた。

アスラール博士は、「宇宙分野と宇宙医学は、サウジ・ビジョン2030の、『活気ある社会』、『繁栄する経済』、『野心的な国家』という3つの柱のすべてに貢献し得るものです」とアラブニュースに語った。

宇宙関連の分野は全体としてサウジアラビアを一つにまとめ上げている。そして、その成果は誇らしいものである。サウジアラビアの宇宙医学や宇宙保健の分野は、サウジアラビアがこの地域のリーダーとなるための他に類を見ないような機会をもたらしつつあるのだ。

航空宇宙医学の実践は、乗組員の臨床診療にとどまるものではない。(提供画像)

さらには、健康的な生活、定期的な運動、革新的な医療アプローチは、地上での医療に役立ち、質の高い生活と幸福の下支えとなるのである。

アスラール博士は、「繁栄する経済」という観点では、宇宙医学はその独自性によりキャリア形成の新たな中心的分野へと発展し、医師や研究者、世界レベルの人材に新たな職務の展望をもたらしつつあると語った。

「サウジアラビアは、湾岸協力会議のリーダーとなることを目指しています。また、サウジアラビアは、戦略的、外交的に重要な役割を果たし、国際的なパートナーシップと協力を強化していこうとしています。宇宙医学と宇宙保健の分野は、サウジアラビアにも湾岸協力会議諸国にも唯一無二の技術や知見をもたらす機会を提供するのです。また、そのようにして、サウジアラビアがこの地域のリーダーとなり、この分野で既に地位を確立したリーダー的な国々と肩を並べるようになることも視野に入ってくるというわけです」と、アスラール博士は述べた。

航空宇宙医学会は、第1次世界大戦で航空分野の進歩が加速された後、1929年に米国で設立された。(提供画像)

研究者であり大学教員でもあり、公衆衛生・予防医学と家庭医学の2分野の教育を受けているアスラール医学博士は、宇宙科学の分野で10年以上の専門的経験を積み、研修やメディアアウトリーチ、教育、研究、パートナーシップ関係の構築を行い、世界中の大学や宇宙機関、宇宙関連組織の専門家たちと連携してきたのだと語った。

アスラール博士は、サウジアラビアの数多くの医師や研究者、教育者、大学、宇宙プログラム関係者と、宇宙医学に関連した協力の在り方について議論を重ねてきた。

「研究協力について話し合うために私に連絡を取ろうとする、宇宙医学に関心を持った大学教員や大学が増えつつあります」と、アスラール博士は語った。

宇宙医学は、比較的小規模ではあるものの、既に1世紀近く存在している分野である。AsMA(航空宇宙医学会、発足時はは航空医学協会として知られていた)は、第1次世界大戦で航空分野の進歩が加速された後、1929年に米国で設立された。

航空宇宙医学の実践は、乗組員の臨床診療にとどまるものではない。宇宙空間に赴いた経験のある人々はほんの少数だが、宇宙の環境が人間の与える生理学的影響についての知見は、地球上の人々全員のための科学的知識を拡張し得るのである。

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