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リー・マジドゥブ、「アサシン クリード」最新作で主役を演じる

「アサシン クリード ミラージュ」は、ユービーアイソフトの大ヒットシリーズの最新作だ。(提供)
「アサシン クリード ミラージュ」は、ユービーアイソフトの大ヒットシリーズの最新作だ。(提供)
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16 Oct 2023 11:10:39 GMT9
16 Oct 2023 11:10:39 GMT9

ドバイ:さまざまな場面で何度も目にしてきたとおり、国際社会の多くの人々にとって、アラブの人々の立場に立って物事を見るのは、いまだに難しいことだ。長い間、映画が視野を広げる重要なツールとなってきたが、ビデオゲームの持つ力には、私たちはまだ気づき始めたばかりである。新しい世代の人々にとって、自分の手の中にあるコントローラーでキャラクターの旅を導くことほど、共感できる体験はない。表現の世界において、このことは真のゲームチェンジャーになるかもしれない。  

高い評価を得ているユービーアイソフトの大ヒットシリーズの最新作、「アサシン クリード ミラージュ」が先週、全世界で発売された。プレイヤーは、メディアがこれまで経験したことのないレベルの敬意をもって、アラブやイスラムの文化にどっぷりと浸る自分に気づくだろう。9世紀のバグダッドを舞台とするこのゲームでは、シリーズ史上最も複雑なキャラクターの一人であるバシム・イブン・イスハークが活躍するが、注目すべきは、その声をアラブ人が担当していることだ。レバノン系カナダ人の俳優、リー・マジドゥブである。  

「これは私にとってとても大きな意味があります」と、マジドゥブはアラブニュースに語った。「世界はアラビア語の美しさ、中東文化の深さや多様性を体験しています。作品すべては、本物であることを第一に考える人々によって、愛情を込めて作られています」 

マジドゥブの人気はここ数年で急上昇した。(提供)

「人々はいまだに、中東や北アフリカのコミュニティを立体的な人間としてとらえるのが非常に困難なようです。メディアにおいても、それは長い間変わっていません。この点で、『ミラージュ』のようなゲームは素晴らしいものです。私はここ数年、どんな映画や番組よりもビデオゲームに深く感動しています。没入感があるんです。ただキャラクターの目を通して世界を見るというのではなく、自分自身がキャラクターなのです。このことがプレイヤーに深く影響します。この力をバシムの物語に、アラブの物語に活かすことが、私たち皆の責任でした」 

マジドゥブは2020年公開の映画「ソニック ザ ヘッジホッグ」(原作はビデオゲームシリーズ)で、ちょい役のはずのエージェント ストーンとして出演したのだが、同シリーズの膨大な人数を誇るファンの間でカルト的な支持を受け、彼の人気はここ数年で急上昇することになる。2作目が公開された2022年頃には、マジドゥブのキャラクターは物語の柱になっており、昨年、世界興行収入トップ10に入った映画の宣伝のための、彼自身のポスターが世界中に貼られていた。 

レバノンで生まれ、2000年代初頭にアメリカとカナダで育ったマジドゥブにとって、このポスターはとりわけ感動的な出来事だった。当時彼は、アラブ人が主にテロリストとして描かれる風潮の中で、自分のようなアラブ人の顔がポジティブに表現されることを切実に必要としていた。それがなければ、自分のアイデンティティから目を背けて青春の大半を過ごし、何年もアラビア語を話すことを拒み、受け継いだ伝統を心の奥深くに埋没させてしまっていたことだろう。  

先週、全世界で発売された「アサシン クリード ミラージュ」。(提供)

「多くの葛藤がありました」とマジドゥブは認める。「レバノン人、中東人、アラブ人であることを誇りに感じられるようになるまで、長い旅をしてきました」 

そして運命に導かれるように、受け継いだものを再発見したいという願望が彼の中で目覚めたのは、「アサシン クリード」のオファーが来るほんの数か月前のことだった。 

「突然、そう思ったんです。母に電話して、『もう一度アラビア語の読み書きを学びたい』と言いました。母はすごく喜んでいました。週に4日、WhatsAppのビデオでアルファベットを勉強し直し、小学生のように読み方を勉強したんです。ぎこちない発声で、ストレスがたまりました。でも決意していました。だんだん上達し、再び自信を持って話したり読んだりできるようになりました」とマジドゥブは言う。  

「そして『ミラージュ』の話が来たんですが、製作チームは開口一番、『アラビア語は話せますか?』と聞いてきました。もしオファーが1年早かったら全然違う会話になっていたに違いない、と思わずにはいられませんでした」とマジドゥブは笑いながら言う。 

自分探しの旅は、いろいろな意味でこのプロジェクトにふさわしいものだった。バシムが最後に登場した「アサシン クリード ヴァルハラ」では、彼は陰の悪役で、人生の後半で闇に堕ちた男だ。「ミラージュ」の舞台はその十数年前、バシムがまだ光に満ち、正義を追い求めていた頃で、マジドゥブも共感できた。  

「ソニック ザ ヘッジホッグ2」でジム・キャリーと共演するマジドゥブ(右)。(提供)

「これは自分探しをする人の物語で、他の人のために最善を尽くそうとします。私はまた、自分にとって何がベストかをも探しています。単に自分のアイデンティティだけではなく、いろいろな方法で、自分が演じる人物と折り合いをつけようとしています。道筋を信頼しつつも、自分でコントロールする必要を感じ、さらにはコントロールを手放すことを学ぶという、絶え間ない葛藤があります。バシムはこのサイクルの中にいて、私自身もその中にいます」と マジドゥブは説明する。「この物語の中で、彼は自分の道を切り開こうとし、同時に、皆のために最善を尽くしたいと思っています。こういう葛藤は、私たちの多くが経験してきたことだと思います。『自分はどうすればいいんだろう?どうすれば自分にとって、愛する人にとって正しいことができるんだろう?』 と思います。こうした自問は、私を現在の場所に導いてくれましたし、今も導いてくれています」 

古代バグダッドの再現に取り組んだユービーアイソフトのチームは、これまでのゲームの舞台となった他の地域ほど資料が豊富ではないこの土地を、かつてない規模で調査し、専門家と緊密に連携して、ゲームをできる限り現実に近づけようとした。それは、イスラム黄金時代の文化、言語、そして深い信仰心への敬意である。母親とビデオ通話をしていた頃には想像もしなかったような方法で、マジドゥブはバグダッドの風景に浸り、文化的な自己発見の旅を続けた。  

「本当に圧倒されるような経験でした。バシムのようなキャラクターの声を担当した後、今、挿入動画をすべて再生し、音楽を聴き、アラビア語のカリグラフィーを眺め、デザインを見て回っています。この信じられないほど多面的な地域とその人々との、いっそう深いつながりを感じずにはいられませんし、その伝統の一部であることを、多少なりとも誇りに思わずにはいられません」    

「ついにゲームが世に出て、私もプレイすることができましたが、実は予想していなかった感情にとらわれているんです。なんとも言えない悲しい気持ちです。もう長い間レバノンに戻っていないことに気づかされましたし、中東には行ったことのない場所がたくさんあります。このゲームで旅をするのは素晴らしいことですが、今はもっと深いつながりを持ちたいと思っています」とマジドゥブは続ける。「ここは私のルーツです。次は、私自身の冒険の旅に出なければなりません」 

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