• 同サービスによると、2022年10月のサービス開始以来、契約数や利用時間は一貫して増加しており、コンテンツ・ライブラリは268％拡大したという
• 経営陣は、同サービスは「イスラム世界の多様性と創造性を称賛するものであり、人々とその伝統とを、そして互いを有意義な形でつなげることを目指している」と話す

ザイラ・ラクパトワラ

ドバイ：「世界イスラム経済の現状2022」報告書によると、イスラム教徒のメディアや娯楽への支出は2021年に2310億ドルに達し、2025年には3080億ドルに拡大すると予測されている。同報告書はまた、サウジアラビアがイスラム消費者市場の同分野で4位にランキングされていることも明らかにした。

業界が成長する中、ストリーミング・サービスのQalboxはイスラム視聴者の最前線に立つことを目指している。2022年10月に開始された本サービスは、あらゆる年齢層の視聴者にイスラム教徒向けのコンテンツを提供するサブスクリプション方式のビデオ・オン・デマンド・サービスである。

人気のMuslim Proアプリを構成するQalboxライブラリは、「A157」や「わたしの、幼い息子イマド」などのドキュメンタリー、「Sheida」や「Dayan」などの映画、テレビ番組、コーランの読誦・祈願などを提供。

子供向けのコンテンツは本サービスの重要な要素であり、経営幹部によれば、「コーランの動物物語」や「平和を作ろう」といった教育番組や、オリジナルシリーズ「子供のためのイスラム教」の提供を通じて、サービスを充実させているという。

「当社のプラットフォームは、イスラム教徒のライフスタイルに合ったエンターテインメントを提供するだけにとどまりません」と、QalboxおよびMuslim Proの親会社Bitsmediaのマネージング・ディレクターを務めるNafees Khundker氏は、アラブニュースに語る。

「本プラットフォームは、イスラム世界における多様性と創造性を称賛するものであり、人々とその伝統とを、そして互いを有意義な形でつなげることを目指しています」

Qalboxによると、中東のトップ市場はサウジアラビアで、UAE、カタール、レバノン、クウェートが後に続く。また、サービス開始以来、契約数と利用時間が一貫して増加しており、その結果、コンテンツ・ライブラリは268％拡大したという。

Khundker氏によれば、特にサウジアラビアとアラブ首長国連邦では、Qalboxの視聴者は25歳から34歳のヤングアダルトが中心で、「伝統的な物語と現代的なストーリーテリングを融合させたコンテンツへのニーズが高まっている」という。

「これらの地域ではスマートフォンの使用率が高く、高速インターネットアクセスが可能なため、UAEやサウジアラビアでは、ユーザーの実に92％がモバイルアプリを通じてQalboxのコンテンツにアクセスしています」と、Khundker氏は付け加えた。

ユーザーが本アプリでコンテンツを見るのは毎日の祈りの時間帯に近いことが多く、これは「本サービスを日々の宗教的行為に組み込んでいる」ことを示唆している、と同氏は言う。

同社によれば、教育的で宗教色の濃いコンテンツの需要が急増し、2023年には、特にラマダンのような宗教色の強い時期に、信仰関連のコンテンツが最も人気のジャンルとなったという。

聖月（ラマダン月）には視聴習慣が変化し、Muslim ProとQalboxの両方での視聴が増えるとKhundker氏は言う。そのため、Qalboxはラマダン向けのより幅広い信仰関連番組を展開している。これには、信仰や精神性について理解を深めるための教育的コンテンツや、聖月の内省的な側面を踏まえ、メンタルヘルスや幸福に焦点を当てたリソースといったものが含まれる。

Qalboxは月内にコミュニティ・セッションを開催し、ポッドキャスト、ウェビナー、アニメーションなどの他のフォーマットでもコンテンツを提供する予定だ。

「我々の目的は、ラマダンの精神的・共同体的側面と共鳴するようなホリスティックで没入的な体験を提供し、Qalboxを視聴者の聖月の伴侶にすることです」と、Khundker氏は語った。

もちろん、中東のイスラム視聴者の関心はイスラム教関連コンテンツだけに向けられているわけではない。ハリウッドの大ヒット作やトルコのドラマも、この地域では特に人気がある。例えば、クリストファー・ノーラン監督の映画「オッペンハイマー」は、2023年に国内で販売された映画前売り券の枚数で記録を打ち立てた。

そのため、人気は「我々のコンテンツ収集の指針となっています」と、Khundker氏は話す。「我々は、イスラム教徒向けのエンターテインメントを提供するという中核的な使命に忠実でありつつ、こうした多様な関心にアピールする幅広いコンテンツを提供するよう努めています」

とはいえ、本プラットフォームでは、「メインストリームのジャンルだけでなく、ニッチなコンテンツも」視聴者の共感を得られるよう提供することを心がけている、と同氏は付け加えた。

2021年の報告書「Missing and Maligned: The Reality of Muslims in Popular Global Movies（不在と中傷：世界の人気映画におけるムスリムの現実）」によると、2017年から2019年にかけて公開された興行収入上位200作品のうち、イスラム教徒が登場した作品は10％未満だった。

また、イスラム教徒は世界人口の約24％を占めるが、テレビ番組の登場人物のうちイスラム教徒はわずか1％であることもわかった。

この調査は、英国のムスリム俳優リズ・アーメッドがUSCアネンバーグ・インクルージョン・イニシアチブ、フォード財団、ピラーズ・ファンドと共同で策定した「Blueprint for Muslim Inclusion（ムスリム包摂の青写真）」の立ち上げを促した。このような取り組みや、Qalboxのようなストリーミング・プラットフォームの普及は、エンターテインメント業界におけるムスリム描写の不足を解消する一助となるだろう。

「Qalboxが他のサービスと違う点は、オリジナル作品を通じてムスリムの映画製作者やアーティストを育成し、紹介していくという我々のコミットメントです」、とKhundker氏は語った。