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コロナウイルスによる危機で今一度苦境に立つ若年層

中国中部地方湖北省武漢の東風本田汽車有限公司工場で車の組み立てを行う労働者。2020年4月8日水曜日。(AP)
中国中部地方湖北省武漢の東風本田汽車有限公司工場で車の組み立てを行う労働者。2020年4月8日水曜日。(AP)
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13 Apr 2020 06:04:11 GMT9
13 Apr 2020 06:04:11 GMT9

ランビール・ナヤール

急速に拡大するコロナウイルスのパンデミックが人類に多大な犠牲をもたらしている。死者数は総計10万人を超え、感染者数も200万人に近付きつつある。ウイルス感染による死者の大半は高齢者や持病を抱えた人々だ。若年層における被害も確認されているが、高齢者と比較するとその数は極めて少ないものとなっている。 

現時点では若年層はこの危機に対し健康面では比較的被害を受けていないように思われるが、このコロナパンデミックは別の形で若者たちに多大なる影響を与えている。長期的な視野に立つと、その被害は破局的なものへと至るかもしれない。

 コロナパンデミックが若者にもたらす影響は多岐にわたるものである。感染の拡大に伴い、まずは世界中の教育機関が閉鎖されることとなった。試験の受験は可能であるか、また試験が中止された際にはこの1年が学年としてどのように扱われるのか、などがはっきりとしないため、多くの学生たちは将来に対する不安に直面している。 

多くの学生たちにとって、自らの生活や増加し続ける教育費を支える手段はそれほど多くあるわけではない。大半の学生は生活費を稼ぐためにアルバイトを行なっており、また多額の教育ローンを抱える学生も増えている。このようなローンは学生生活が終わり職が見つかり次第返済の必要に駆られるのである。

コロナパンデミックは社会の中でも特にこういった層に対して厳しい影響を与えている。感染拡大に伴い既に世界中で数百万の職が失われたと報告されており、最終的には総計2500万もの職が失われることになるとの見方もある。この数字の大半は現在のところ主にアメリカ及びヨーロッパの一部の富裕国に由来している。こういった国々では過去数週間の間で失業率が跳ね上がっており、データによると、アメリカでは先月、20歳から24歳の人口における失業率が6.4%から8.7%へと増加、また16歳から19歳の人口においては11%から14.3%へと増加している。 

こういったデータは他国においても同様に確認されている。特にイタリアとスペインでは失業率が急速に増加、コロナウイルスへの特効薬が即座に発見されない限りは過去最悪を更新するものと見られている。アメリカ及び他国において見られるよう、最も崩壊の危機に瀕しているのは残念なことに、若者を雇用する職種である。崩壊の危険性の高い産業の労働者に関する統計に基くと、コロナショックによる解雇は特に若者たちに影響を与えることになる、と研究者は指摘している。

コロナショックによる解雇は特に若者たちに影響を与えることになる

ランビール・ナヤール(Ranvir Nayar) 

コロナパンデミックによる失業は、感染の拡大が発展途上国においていまだ極致に達していない点を考慮すると、現状の予測を大きく上回ることになると見込まれる。このパンデミックが貧困国の若年層に与える影響の厳しさはインドから届いたデータから垣間見ることができる。同国においては失業率がすでに9%に到達目前となっており、過去43年で最悪を記録している。 

同国においては全域的にロックダウンが実施されており、とりわけサービス・観光・建築業を中心に全職種において数十万の中小企業が活動を停止、主に若年層を中心とした何百万人もの労働者が先の見えない不安と向き合っている。政府からは従業員の解雇は行わず給与の支払いを続けるよう要請がなされているが、数千に至る企業が感染拡大前から続く経済危機による業績の悪化を理由に廃業することが見込まれている。

世界各国で起こるこのような雇用の解消と経済危機にある種の既視感を持つ人は多いであろう。およそ10年前、全世界は1930年代の大恐慌以来最大となる経済危機の最中にあった。アメリカの金融サービス企業における債務不履行に端を発したこの経済危機は経済界全体、そしてコロナパンデミック同様、世界中へと急速に広まった。この世界規模の金融危機によってEU諸国では失業率がピーク時には30%へと上昇、ギリシャでは若年層における失業率が54%にも達した。

事態が好転し失業率が通常レベルに戻ったのは2017年末になってのことだった。それまでの10年間、何百万人もの若者がかつてない苦境に立たされ、将来に対しての不安に悩まされた。これは主に、若者を賛辞する言葉を揃えて口にはするものの、ほとんどが若者に目を向けることもなければ、安定した将来を確約するような現実的な政策を打ち出すこともしなかった政治家たちに起因するものであった。政府は問題の発端である銀行や、その他大企業に対しては何千億ドルに上る資金提供を惜しみなく行う方針を打ち出したが、若年層が関わるような救済措置に関しては財布の紐を固く締めたままであった。

不運ではあるものの、運命は世界中の政治家たちに若年層を対象に行うべきことを行う機会を今一度もたらした。具体的な緊急支援策が発表されてきているが、人類の未来を中心に据えた計画の策定こそが重要である。

ランビール・S・ナヤール(Ranvir S. Nayar)はヨーロッパ及びインドを拠点に出版・通信・コンサルタント業務を包含したグローバル・プラットフォームであるメディア・インディア・グループ(Media India Group)の編集者である。

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