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「デザインスペース・アル・ウラー」この地の自然史をたたえるギャラリーとしてオープン

デザインスペース・アル・ウラーがアルジャディダ芸術地区にオープン(写真提供:ニコラス・ジャクソン・フォトグラフィー)
デザインスペース・アル・ウラーがアルジャディダ芸術地区にオープン(写真提供:ニコラス・ジャクソン・フォトグラフィー)
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12 Feb 2024 08:02:29 GMT9
12 Feb 2024 08:02:29 GMT9
  • アル・ウラー全域のデザイン活動に特化した初の常設ギャラリーがアルジャディダ芸術地区にオープン

レベッカ・アン・プロクター

ドバイ:アル・ウラーのアルジャディダ芸術地区の本道沿いにあるのが、コルテン鋼、ガラス、磨き上げられたコンクリートで作られた美しい現代風の建物だ。この目立つ錆びた赤茶色の建物には複雑な格子模様のファサードがある。アルジャディダやアル・ウラーの「新市街」で大部分を占めるのは、魅力的な新しいスタイルの農場家屋やもっと都会的な家屋だが、この建物はそうした家屋とは非常に対照的だ。

Gio Forma Studioが設計したこの建物は、アルジャディダ芸術地区の周囲の建物に広く使われているブリーズブロックをオマージュとして取り入れたもので、2024年2月のアル・ウラー芸術祭の開催期間中に新たにオープンした「デザインスペース・アル・ウラー」の理念を体現している。

Gio Forma Studioが設計したこの建物は、アルジャディダ芸術地区の周囲の建物に広く使われているブリーズブロックをオマージュとして取り入れたもので、2024年2月のアル・ウラー芸術祭の開催期間中に新たにオープンした「デザインスペース・アル・ウラー」の理念を体現している。(写真提供:ニコラス・ジャクソン・フォトグラフィー)

このスペースは、ギャラリーの初回展示のキュレーターでもあるサラ・ガーニ氏の指揮のもと、展示、ワークショップ、アーカイブスペースを提供し、デザインの専門家、学生、デザイン愛好家のコラボレーションを促すようにデザインされている。

デザインスペース・アル・ウラーが重きを置くのが、アル・ウラー固有の自然素材と伝統的な建築様式だ。この建物自体もこの地域の伝統的な建築様式を反映したものだ。この建物は広場のまわりに建てられているが、中庭を明るくデザインし、幾何学的なれんが造りの壁が目に見えるようにしたことで、格子模様のファサードの形をとって建物内に光と自然換気を存分に取り入れている。

「デザインスペース・アル・ウラーでは、アル・ウラーの自然史と文化遺産をたたえることに注力しています」。ガーニ氏はアラブニュースにそう語る。「その手段としてアル・ウラーの至る所で見られる伝統的な素材に焦点を当てているんです。そうした素材からは持続可能な未来についてのインスピレーションを得られますから」

このスペースが目指すのは、この地域内外のデザイン専門家のうち新進のアーティストと定評のあるアーティスト双方と交流して、アル・ウラーの自然環境と文化遺産を背景に、デザイン原則と創造的なデザインプロセスを探求することだ。

建築や都市計画からプロダクトデザインやグラフィックデザインに至るまで、あらゆるデザイン分野を対象とする。また、地元の大きなデザイン・コミュニティと交流し、支援を行うとともに、アル・ウラーの日常生活やカルチャーシーン、広範な経済におけるデザインの幅広い役割に焦点を当てる。

「私たちの願いは、デザインにより経済を活性化し、探求と実験のリソースをデザイナーに提供し、訪れた人がアル・ウラーのデザイン工程の背後にあるプロセスを研究し、探求し、つながるための場所となることです」ガーニ氏は発表したステートメントの中でそう述べている。

初回展示「Mawrid(源泉):インスピレーションを受けたデザインをたたえる」では、デザイン、建築、都市計画など、アル・ウラーにインスピレーションを受けた近年発表された10作品のデザインの背景にある調査・制作過程が紹介される。この展示は、継続して行われる展覧イベントの第一弾となる。開催期間は2月15日から6月1日までだ。

展示会には以下のようなプロジェクトがある。ジオ・フォルマ・スタジオ/ブラック・エンジニアリングのMaraya(鏡)。9,740m²の鏡張りの場所であり、畏怖を抱かせる周囲の環境と調和し、アル・ウラーの自然の質感と色彩を映し出している。イギリスを拠点とするホプキンス・アーキテクツによる、アル・ウラー初のアートデザインセンター「Madrasat Addeera(マドラサット・アディエラ)」の改修計画。Roth Architecture(ロス・アーキテクチャ)によるAzulik Eco Resort(アズリック・エコ・リゾート)。風と浸食の話からインスピレーションを得ており、プロジェクトと自然環境がうまく融合している。SAL Architect(SALアーキテクツ)が手がける歴史的価値の高いアンマール・ビン・ヤシル・モスクの改修。コミュニティと緊密に協力し、敬意と調和に満ちた改修を行う。Prior + Partners(プライヤー+パートナーズ)がAllies and Morrison(アリーズ&モリソン)と共同で監修したアル・ウラー文化オアシス地区基本計画。

いずれのプロジェクトでも原動力となっているのは、アル・ウラーの文化的景観・自然の景観を守るという使命・ビジョンだ。そうした景観があるおかげで、アル・ウラーは、何千年もの間「香料の交易路」を通じてコミュニティー、旅行者、商人、巡礼者たちが集まる場所となっていたのだ。

その他の出展者は、第2回「アル・ウラー・デザイン・アワード」の最終選考に残ったイマーヌ・メラ氏、Teeb、サラ・カヌー氏、Shaddah Studio(シャッダ・スタジオ)や、第1回アル・ウラー・デザイン・レジデンスプログラムの代表者などだ。

このレジデンスプログラムは、アル・ウラーで行われる5ヶ月間のプログラムで、アル・ウラーにデザイナーや専門家を集めて、複数の分野にまたがる作業を行うものだ。そうした作業には、インフラ整備や建築デザイン、公共空間への介入やアーバンファニチャー、持続可能性や地元の建材の調査などが含まれる。 

現在レジデンスプログラムに参加しているデザイナーは、バーレーンとデンマークのbahraini – danish、フランスのHall Haus、フランスのStudio Leo Orta、インドのStudio Raw Material、サウジアラビアのLeen Ajlanの5組だ。

「私たちが取り組んでいるのは、様々なデザイン分野で実施された様々なプロジェクトをたたえて紹介することです」。アラブニュースに対してガーニ氏はそう補足した。「小規模なものから大規模なものまでさまざまです。グラフィックデザイン、ブランディング、プロジェクトデザインといった小規模なデザインから、家具デザインや建築デザイン、そして都市デザイン、都市計画、マスタープラン策定といった大規模なデザインまであるんです」

「そのすべてで示されているのは、アル・ウラーが文化的なレベルで、またその自然景観を通して、いかにインスピレーションに満ちた場であるか、そしていかにデザイナーたちに大きなインスピレーションを与えたかです」と彼女は解説する。

展示では、マドリードのClara Sancho Studioとデザインエージェンシー「29Letters」が手がけたデザインスペース・アル・ウラーのビジュアルロゴも紹介される。このロゴは、ジャバル・イクマにある古代の碑文から、アルジャディダにある特徴的なブリーズブロックや、アル・ウラーの近年のデザインの特徴に見られるその他の建築要素まで、アル・ウラーから幅広いインスピレーションを得てつくられたものだ。

これらの様々なプロジェクトは、デザインスペース・アル・ウラー・アーカイブのアーカイブに登録され、デザインのインスピレーションの源として、また地元のデザイン活動の生きた記録として活用されることになる。

さらに、ワークショップとアーカイブは、アル・ウラーのコミュニティーに居住してクリエイティブな場へ参加することを望むデザイナー志望者を受け入れる。

「デザインスペース・アル・ウラーは、アーカイブ、ギャラリー、ワークショップスペースを兼ね備えており、アル・ウラーのデザイン活動、デザイン理念、そしてアル・ウラーが過去数年間取り組んできたデザインの工程を紹介しています」。ガーニ氏はアラブニュースにそう語った。「アル・ウラーは長い間カルチャーシーンの発展に取り組んできました。デザインというジャンルに対して数多くの取り組みがなされてきましたが、それが世界に紹介されることはありませんでした。今がその時なのです」

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