
ジェッダ:20年以上前にサウジ女性のグループが始めたサウジアラビア伝統衣装の標本収集という取り組みが、細やかなディテールで彩られた新しい本の出版という形で結実した。
長い年月の中のサウジファッションの変遷の公式な記録を製作し、次の世代にも知ってもらうため、サウジアラビア各地方にて長期にわたる創造的な調査、観察、記録がマンスージャト財団との共同作業により行われ、「サウジアラビアの伝統衣装」というタイトルの320ページの英語の本が先月出版された。
アラブニュースはこの取り組みについて、マンスージャト財団の一員であるナディア・アリレザに話を聞いた。
アリレザは、サウジの各地方の衣装に関して詳しい情報がないことに気づいた。
「私たちが自分で着る際に選ぶファッションは自分のアイデンティティや生きている時代、社会的背景や出自を表現する方法のひとつです」とアリレザは語る。
20年前には「ほとんどのサウジ人は未来に目を向け、過去に目を見ることはしませんでした。私たちは衣装について、そしてどんな人に着用されるか等、あらゆる情報を収集する重要性に気づいたのです。この情報収集は決して簡単ではありませんでした」と彼女は言う。
サウジの各地方にはそれぞれに異なる部族が暮らし、部族ごとに独自のスタイルがあるが、よく知られているものはそのうちごく一部だ―それ以外は適切な記録の欠如や部族の移動により、忘れ去られてしまった。
「未来の世代のために、衣装を撮影し、記録し、保存することがいかに重要か、非常に早い段階で認識しました。実地調査を行い、それらの衣装を知る現地の人々に会いました」
正確な情報を収集するためには、サウジのすべての地方に何度も足を運び、発見したものを各部族の長老たちに伝えるという作業が必要となった。
「そうすることで、各品目が見つかった地域に関してさらに詳しい情報を得ることができました。すべてのコレクションについてこのような調査を行いました。私たちのコレクションの衣装の多様さ、そしてそれらの世界への社会的・地理的・文化的コンテクストを深掘りする本を制作するという野望を長らく抱いてきましたが、非常にやりがいがあり、多くの学びが得られた楽しい経験となりました。
長老たちの記憶をもとにサウジの伝統衣装の歴史を再構築する試みの中で、保存状態のよい記録を見つけるのに苦労することもあった。
白いトーブはサウジの砂漠性の暑い気候により広くサウジ男性に着用されるようになった。しかしアリレザは、世界に向けて「黒いアバヤや白いトーブだけでなく、サウジの伝統衣装にはたくさんの色が使われていることを見せたかった。皮革や金属、色のついたビーズ、そして金や銀の糸の刺繍も多く使われている。履物を作るのに古タイヤのゴムも使われていた」と言う―周辺環境の特徴が各地でうまく活用されていたのだ。
「生地の多くは綿で、中には小麦粉の袋を使った裏地をつけたものもあります。昔も今も、布地や刺繍が再利用されています。天然染料を使う部族もあれば、銀や金の糸を使う部族もあります」とアリレザは語る。
この本では10の地方の10部族の伝統衣装を取り上げ、各部族やその工芸に関する歴史的な情報も掲載されている。
この本は色のついたガラスビーズが施された銀のネックレスで有名なバルハリス部族のラバサドルから、ジャザンで着用される華やかなジャスミンの頭飾りに至るまで、サウジの部族の伝統衣装や織物を伝える参考資料となる。
サウジの新世代のファッションデザイナーはサウジの伝統衣装や豊かな布地の美しさに魅入られ、多くのコレクションのインスピレーションにしているとアリレザは語る。マンスージャト財団とマンスージャト・ヘリテージLLCは現在のサウジアラビアを形成する各地の衣装や伝統への関心を共有するサウジ女性のグループにより創立された。