
ベイルート:レバノンのナジーブ・ミカティ暫定首相は17日、国会に対して経済に関する一連の重要法案を承認するよう新たに訴えた。同国の政府系ファンドおよび資本規制に関する法案の審議のための国会召集がまだ行われていないことを受けたものだ。
ミカティ首相は次のように述べた。「同様の経済危機に直面している国々では国会は審議を継続しているだろうし、これらの国々は危機を解決しているはずだ」
「レバノンでは、資本規制法案の必要性が4年前から言われているにもかかわらず、未だに国会で審議が始まっていないし、解決策を見出すための議論も行われていない」
ミカティ首相は続けた。「復興計画、銀行再編、資金ギャップ対策に関しては多数の法案が国会に提出されている。これらを全て早急に解決する必要がある」
「これらの法案を通すために国会が召集されなければ、この国の経済に安定は訪れないだろう」
「我々は並外れて困難な段階に達している。我が国の経済は現金主導の経済へと移行しつつあり、レバノンを多面的なリスクに晒している。解決策を見いだせなければ、全員が責任を負わなければならない」
国会の労働・エネルギー委員会の委員長であるサジフ・アティイェ議員は、法案審議をボイコットした多くの議員は政府系ファンド法案に抜け穴や私情が存在するのではないかという疑念を持っていると指摘する。
この法案については委員会での議論はまだ行われていないという。
一方、オサマ・サアド議員は、資本規制法案は「銀行の利益を守るものという感じがある」と語る。
サリム・アル・サイェグ議員は、「法案審議は大統領が不在な中での権力のバランスを乱すものであり、我々は大統領が主導する対話を求める」と話す。
資本規制法を成立させようとする動きに反対する預金者のグループは、議員らが国会議事堂に入るのを阻止するべく議事堂の周囲でデモを行った。
暫定政府は16日、今年度予算を承認した。
一部の閣僚が配分の見直しを要求したため、財政赤字が18.5%から約24%に急増した。
一方、ミカティ首相は17日、停電が実施されたことを受けて、主要電力会社に対し、「発電所の即時操業再開と引き換えに、同社が受け取るべき未払金を毎月700万ドル支払う」と口頭で約束した。
ミカティ首相によるこの対応は、デイル・アル・ザハラニ発電所とデイル・アンマル発電所を運営するプライムサウスが政府に対し、4年にわたる累積債務を清算するよう、また3月以降の分割払いの未払い分を支払うというレバノン電力公社(EDL)の約束を守るよう圧力をかけるために、24時間の操業停止を開始したことを受けたものだった。
プライムサウスに支払うことを約束したドルの財源について質問されたミカティ首相は、「迫る危機は解決されるだろう」とだけ述べた。
ベイルートのラフィク・ハリーリ国際空港とベイルート港は、この危機の中で電力を確保するために自家用発電機への切り替えを余儀なくされた。
同空港の責任者でレバノン民間航空局の局長であるファディ・アル・ハッサン氏は次のように語った。「空港は緊急時計画に従って操業している。しかし、空港操業のために発電機に頼るのは非現実的で持続不可能だ」
また、停電の結果、様々な地域で飲料水を家庭に届ける水ポンプが停止した。多くの自家用発電機はエネルギー不足に対応できなかった。
プライムサウスはレバノンの中央銀行であるレバノン銀行(BDL)から、あるいは国際通貨基金(IMF)からの特別引出権を通してドルを得ようとした。しかし情報筋によると、BDLは支払いを拒否したという。
BDLのワシム・マンスーリ臨時総裁は、「支払いに関する法律制定と共に、政府が中央銀行に資金を確実に返却するための抜本的な改革の実施」を求めるという自身の方針をあくまで維持すると述べた。
政府関係筋によると、政府はこの支払いの承認を控え、それを国会に送った。国会のナビーフ・ビッリー議長は、民間銀行から借り入れた凍結ドル預金へのアクセスを意味するとして関与を拒否した。
ラジ・アル・ハッジ議員はこう言う。「(聞くところでは、)まだ停電が続いている理由は複数ある。2010年以降の電力補助金は400億ドルに上り、発電・送電における技術的・業務的な損失が40%ある」
「我々は40年前から、24時間365日の電力供給を待ち望んでいる。その場しのぎの解決策に人々はうんざりし不満を抱えている」
プライムサウスは今回の操業停止を決定する前、EDLと締結した2つの発電所の操業・保守に関する年間契約の延長を受け、事前に複数回の警告を発していた。
この契約は2021年に期限切れとなったが、エネルギー省から4500万ドルの支払いを約束されたことを受け、プライムサウスは警告を撤回した。
あるフランスの報告書によると、レバノン国家の電力コストは合計で「毎月1億6000万ドル」に上るという。
エコノミストのマーク・アユーブ氏はこう指摘する。「1992~2019年の電力部門における経済損失は500億ドルを超えており、公的債務の半分以上を占める」
レバノンでは電力供給が1日2~4時間であることも多い。