
マット・ロス、ロンドン
公式な記録がほとんどないため、日本の大名・織田信長のために戦ったアフリカ人の侍・ヤスケ(弥助)の物語は、未だにどこか謎めいたままである。このミステリアスな戦士に関する文献上の記録は、封建時代の日本の歴史においてほんのわずかな数しか出てこない。しかし、Netflixの新作アニメは、創作上の特権を熱狂的(そして自由)に使うことを選び、それを土台にラション・トーマス(『ブラック・ダイナマイト』『キャノン・バスターズ』)の原案および日本のスタジオMAPPAのアニメ制作によって全6話の物語に仕上げられた。
信長(1582年に京都で起こった伝説的な事件「本能寺の変」で裏切られた人物)の家来の1人だった元侍のヤスケは、主人の暗殺のことが未だに心から消えない。彼は今、僻地の村の船頭として、静かに暮らしている。不思議な力を持つ少女のサキが、超自然的な戦士や残忍な武将たちから逃げ出した時、このヒーローはしぶしぶ彼女を守ることを約束する。そして彼は、魔法の戦いや、流血の決闘、そして敵対する魔術師たちの世界に引き込まれていることに気づく。ヤスケ(英語版の声優はラキース・スタンフィールド)は無口なヒーローである。奴隷から侍へ至る彼の旅の物語(メインのストーリー中にフラッシュバックで語られる)は、現実の記録によって裏付けられているものの、『ヤスケ』のプロットはそのような経験的な詳細を問題としない。その代わりにトーマスが16世紀の日本に取り入れたものの中には、変幻自在なワーベア、巨大なロボットメカ、ミュータントの司祭、そして魔法を使うシャーマンさえ含まれる。
頭が痛くなるような混在ぶりだが、人によっては少し神経に障るかもしれない。例えば、ヤスケに出会った人々は彼の肌の色に大きくろうばいする。しかし、それらの同じ登場人物が、早口のロボットや、10フィートもある戦士の熊、念力を使う魔術師同士の激しい戦いにはひるむことさえない。そして、物語が最後の対決に向かうに連れ、この主人公は単なる物語の伝達手段となり、1つの幻想的な戦いから次の戦いへと歩みを進めるだけである。『ヤスケ』は異常に派手な血みどろのアクションフェストだが、魅力的な現実世界の侍についてもっと知りたいと思っている人にとっては、ここでその欲求を満たすものはほとんど見つからないだろう。