



ダイアナ・ファラー ドバイ
中東で唯一の懐石料理を出す料亭である湖畔亭では、たいていのアラブ諸国と湾岸諸国の客は、他国の人たちよりもくつろぐことができると料亭のマネージャー、上田美薫氏は語る。
美薫氏によると、日本の季節の食材を使用した伝統的な懐石料理のコースを複数提供している。各料理には説明と大がかりな準備が必要なため、食事時間は最長2時間だ。
「アラブ諸国のお客様が多くいらっしゃいます。アラブ首長国連邦とサウジアラビアからの方が多いです」と美薫氏は語る。「当店のコースは主に牛肉を使用した料理ですが、湾岸諸国のお客様にとても喜ばれています。雰囲気もとても快適に感じていただいています。床に座って食事をするのがアラブの文化にとても似ているため、違和感を抱かないのです」
湖畔亭はドバイオペラ内にあり、以前に日本に行ったことがあり、懐石料理を食べるとはどういうことかを知っているアラビア人客が数多く訪れていると美薫氏は語る。
「当店のお客様は、全般的に年齢層が高めで、騒々しい流行の料理店よりも、静かでくつろげる雰囲気の料理店がお好みです」
美薫氏によると、最も大きな問題は、食事を始める前に客に靴を脱いでもらうことだという。
「ヨーロッパの方は靴を脱ぎたがりません。ですがアラブ人の方は文化が似ているため、普通は理解してくださり、よりくつろいでくださいます」と美薫氏は語る。
美薫氏の夫で湖畔亭料理長である寿夫氏は、日本の伝統料理の提供について、アラブ地方出身の客はハラール和牛を注文することが最も多いと語る。
「この業界では、最も人気があるのはテンダロインとストリップロインです」と寿夫氏は語る。
寿夫氏は料理人として20年以上働いてきたが、ハラールの食材を使って料理を作るのは最近になって始めたことだと話す。
「私が日本にいた頃は、ハラールの食材を使って料理をしたことはありませんでした。ハラールのレシピで料理をすることにもそれほど大きな違いはありませんが、使用する食材に慎重にならなければなりません。和食にはしょうゆを多く使いますが、しょうゆにはアルコールや日本酒が含まれていることがあります」と彼は言う。
ハラールフードはドバイの納入業者から発送されるため、ハラールフードを見つけるのはそれほど難しくないのだと寿夫氏は語る。新鮮な季節の食材については、日本から週に2回受け取っている。
「私はいつも、日本でしていたのとまったく同じ方法で料理しようとするのですが、やはり食材が違います。アルコールが含まれないしょうゆや、その他のハラールの食材です。そこで、食材に合わせて味を調整するのですが、これが難しい場合があります。これが唯一難しいと感じるところです」
湖畔亭は開店して2年になる。以前、美薫氏と寿夫氏はアラブ首長国連邦の大規模レストランで一緒に働いていた。
夫婦は自分の懐石料理の料亭をドバイに開くことに決めた。アラブの市場では、湖畔亭で提供しているような季節の料理を味わえる店がないと感じたからだと彼らは語る。