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レバノン・サーフィン連盟の、文化的変化を起こそうとする取り組み

レバノンは、サーフィンの目的地としてあまり知られていないかも知れないが、レバノン・サーフィン連盟は、その存在感を高めることに強い決意を持ち、サーフィンの発展を支援している。(サーフ・レバノン)
レバノンは、サーフィンの目的地としてあまり知られていないかも知れないが、レバノン・サーフィン連盟は、その存在感を高めることに強い決意を持ち、サーフィンの発展を支援している。(サーフ・レバノン)
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06 Jun 2021 05:06:49 GMT9
06 Jun 2021 05:06:49 GMT9

カーラ・シャハルー

ドバイ:来たる東京五輪では、世界のアスリート1万1000人以上が競い合う。そのすべてが金メダルという同じ夢を持っている。しかし、夢はすべてが平等なわけではない。

2019年、サーフィンが競技として待望の五輪デビューを日本で果たすに当たり、レバノンがその出場資格を得ようと宮崎市で開催された『ISA(国際サーフィン連盟)ワールドサーフィンゲーム』に出場した際、世界のアスリートたちの注目が、面積1万456平方キロメートル、人口1000万に満たない小国のレバノンに、釘付けになった。


宮崎で開催された『2019 ISAワールドサーフィンゲーム』でのレバノン・サーフィン連盟の様子。(レバノン・サーフィン連盟)

2020年東京五輪の参加資格は逃したものの、彼らの参加でもたらされた国際的な評価は、レバノン・サーフィン連盟にとっての画期的出来事となった。こうした大会に出場する多くのチームと異なり、レバノン・サーフィン連盟は全面的に個人の資金で成り立っている。国家の精鋭スポーツにもわずかな予算しか充てられないレバノンでは、サーフィン連盟の活動には資金が全く割り振られず、結果として、アスリートたちの成績を伸ばすための戦略も立てられないことになる。

レバノン・サーフィン連盟を創設したアリ・エル・アミニ氏とラニア・ハラビ氏が、アラブニュース・ジャパンの独占インタビューに応じ、紛争の絶えないこの国にスポーツを通じた安息所をいかにして作り上げたか、国家代表チームを作ろうとの決断の裏にあった思い、スポーツに対するレバノン政府の関与が限られる中で連盟を維持していくことの難しさなどについて、語ってくれた。

レバノン・サーフィン連盟創設者のアリ・エル・アニミ氏(左)とラニア・ハラビ氏(右)

「2012年に、私が『サーフ・レバノン』を立ち上げました。その後、ラニアも加わって、国内のサーフィンを促進する活動を開始し、2015年にサーフィン連盟を軌道に乗せました。国内でサーフィンを発展させようと取り組んできましたが、やってきて分かったのは、これは非常に大変な活動だということです。2019年の五輪予選大会では、五輪出場資格を獲得できそうなところまで行ったのですが、あと少しで叶いませんでした。その後、レバノンの経済が破綻し、新型コロナの騒動が起き、私たちの活動は後退してしまいました」とエル・アニミ氏は述べた。

レバノンでサーフィンをしているレバノン・サーフィン連盟の共同創設者アリ・エル・アミニ氏。(サーフ・レバノン)

サーフィンの本場である米国カリフォルニア州ハンティントンで生まれ育ったエル・アミニ氏は、2012年にレバノンのサーフィン界に参入し、そこで、大のサーフィン愛好家でもある起業家のハラビ氏と手を組んだ。2人はサーフィンへの情熱を自分たちのルーツであるレバノンに持ち込み、人々と国内の海岸線との結びつきを図ることでサーフィンを身近なものにすると同時に、連盟内に「平和な空気」を醸造し、年中サーフィンができる国としてのレバノンを推し出すことを決意した。

活動内容としては、意欲的な若いサーファーたちには、海の安全、サーフィン技術、実践スキルなどを指導する海洋意識向上ワークショップを開催し、サーフィンを学びたい人には、エル・アミニ氏のサーフィンクラブ兼訓練スクールである「サーフ・レバノン」がサーフィン用具を貸し出すほか、アスリートには、トレーニングを支援し、連盟から国際大会に出場できるようにしたりしている。

 

「連盟を立ち上げた当初、私たちはこれを北から南まで広げたいと思いました。レバノンは海岸沿いに位置するため、海へのアクセスが非常に良いのです。連盟化することで、すべてのサーファーに海岸を使用するためのグリーンパスを提供することができると考えました。それによってサーフィンが国家スポーツとなり、サーファーは、波が民間施設の直ぐ正面にあるからといって特定のホテルや場所に使用料を支払わなくてもよくなり、ビーチへのアクセスがし易くなります」とエル・アミニ氏は述べた。」

「連盟化することで、国内ではそうした障害が排除できます。国外に向けては、連盟化によって、レバノンにはサーフィン向けの海岸があるとアピールすることができます。レバノンは、単なるパーティやスノーボードやフムスフェスティバルだけの場所ではなく、世界中からサーファーたちを呼び込むことができるのです。サーファーたちは波だけを求めてやってくるのではなく、文化や食を求めます。そしてレバノンにはそれらすべてがあります」

「レバノン人は世界有数の粋な国民で、非常に親切で、ここにはサーファーに適した波だけでなく、おいしい食べ物があります。インドネシアやオーストラリアほど世界クラスの波ではないにしても、晴れた日には世界最高の場所のひとつとなり得ます」

「もうひとつは、自分たちについて回る政治的背景や宗教的背景から距離を置きたいと考える若い人々のコミュニティーに、サーフィンを浸透させていくことでした」とエル・アミニ氏は付け加えた。

ハラビ氏はまた、世界中のサーファーたちを惹き付けて彼らの注目をレバノンに向けるため、世界プロサーフィン連盟の予選シリーズのような大会の開催を通して、レバノンを国際スポーツの地図上に載せるという、連盟のより大きな使命についても詳しく語ってくれた。

「将来的には、レバノンを地図上に載せることができるかどうかも見てみたいと私たちは思いました。サーフィン大会を国内で開催したり、国際サーフィン大会のツアー開催地として選ばれるように誘致してみたり」とハラビ氏は述べた。

エル・アミニ氏によれば、中東地域で開催される予選シリーズは現在、テルアビブで開催される大会ひとつだけだという。そこで連盟は、国内のサーフィンを発展させ、オマーン、アラブ首長国連邦、モロッコ、イランといったアラブ諸国のサーファーたちが、中東地域の第2のスポットとしてレバノンを検討するようにしたいと考えた。

自分たちの国の可能性を示したいとの揺るぎない望みを武器として、連盟の共同創設者である彼らは、平和な社会は実現可能であるという希望を持ち続けてきた。しかしその崇高な志にもかかわらず、そのような大会を組織するプロセスは、レバノン国家の厳しい現実を前にして、ますます困難であることが判明している。

レバノンは過去数十年で最悪の経済危機に見舞われている。それは新型コロナウイルスで悪化し、さらに政情不安や、死亡者178人と負傷者6000人以上を出し、数百人をホームレスにして街の半分を破壊した8月4日のベイルート爆発事故などの複合要素が重なった。

「すべてを私とアリの自己資金で賄っており、政府からの支援は受けていないということを理解していただくのは重要です。政府が、世界プロサーフィン連盟予選大会の開催資格をアラブ諸国で初めて獲得することの意味や、それを後押しすることの意味を理解してくれたりすることはないのです。そういったスポーツ文化が彼らの中に存在していないからです」とハラビ氏は述べた。

レバノン通貨が暴落し、生活必需品の価格が高騰し、最貧層の国民たちの飢餓の危機が迫る中、政府助成金を得る可能性や、政府がそのようなスポーツプロジェクトへの公共投資の機会費用を再評価してくれる可能性は、さらに低くなっている。

このように公的支援が得られない状況では、連盟は運営コストを限られた個人的資金で賄い続けるしかなく、それによりサーフィン界の発展が遅れている。

「この状況が、サーフィンに関するすべてに影響を及ぼしています。新型コロナによる都市封鎖、デモ活動による路上バリケード、多くの人々が職を失い収入を得られない経済状態。サーフィンは贅沢なスポーツで、生活に必要なものではありません。サーフィンだけでなく、すべてに影響を与えたと思います。レバノンの人々は日々の生活を賄うのに必死で、今はサーフィンのことなど考えません。それどころではないのです」とエル・アミニ氏は述べた。

創設者である両名は、レバノンの騒乱以前から資金援助の獲得に苦労しており、省庁への助成金申請には「耳を貸してもらえず」、大企業への依頼はサーフィン文化への馴染みが薄いことから不成功に終わったと説明する。

例えば、宮崎での『ISAワールドサーフィンゲーム』の際には、他国が3名を参加させたのに対し、彼らの連盟は選手1人分を賄うだけの資金しかなかった。それにより、1人のサーファーの技術に頼らざるを得ないという不利な立場に置かれた。

宮崎市の木崎浜海岸で開催された『2019 ISAワールドサーフィンゲーム』にレバノン代表として出場したレバノン生まれのプロのサーファー、イブ・ブライト氏。(レバノン・サーフィン連盟)

レバノンで生まれて米国カリフォルニア州で育ったプロのサーファーのイブ・ブライト氏は、予選シリーズの大会に出場した経歴があったことから、同大会でレバノン代表選手に選ばれた。

連盟創設者の両名はブライト氏の業績を強調し、ラウンド7まで勝ち進んで単独でレバノン人の可能性を証明して見せた彼の活躍を褒めたたえた。


宮崎氏の木崎浜海岸で開催された『2019 ISAワールドサーフィンゲーム』にレバノン代表として出場したレバノン生まれのプロのサーファー、イブ・ブライト氏。(レバノン・サーフィン連盟)

「イブ・ブライト選手は、この大会で私たちにとってベストな選手でした。私たちは、実際に成し遂げることのできる人を欲していたのです。彼がチームに存在したことで、私たちは数ラウンドを勝ち抜けました。参加して直ぐに敗けるという結果にはならずに済んだのです。私たちは出場選手が1人だけでしたが、スリランカなどの他国よりも良い結果を出しました」とエル・アミニ氏は述べた。

「通常、予選シリーズには3名のサーファーを出場させることができるのですが、私たちには3名分を参加させる資金がありませんでした。そのため、最下位になりたくないという思いから彼を選びました。そして、たった1名のサーファーで、アジア6位となったのです。これは快挙でした」とハラビ氏は付け加えた。

エル・アミニ氏はモロッコを例に挙げ、国の成長や訴求力に対してスポーツが果たす重要な役割、そして観光業界に及ぼす大きな影響について語った。エル・アミニ氏は、モロッコのラムジ・ボヒアム選手が五輪出場の資格を獲得したと述べ、次のように続けた。「モロッコには25年のサーフィン文化があります。政府が資金を援助しており、サーフィンに関するすべてをサポートしています。モロッコの観光収入は、他の何よりもサーフィンから来ているのです」

レバノン国内にサーフィン文化を促進するという連盟創設者の両名による取り組みは、現在も続いており、連盟は設立時から着実に拡大し、全国で約200名の会員がいる。

「海の中では誰もが平等に扱われます。間違いを指摘するときには、怖がらせないように、すべての人が最大限楽しめるよう努めています」とエル・アミニ氏は述べた。

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