アラブニュース - ドバイ
先駆的な文化プロジェクトとされるルーヴル・アブダビですが、人類が共有する物語を伝えるという目標は、独創的な日本の美術品があってこそ成り立ちます。
芸術と文明の美術館には、前近代世界における知識の伝播などをテーマに、日本の美術品の粋を集めたコレクションが展示されています。ここでは、美術館で展示されている独創的な作品の一部をご紹介します。
日本と世界
藍色の背景が鮮やかに彩られた屏風には、全長2.5m以上の地図が描かれています。
これらの地図は、前近代において世界的な知識の伝播が起きていたこと、そして、ポルトガル人とスペイン人がアジアへの進出を進め、イエズス会の布教活動が始まっていた時代に、日本が世界との交流に関わっていたことを示しています。
一枚の屏風には、平面投射図に日本列島が描かれています。これらの地図により、日本人は西洋の視点で世界を眺める術を手に入れ、地図製作に革新がもたらされました。
自分の国が世界でどの位置を占めているのか。突如として世界への門戸が開かれた国が抱く疑問は、日本にも共通していました。
美しさと強さ
戦国大名による戦争が絶えなかった日本ですが、17世紀初頭以降、徳川家による治世が250年にわたって続きます。
日本全土に訪れた太平の世にも関わらず、甲冑の生産は継続され、階級や権力の証として、非常に重要な役割を果たすようになりました。
実用性や防御力よりも美しさが重視されるようになり、製作者たちは優れた技術的能力を遺憾なく発揮しました。
この見事な甲冑一式は、毛利家・萩藩(長州藩)の藩士、宍戸環のために製作されたものです。
広重ブルー
歌川広重(1797〜1858年)の絵は、特徴的な構図に基づき描かれています。ここでは、左下にある2本の木の先端部が、奥行きを表現するための基準点になっています。左奥に見えるのが富士山で、消失点の位置を占めているのが象徴的です。
2本の木と富士山の間に描かれているのは、平らな緑の草原と、そこに佇む平坦に描かれた人影です。微かな陰影により表現された丘は、端から端まで曲線で描かれており、「吹きぼかし」技法により絵具でグラデーションをなすことで、景色の雰囲気や詩的な特徴を作り上げています。
上を見上げると、空にも同じ技法が使われており、青の絵具で描かれた帯は、抽象絵画的とも言える表現です。
オランダ人が1829年に日本に持ち込んだ「紺青」は、広重のアートスタイルの象徴でもあり、西洋では「Blue Hiroshige」という呼び名もあったほどです。
羽飾りを持つ鎧
この甲冑は、西洋世界のコレクションにおいて、特に美しく重要なものとされています。類まれな職人技により、鉄板には彫金が施されています。
装飾を施し意図したデザインにする工程では、鉄板が様々な道具によって打ち出され、裏側からはエンボス加工が加えられています。
最後には仕上げとして、前部に彫刻刀を用いて精細な絵が彫られました。全ての部品に複雑なデザインを施したり、貴重な天然鉄に彫金を加えたりなど、非常に独特な特徴を持つこの甲冑は、まさに傑作です。
この鎧を製作したのは、おそらく有名な甲冑師、宮田勝貞(1654〜1730年)であり、日本で強大な権力を持つ裕福な大名が所有していました。
宮田勝貞が製作した中でも、この甲冑は明らかに、最高傑作の一つに数えられるでしょう。
近世からの武器と鎧のコレクションには、既に宍戸家の見事な甲冑が含まれていますが、宮田勝貞の作品が加われば、されに充実したものとなるでしょう(LAD.2010.013)。
絹の素材の優雅な色使いや、様々な部品の見事な保存状態により、本作品は非常に特別な存在となっています。
縄文土器
美術館は昨年、展覧会「Japanese Connections: The Birth of Modern Decor」を開催し、日本の美術が、20世紀末における装飾様式の発展に与えた影響について探求しました。
開催期間中、先駆的なポスト印象派アーティストによる名作の数々が披露されました。
それに合わせて、彼らに影響を与えた日本の巨匠、歌川広重、葛飾北斎の版画も展示されています。
日本が1850年代に開国して以来、ヨーロッパ中の芸術家、デザイナー、製作者が「ジャポニズム」という新しい潮流の虜になりました。そこからは芸術作品も生まれています。
「Japanese Connections」展覧会では、日本の巨匠、歌川広重と葛飾北斎による風景画が展示されました。
美術館は、これらの作品の展示を通じて、装飾美術の発展における、文化の垣根を超えた影響力の重要性にスポットを当てました。
ルーヴル・アブダビは2018年10月、「Japan Weekend」を開催し、日本の美学や文化に着想を得たパフォーマンスや上映、ワークショップを実施しました。