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東京オリンピック着物国際プロジェクト、4年間の成果を展示

(Facebook/イマジンワンワールドKimonoプロジェクト)
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02 Aug 2021 03:08:41 GMT9
02 Aug 2021 03:08:41 GMT9

ダイアナ・ファラー

ドバイ:日本の国際機関「イマジンワンワールド」は、地球上のすべての国に独自の着物の柄を作ることを目的として、2017年に「KIMONOプロジェクト」を開始した。

着物は、それぞれの国の大使館の協力を得てデザインされ、制作された。出来上がった着物は、その国の独自の文化や歴史、さらには自然や建築物の美しさが反映されるように作られている。

イマジンワンワールドは、この着物が東京オリンピックの開会式に採用されることを期待していたが、それは叶わなかった。

プロジェクト開始から4年が経過し、現在206点の着物が制作されているが、その中にはアラブ諸国のためにデザインされたものも含まれる。

ここでは、その一部をご紹介しよう。

1.サウジアラビア王国

サウジアラビアの建物、花、椰子の木、砂漠をイメージして和田全央氏がデザインした着物。生地には薔薇の模様があり、在日サウジアラビア大使館のアドバイスにより、地色には鮮やかな青を採用した。

サウジアラビアの帯は斉藤織物が制作、帛撰が監修した。ナツメヤシの模様が織り込まれた作品となっている。

刺繍のように見える織り組織は、京都の西陣でも数少ない技法であり、浮き上がるような立体感が、この作品に 「威厳と気高さ」を与えている。

2.アラブ首長国連邦

この作品の制作者は森川雄大氏。着物にはドバイの摩天楼とともに国が表現されている。椰子の木、空を飛ぶ鷹、ラクダのシルエット、装飾品などが、国旗の色に合わせて描かれている。

帯は、服部織物が制作しました。金箔を特徴とする中東の織物技術が使われている。

3.オマーン

この着物の作者は眞鍋沙智氏で、オマーンを象徴するスルタン・カブース・ローズに、美しいモスクが垣間見えるデザインとなっている。また、オマーンの伝統にしたがい、短剣(ハルジャル)も描かれている。イスラム建築の対称的な装飾模様も金箔で表現されている。

筑前織物が制作したオマーンの帯は、グランドモスクに見られる幾何学模様をベースに、中央に国旗の色を配し、黒と金の糸を織り込まれている。

4.クウェート

蕪木保男氏は、クウェートタワーを「ホロ・グリッター」と呼ばれる金加工で描きクウェートの着物を制作した。また、国章にはスワロフスキー・クリスタルを使用した。無線友禅、手描き友禅、エアブラシなど、あらゆる技法を駆使した作品。

クウェートをテーマにした帯は龍村美術織物が制作し、クウェートの首都にあるグランドモスクの内装に着目し、国旗の色を使って再構築した作品。

5.バーレーン王国

重田由美氏によって制作された作品は、着物全体に真珠のような色調が散りばめられ、バーレーン国旗を精巧に表現している。

相澤久美子氏のバーレーンの帯は、国旗の色である赤と白に加え、国名にちなんだ青が使われ、長い歴史、文化が表現されている。

6.カタール

カタールの着物は、本郷葵虹氏によるもので、正面からは砂漠と近代的な高層ビル群が見える。背面には星空とアラビア海で夜が描かれた。

帯は着物と同じ作者によるもので、花紋が織り込まれています。裏地にはアラビア海をイメージした緑を使用し、カタールの夜を表現している。

7.イエメン共和国

イエメンの着物は市村久子氏によってデザインされた。ユネスコの世界遺産であるザビード、岩の上の城、サナア旧市街、イエメンの女性の伝統的な衣装が、サンドイエローとライトグリーンで描かれている。また、イエメンの伝統的な建築物に見られるステンドグラスの模様も見える。

古賀陽子氏が制作したイエメンの帯は、イエメンの国旗をもとにした配色になっている。金糸と白糸が文様に使用され、複雑なデザイン構成の中にデザイナーの技量が発揮されている。

8.イラク共和国

この着物の作者は酒井修氏。チグリス・ユーフラテスの2つの川を、青い空とベージュの砂で独特の曲線で表現している。イラクの国花であるバラが、着物に散りばめられている。

イラクの帯は、川島織物セルコンが世界遺産に登録されている古代バビロンの遺跡に焦点を当てて制作した。帯には、古代バビロニア時代の紀元前6世紀にネブカドネザル2世が建設したイシュタル門も描かれている。

9.ヨルダン・ハシェミット王国

ヨルダンの着物は、上田外茂治氏によって制作され、国旗の色である黒、白、赤、緑が使用されている。裾から立ち上がる千鳥状パターンは、日本の伝統的な文様である「立涌」を彷彿とさせるもので、ヨルダンが末永く繁栄するようにとの願いが込められている。また、国花である「ブラックアイリス」や、「牡丹唐草」、「中東華文」、「ペトラ遺跡」のシルエットも素敵なアクセントとなっている。

紫紘は、金と銀の色でペトラ遺跡とブラックアイリスの花を帯に織り込んで、ヨルダンの優雅さをさらに強調している。

10.レバノン

レバノンの着物は染匠市川がデザインしたもので、教会とモスクが並んでいる。海を渡るフェニキアの船、フェニキアのアルファベットが描かれています。数多くの戦乱で荒廃と再建を繰り返してきた歴史の象徴である黄金のフェニックスが描かれている。

服部織物では、民族衣装とベリーダンスの衣装をテーマにして、レバノンの帯を制作した。6000本の経糸を使用し、織元ならではのしなやかな風合いに仕上がっている。

  1. パレスチナ

本間哲哉氏が制作したパレスチナをテーマにした着物には、エルサレムストーンと呼ばれる薄茶色の石で作られたアーチ型の門が描かれている。西岸の緑の野原、ヨルダン川、ガザ地区の海岸の青い風景が織り込まれている。最も注目すべきは、オリーブの枝、椰子の実、アーモンドの花、サンバードなども、着物に描かれていることである。ヨルダン川西岸地区とガザ地区という分断された地域が、1つの国として着物に収まることが意図されている。

パレスチナ刺繍帯プロジェクトが、パレスチナの伝統的な柄の帯を制作した。これはパレスチナの家庭で女性が通常行っている技法である。この刺繍はタトリーズとしても知られており、それぞれの文様はそれぞれのパレスチナの地域に固有のものだ。

  1. シリア・アラブ共和国

この着物は酒井教人氏がデザインしたもので、世界遺産のパルミラ遺跡が描かれ、石柱が全体に配置されている。着物の肩には、シリアの国章が輝いている。裾には、シリアの国花であるダマスクローズや、オリーブ、ジャスミンの花があしらわれた。

おび弘のシリア帯は、古代シリアで生まれた寄木細工をモチーフにしている。

  1. エジプト

福村廣利氏がデザインしたエジプトの着物には、パピルスの草原に鳥、ヒエログリフ、ピラミッド、ホルス神、縦の線が描かれている。ナイル川の豊かな恵みを虹色で表現し、ピラミッドにはエジプトのナショナルカラーを取り入れている。

2つの帯は石川つづれが制作したもので、爪掻きつづれの技法を用いてホルス神が織り込まれている作品。

  1. アルジェリア人民民主共和国

藤理工芸がデザインした着物の裾には、タッシリ・ナジェールの壁画やジェミラの遺跡など、数多くの世界遺産が描かれ、アルジェリアの長い歴史を表現している。3色で描かれた国花のバラに加え、背面の大きなバラは、各地に残されたローマ遺跡のモザイク画を参考にして、歴史の重みを表現した。

おび弘が制作したアルジェリアの帯は、再びバラがテーマになっている。宮殿の天井画に着目し、国花であるバラをモチーフにした柄を、金箔と色糸で贅沢に織り上げている。

  1. チュニジア共和国

白坂幸蔵氏のデザインによるこの着物は、多様な気候や風景を持つチュニジアの豊かな自然が表現されている。砂漠の茶、塩湖の赤、地中海の青、まっ白な街並み、動物のシルエット、葡萄唐草、先住民の残した文様などが描かれている。国花であるフサアカシアが着物全体を飾っている。

渡文がデザインしたチュニジアの帯は、イスラム美術の青に焦点をあてて、古代遺跡の壁画で構成されている。

  1. モロッコ王国

モロッコの着物は、モロッコを訪れた大村幸太郎氏が、目にした風景を描いたものだ。サハラ砂漠、アトラス山脈、地中海への旅がそれぞれシルエットとして描かれ、彼が出会った人々が様々な花に包まれているように描かれている。

服部織物が制作した帯は、金箔を3枚重ねるという究極の引箔技法でモロッコのアラベスク文様を織り込んでいる。アラビア芸術の美しさが際立つ作品。

  1. スーダン共和国

上村米重氏の作品で、古都ヌビアの遺跡、クシュ王国のメロエのピラミッド、国花のハイビスカス、ヒマワリ、世界自然遺産の国立海洋公園にある美しい紅海の海と魚たちが描かれている。砂漠と海の間の白い部分は、ナイル川を意味する「白ナイル」として描かれ、大自然と悠久の歴史が表現されている。

川島織物セルコンが制作したこの帯は、ピラミッドの形がデザインされ、国旗の色を取り入れている。砂漠の風紋、風、ピラミッドの石積みを金で織り上げている。

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