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持続可能性に目覚めつつあるアラブのファッション

Fashion Forward Dubaiでは、サウジアラビアのブランドSadeemは持続可能性を大きなテーマにしたコレクションを披露した。(提供)
Fashion Forward Dubaiでは、サウジアラビアのブランドSadeemは持続可能性を大きなテーマにしたコレクションを披露した。(提供)
Sadeemは今月開催のFashion Forward Dubaiで持続可能なコレクションを発表した。(提供)
Sadeemは今月開催のFashion Forward Dubaiで持続可能なコレクションを発表した。(提供)
Sadeemは、サウジアラビア人デザイナーのサディーム・アルシェハイルさんが率いるプレタクチュールのファッションブランドだ。(提供)
Sadeemは、サウジアラビア人デザイナーのサディーム・アルシェハイルさんが率いるプレタクチュールのファッションブランドだ。(提供)
シャールジャを拠点にするリーマ・アル=バナさんも、FFWDで持続可能なコレクションを披露した。(提供)
シャールジャを拠点にするリーマ・アル=バナさんも、FFWDで持続可能なコレクションを披露した。(提供)
23 Nov 2019 03:11:12 GMT9
  • ファッション業界は環境問題の大きな原因となっている。しかしいくつかのブランドはやっと環境問題の解決に注力し始めた
  • ファッション業界は世界で2番目に環境汚染の原因となっている業界である

スジャータ・アッソムル、ドバイ

ファッションでは新たなバズワードが誕生した。色やシルエットではない。そうではなく、ファッション製品の製造と消費の抜本的な変革なのだ。ファッション業界は、水業界、エネルギー業界、及び化学業界と並んで、世界で2番目に環境汚染の原因となっている業界である。まさに、地球環境への脅威と見ることすらできるのである。ゴミとして埋め立てられる衣服の量、またファッション業界からの温室効果ガス排出量などの数字は今や、過去最高水準に達して年々増加している。

しかし良いニュースもある。ファッション業界はやっと、責任ある対応を取り始めているのだ。大手ブランドは今、ファッションを持続可能にするための方法を模索している。ヨーロッパの高級ブランドの中には、15年前からこの問題に取り組んでいるものもわずかにあるが、Zaraのようなファストファッションが持続可能性に真剣に取り組み始めたのは1年ほど前のことである。それは、中東のファッションブランドについても言えることだ。

今月開催の中東の大規模なファッションイベントの1つであるFashion Forward Dubai(FFWD)では、初めて持続可能性が大きなテーマとなった。参加した21ブランドのうち、サウジアラビアのSadeem、Roni Helou、Reemami、Farah Wali、及びHass Idrissの5つは持続可能性をテーマとしたコレクションを披露し、また持続可能性はファッションの未来に関するトークイベントでもテーマとなった。

Fashion Forward DubaiのCEOで共同創立者のボング・ゲレロさんは、中東のファッションは様々な意味で元来持続可能性と親和性が高いものだと考えている。「高品質で時代を超越したデザインは、持続可能なファッションの重要な要素です。またそれと同じくらい、オーダーメードやビンテージファッションも重要です」とゲレロさんは言う。「中東のファッションは、これらの特質を備えています」

持続可能なファッションというのは幅広い意味を持つ用語だ。単に環境に優しい生地を使用することだけではなく、ファッションの全ての側面に及ぶ概念なのだ。Sadeemの創業者でデザイナーのアルジャワラー・サディーム・アブドゥルアジズ・アルシェハイルさんは、過去3年間持続可能なコレクションをデザインし続けてきた。サディームさんは『Arab News』に対し、「デザインの際には、揺りかごを次の揺りかごに、ということを念頭に置いています」と語る。揺りかごを次の揺りかごに、というのは、持続可能性についての議論でよく使われる表現で、製品を何度も「生まれ」変わらせるべきとのことを意味する(長寿命な製品でも結局は捨てられることを意味する、揺りかごから墓場まで、の対概念だ)。サディームさんは、エコフレンドリーな工場で作られた生地のみを使い、また大量生産も決して行わない。少しも無駄になるものがないようにとの配慮だ。「私は季節ごとに新しいものを作ることはしません」とサディームさんは言う。「女性が何年も着たくなるような服を作っています」

サディームさんはFFWDで、「Awaab」(扉)というコレクションを発表した。サディームさんによると、その着想の原点は祖国とのことだ。「(サウジアラビアは)過去と断絶することなく前進している国です」とサディームさんは言う。

サディームさんのデザインにはそれが反映されている。スタイルはミニマリスト的だが、サディームさんは刺繍やアップリケなどを細かいアクセントとして用いているのだ。サドゥの伝統的な幾何学的模様も繰り返し用いられている。「三角形はこの地域のデザインの歴史で絶対に欠かせない存在となっています」とサディームさんは言う。

これらの服は、現代の女性が取締役会の場からディナーパーティーまで、どこでも着用できるものとして作られている。コレクションにはマキシ丈のドレスやラウンジスタイルのトップスとズボンなどがあり、色も赤、白、黒など様々だ。どこにでも着ていけるようになっているのはそのためだ。

「この地域の消費者を見くびってはいけません。この地域の女性は持続可能なファッションが(必要だと)わかり始めていて、持続可能なファッションはこの地域のファッションで大きな地位を占めることになるでしょう」とサウジアラビアを拠点にするデザイナーのサディームさんは言う。

シャールジャを拠点に活動するリーマ・アル=バナさんも、FFWDで持続可能なコレクションを披露し、現在は自身のブランドReemamiを100%持続可能なものにしようと取り組んでいる。「持続可能なファッションは中東のトレンドになっていて、中東の大規模店舗の買い付け人はどのように服を製造しているのか聞いてきます」とアル=バナさんは言う。「私たちは最善を尽くしていますが、中東はまだ持続可能性という考え方に適応しようとしている段階です」

アル=バナさんが使う生地の多くはリサイクルされたもので、裁断するときにも生地全体を無駄なく使えるように模様にハサミを入れていると言う。「そしてそれでも残ってしまった生地は、髪のアクセサリーやその他何か使えるものを作るのに使います」とアル=バナさんは付け足した。

アル=バナさんのデザインは独特だ。アル=バナさんは実験的な色、模様、そして裁断方法を取り入れることが好きで、派手で大胆なファッションが好みの全ての体型の女性向けにデザインしている(FFWDでは、サウジアラビア出身で全ての体型に自信を持つ運動を行なっているガリアー・アミンさんがReemamiのモデルとして出演した)。

レバノン人のデザイナーであるロニ・ヘルーさんは、余剰在庫の生地から作った服のコレクションを披露し、またそのコレクションの広告の撮影はゴミの埋立場で行なった。ファッション業界から出るゴミの量を強調するためだ。コレクションに使われた生地の一部は、複数の目的を兼ねたものとなっている。例えばシャツにもできるスカートなどだ。ヘルーさんはアウターが得意で、ヘルーさんのコレクションのコートは、まさに一生着ていたくなるものだ。

「ポジティブな影響を残せるファッションを作ろうと思ってやっています」と新鋭デザイナーのヘルーさんは言う。

持続可能なファッションに関しては中東はまだ世界を追いかけている立場かもしれないが、ファッションに持続可能性を求める意識が広がっていることは確かだ。中東では、スタイルを追求する女性であれば、良心のこもった服を手に取るべきだという考え方が広まっているのだ。ゲレロさんが言う通り、「ファッションにおける持続可能性はこれからもっと注目を集めるはずです。そうなれば好循環を生み出します。デザイナーが持続可能性をもっと仕事に取り入れると、消費者から好反応が得られ、ファッション業界の持続可能性についてメディアも取り上げることになるでしょう」

「持続可能性は、『あるといいね』というものから、デザイナーと消費者の間で共有された価値観の哲学になりつつあるように思われます」とゲレロさんは続けた。

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