

東京:アメリカでの車の長旅からモダンダンス、ローマ法王に至るまで、ドイツ人監督ヴィム・ヴェンダース氏が撮る映画は多彩としか言いようがないが、彼が今回インスピレーションを受けたのは東京の公衆トイレだ。
このヨーロッパ映画界の巨匠は、一流の建築家が街の薄汚れた17か所のトイレを芸術作品に変えるという都市再生プロジェクトに参加する映画を制作中だ。
同プロジェクトのトイレには、ドアを施錠すると不透明になる、カラフルな透明の個室を備えたトイレや、オリンピックスタジアムのデザイナー、隈研吾氏による木製パネルを備えたトイレもある。
東京・渋谷にある、人目を引くその新しいトイレはすべて無料で、車椅子でも利用でき、清掃作業員のチームによってピカピカに保たれている。
「この発想には、とても日本らしいものがある。全体の状況にです。これはユートピア的な発想だと思ってしまう」とヴェンダースは11日に行われた記者会見で語った。
「なぜなら、トイレという場所では誰もが同じだからです。貧富の差もなく、老いも若きもなく、誰もが人類のうちの一人なのです」
76歳のヴェンダース氏は、『ベルリン・天使の詩』、『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』、『パリ、テキサス』などのミニシアター系映画でカルト的な人気を博している。
監督は、「THE TOKYO TOILET」と呼ばれる改修プロジェクトの主催者からオファーを受け、4つの短い物語を中心にした、俳優の役所広司が清掃員として出演するこの映画を作るきっかけを得たと語った。
「私は建築が大好きです。生まれ変わったら必ず建築家になりたいと思っています」とヴェンダース氏。
特に、著名な建築家である安藤忠雄氏(80)と一緒に仕事ができることを嬉しく思っていると語った。安藤氏が設計した光り輝く円形のトイレには、手を洗うときに新鮮な空気が入るよう薄い板が取り付けられている。
「先日、彼が設計したトイレを拝見し、彼がいかにして光を演出するかを見たとき、本当に嬉しく思いました。(中略)『ここは大変な価値のある場所だ』と思いました」
ヴェンダース氏にとって日本は初めてではない。1985年の映画『東京画』は、映画界の巨匠・小津安二郎氏が描く東京へのオマージュであり、1980年代後半にはファッションデザイナー山本耀司氏についてのドキュメンタリーを制作した。
これまでに、東京の17か所の改修トイレのうち12か所が完成し利用されており、主に公園や駅の横に設置されている
安藤氏は記者団に対し、多くの国では 「公衆トイレは美しいものとは思われていない 」と語った。
「だから、こういった素晴らしいトイレがあれば、日本の美的感覚を世界中の人に伝えられるのではと思ったのです」
AFP