ニューヨーク:村上隆氏はポップアートとアジアのファインアートを融合させたことで知られるが、ニューヨークで開かれた直近の個展ではメタバースに進出した。
今週、マンハッタンのガゴシアンギャラリーで始まった「An Arrow through History」展で、村上氏は従来のファインアートから日本のポップアート、そして話題のNFTに橋をかけた。NFTとは作品がオリジナルであることを証明するデジタルトークンだ。
村上氏はAFPの取材に応じ、後進の世代がスクリーンばかり見て「現代美術史を理解していない」ことを懸念していると語った。
「若者が体験できることはごくわずかですが、拡張現実をプラスすれば、その視野がさらに開けて現代美術シーンにも足を踏み入れるかもしれません」と60歳になる日本人アーティストの村上氏は言った。
最近では、アスリート、アーティスト、セレブリティ、テック業界のスターらが、暗号通貨と同じくブロックチェーンテクノロジーを使ったNFTを広めて回っている。
村上氏はガゴシアンが出したステートメントの中で「創作しているときは、デジタルとアナログの区別はつけていません」と述べている。
「私は常に現代美術の文脈の中で創作をしています。その文脈は私が認知革命を引き起こす出来事にかかわれるかどうかという問いに尽きます」
村上氏はある作品で、元王朝(1279-1368)にさかのぼる中国の磁器の花瓶に触発され、分厚いキャンバスと木の構造物に青と白の魚の模様を描いた。
スナップチャットと拡張現実フィルターを使えば、訪問者は携帯電話を介して展示室に没入し、現実に形ある芸術作品上で泳ぐ魚のデジタルイメージの中に立っているような感覚を味わえる。
「日本の文化はもともとユーラシア大陸から来たものです。私のコンセプトはそれを超えてメタバースへと進み、芸術史を一本の矢で撃ち抜くことでした」と村上氏はステートメントで述べた。
メタバースとは、拡張現実メガネ、または仮想現実メガネでアクセスできる没入型仮想現実であり、近年一躍注目を集めている概念だ。
村上氏は、コロナウイルスのパンデミックで家に閉じ込められたとき、「自宅で仮想現実を見ていました。それは画期的な瞬間でした」とAFPに語った。
「外出できず、ストレスが大きくなるばかりの日々でした」と彼は言った。だが、子どもたちはVRを楽しむことができたのだ。
「そのときは考え方を変えざるを得ませんでした。私たちの子どもたちの世代に合わせていくにはどうしたらいいのか。この個展はその最初の答えです」
村上氏はさらにロサンゼルスのザ・ブロード現代美術館でも「村上隆:虹のしっぽを踏む」と題して特別展覧会を行う予定だ。没入型環境の作品も公開されるこの展覧会は5月21日から9月25日まで開催される。
AFP