
ナダ・アル・トゥルキ
リヤド:9日、デザートサウンド・エンターテイメント(Desert Sound Entertainment)はリヤドで、レバノン系英国人のレコードレーベル創設者・ラジオパーソナリティ・DJ・プロデューサーである多才なスター、ニコール・ムダベル(Nicole Moudaber)をメインゲストに迎え、ユニークな音楽イベント「テクノ・セラピー」を再び開催した。
ディルイーヤ・ビエンナーレ財団ホールで真夜中過ぎから開催されたこのイベントには、エレクトロニック・ミュージック業界の大物、ムダベルを待ち望んでいた大勢のサウジアラビア人の観客たちが足を運んだ。
ムダベルはディープハウスダンスとエレクトロニック・ミュージックで観客を魅了し、観客はアンコールを求める声をあげ続けた。彼女のパフォーマンスに先立ち、サウジアラビアのDJであるB-ハイドラ(B-Hydra)、サイキー(Psykey)、ANT、ディッシュダッシュ(DishDash)、モーゼズ(Moses)がドン・エドワルドとバック・トゥ・バックでプレイした。
「私たちは、生きた伝説、ニコール・ムダベルと一緒に、リヤドで最高のテクノDJたちと現実にプレイしているのです。このようなラインナップに加われたことを、本当に名誉に感じています」とDJ名B-Hydraのムハンマド・バハイドラ(Mohammed Bahaidrah)さんはアラブニュースに語っている。
テクノDJでありプロデューサーでもあるはバハイドラさんは、デザートサウンド・エンターテイメントのイベントに出演するのは今回で2度目で、この夜は最初に登場して同じDJのサイキーと共にバック・トゥ・バックでプレイした。
バハイドラさんは、オープニングのパフォーマンスの時点での入場者の多さに、うれしさと驚きを感じたという。
「人々は何か違うもの、ユニークなものが好きなのです。テクノにはさまざまなサウンドがあります。私自身は、テクノは自分を表現する手段だと考えていますし、それが人々に愛される理由だとも思っています。テクノは何か違うものを与えられるのです」とバハイドラさんは語った。
サウジアラビアでエレクトロニック・ミュージックシーンがさまざまなプラットフォームやイベントを通じて紹介されるようになったのはごく最近のことだが、この音楽ジャンルに対する情熱にはもっと長い歴史がある。
バハイドラさんは、自身のポッドキャスト「ザ・クォンタム・シンギュラリティー」(The Quantum Singularity、量子特異点)を通じて、サウジアラビア国内の才能あるDJにスポットライトを当て続けている。
「テクノでも他のジャンルでも、すべてのDJは異なる種類のサウンドを持っています」とバハイドラさんは言う。「ですから、このポッドキャストのポイントは、ここサウジアラビアで生まれつつあるさまざまな才能を紹介することなんです。世界の人々にぜひ知ってもらいたいのです」
バハイドラさんと同じDJのサイキー(Psykey、通称フッサム)さんは、2006年に本格的に音楽を始め、サイケデリック・トランスミュージックに傾倒し、その後テクノの様々なサブジャンルを経験してきた。
サイキーさんは自分のサウンドを調整し、サウジアラビアの人々の好みに合う「サイ・チル」という独自のジャンルを作り出している。「ここリヤドの観客はサイ・トランスを好まないことが分かったのです。彼らはテクノやハウスやグルーヴ、一部のダークミュージックなどのエレクトロニック・ミュージックに夢中ですが、サイ・トランスはダークすぎると感じるようです。ですから、テクノとサイケデリックなサウンドをミックスした新しいサウンドを作りました」と彼はアラブニュースに話している。
今回のイベント「テクノ・セラピー」は、ライブ落書きアート、フェスティバル・メイクアップステーション、音楽広報プラットフォームなど、さまざまな側面からエンターテインメントを提供している。同イベントの目的は、サウジアラビア国民に国内外の才能を紹介し、文化交流の機会を創出することされている。
「この国には隠れた才能がたくさんありますが、今私たちは、そうした才能のために扉が開かれ、広く一般の人々に紹介されていく瞬間を目の当たりにしているのです」とサイキーさんは語る。
「テクノシーンの未来のために、きっとこれからもっと多くのことが起きてくることでしょう」
5月にもイベント「マーズ・エスケープ」(Mars Escape)を開催している主催のデザートサウンド・エンターテイメントのイニシアティブは、一生に二度とはない体験を提供することにより、芸術、文化、音楽の力でコミュニティを創造していくことを目指している。
同社のオーナー、アイマン・アル・ズライヤー氏は、サウジアラビアのエレクトロニック・ミュージックに光を当てることに力を注いでおり、アートのハブであるディルイーヤ・ビエンナーレとも協力関係を築いている。アル・ズライヤー氏は、自社を取り巻くコミュニティが、リピーターを増やす力になっていると言う。
「将来がほんとうに楽しみで、ここサウジアラビアで最大クラスのエンターテイメント会社になれればと思っています」とアル・ズライヤー氏はアラブニュースに語っている。
海外でテクノシーンを体験したアル・ズライヤー氏は、いつかそれを母国であるサウジアラビアにも持ち込みたいと望んでいる。エンターテイメントの世界で生きていこうと決意して退職するまでは、電気技師をしていたという。
「この旅の中では、浮き沈みがあり、時には傷つくこともあります。でも、人と人との出会いや体験から学ぶことで、もっと頑張ろうと思えるのです。そして、それを積み重ねて、前に進んでいくのです」
「いつか、ここサウジアラビアで、みんなの記憶に残るようなことができるといいなと思っています」とアル・ズライヤー氏は語った。