


ダイアナ・ファラー
岩波新書より発売されたばかりの『レバノンから来た能楽師の妻』の著者、マドレーヌ・ジャリル・梅若氏は、レバノンから逃れ来日した後の自身の「人は己の困難に打ち勝つことができ、己を見つけることができる」ことを読者に示したいと考え自伝を書いたと話す。
同氏によると、同書は1976年にレバノン内戦1年あと日本への亡命を余儀なくされた後の自身の人生の変化を明かしている。
「日本文化の豊かさに感銘を受けながらも、慣れるまでには苦労があったことを読者に伝えたかった。レバノンで馴染んでいた文化とはあまりにも異なる文化だ」と、同氏はアラブニュースに話した。
梅若氏は約600年の歴史のある家系、
梅若猶彦氏との結婚がきっかけで
その伝統の世界に入っていった。
能楽は日本伝統の舞劇で、コンテンポラリーダンスのような動きと歌を通して物語を演じる。
能の話のあらすじは大抵の場合、歴史や文学が題材である。
「この600年の伝統を持つ能楽は保守的な世界に適応するだけでなく、国内の外国人コミュニティーと海外に能を広めなくてはならなかった」と著者は話す。
また、梅若氏は、夫と子供たちと共にレバノンで新作能を3つをプロデュースしたことにも言及した。
「複数の文化ルーツをもつ子供2人を育てる難しさと、子供たちがどのようにいじめを乗り越えたかを伝えたかった」と同氏は述べる。
娘の梅若ソラヤ氏は、受賞歴をもつレバノンのドキュメンタリー『明日になれば』(‘Tomorrow We Will See’ )の監督である。
同作品は、異なる背景をもつアーティスト10人に焦点をあてており、「何十年にも及ぶ社会的・政治的な不安定にも関わらず、宗教的分裂を超え、思想の自由を広めるための手段として芸術を用いている」と著者は話した。
同氏は「このドキュメンタリーを観た後、多くの日本人がレバノン訪問に関心を示した」と付け加えた。
梅若氏は自身の著書を通し、「緊密な」社会で自分がどのように居場所を見つけたかを示し、困難を乗り越える勇気を人々に与えたいと話した。
著者はいずれこの本が、英語とアラビア語で出版されることを希望しています。
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