


ナダ・アルトゥルキ
リヤド:リヤドの地元の若者の間で幽霊が出ると考えられているイルカ病院の敷地内の壁が、国内外のグラフィティ・アーティストのキャンバスに生まれ変わった。
かつて抑圧されていたアートが、今ではサウジアラビアの視覚芸術委員会が毎年開催しているストリートアートの祭典「SHIFT22」で賞賛されている。
この祭典では、30名以上のサウジアラビアや海外のグラフィティ・アーティストからの委託作品や既存作品が展示され、壁画、サウンド・インスタレーションやビデオ・インスタレーション、廃病院で廃棄された資材を再利用して作り上げられた型破りな彫刻などが中心となっている。
視覚芸術委員会のCEOであるディナ・アミン氏は、次のように述べた。「SHIFT22は、創造的な交流と対話のための場を提供することで、国内外の視覚芸術家を称え、奨励するという委員会の取り組みの一部です。この祭典は、地元のアートシーンが発展した結果、多くのエキサイティングな視覚芸術の機会を提供することとなった一例です」
サウジアラビアのアーティストDeyaa Rambo氏の作品は、国家の変容と現代の現実にインスパイアされている。『Harwala』は、アラビア語でジョギングを意味し、意思を持って前進するのみという文化を示している。
「文化として、未来に向かって歩んでいくために、私たちは過去と現在を携えていきます… このアイデアは、文化が発展に向かって前進していることを物語っていますが、理解できないようなスピードではなく、計画的なスピードです」とRambo氏はアラブニュースに語った。
芸術一家に生まれた彼は、自分の情熱は育った環境のおかげだと考えている。2000年代初頭、グラフィティが正統な芸術としてこの地域で浮上し始めた頃、同氏はアンダーグラウンド・シーンに出会った。
「他のグラフィティ・アーティストと出会って刺激を受け、自分もアーティストとして成長しなければと実感しました」とRambo氏は語った。
同じ志を持つ者同士の小さなコミュニティを作り、スプレー缶を輸入し、小さなプロジェクトに参加し、時には路上で器物損壊を行った後、彼らはサウジアラビア初のグラフィティの店をオープンさせた。DHADである。
地元では、DHADファミリーが学校、研究所、展示会、ギャラリー、メルセデス社やHPなどの企業とコラボレーションし、刺激的でユニークなインテリアやエクステリアをデザインしている。
世界的には、チュニジア、モロッコ、マレーシア、ドイツ、フランスなど、湾岸諸国を中心に展示会やイベントでこのDHADというコミュニティの作品が評価され、展示された。
「DHADは、基本的にグラフィティのライフスタイルに関する全てのもので、アーティストに道具やスプレー缶を提供するものですが、サウジアラビアで最初にコミュニティが作られたのはこの頃です」とRambo氏は語った。
幻想的な要素からインスピレーションを得た同氏の作品は、現代のサウジアラビアを、伝統的なトーブとシュマーグを身にまとい、前へ早足で歩く無名の人物に見立てている。
Rambo氏によれば、芸術スタイルの認知を広める責任は、最終的には地元のアーティストにあり、専用のスペースだけでなく、伝統的なグラフィティのスタイルに忠実であることが重要だという。つまり、公の場である。
「グラフィティは『ネガティブなメッセージを送るもの』といわれ世界的に批判されてきたため、それこそが私たちの使命なのです。グラフィティ・アートは、展覧会や美術館で鑑賞するものではありません。ストリートで、みんなのためにあるのです」
サウジアラビアのアーティストZeinab Al-Mahoozi氏は、2011年に自身の好奇心から、ダイナミックで魅惑的な作品を作るためにステンシルのテクニックを使って活動を開始した。同氏は、もしこの手法で初めての試みに成功したら、展覧会全体を自分のストリートアート作品に捧げると自分に誓った。
同氏の壁画は、自身が宇宙の片隅に鳥を放つ姿を描いた、風変わりな自画像である。
「グラフィティ・アートは違法な芸術スタイルとして知られていますが、文化省やメディア省など、政府部門からグラフィティ・アーティストとして支援を受けることは、私たちにとって本当に必要なことです。私たちは、このことをとても嬉しく思っていますし、とてもラッキーだと思っています」と同氏は語った。
SHIFT22は地元の人材のプラットフォームに特化されているが、祭典に貢献するため、世界中から様々なアーティストを迎え入れるよう文化交流の機会ももたらしている。
ヨーロッパを拠点とするオーストラリア人アーティスト、ジェームズ・レカ氏は、多くのグラフィティ・アーティスト同様に、スケートボードやヒップホップ・カルチャーを通じてアンダーグラウンド・シーンと出会った。同氏の20年の実績は、伝統的な字形のグラフィティから始まり、後に文字や図形へと発展していった。
「サウジアラビアに招かれ、自分のメッセージを残せるなんて光栄です…何か特別なものであるとか、芸術であると認めてもらえるのは嬉しいですね」と同氏はアラブニュースに語った。
レカ氏の作品は、同氏の特徴的なスタイルを踏襲し、抽象的でありながら、結束というメッセージを伝えている。壁画をよく見ると、色とりどりの手が互いに手を取り合っており、グラフィティ文化の中心には愛とコミュニティがあるという意図が込められている。
「多くの地元のアーティストと一緒に絵を描き、会うことができ、芸術、創造性、生活全般について一般的な知識を共有できることを光栄に思っています。私たちは皆、この地球の子供なのですから。世界の反対側から来たのに、私たちには共通点がたくさんあるなんて、世界は時々狭いですね」とレカ氏は語った。
この祭典は、廃病院で開催され、地下や人けのない場所に図案を描く由緒あるグラフィティの流儀を忠実に再現している。
この屋外展示は、ニューヨークを拠点とするアート・エージェンシー、クリエイティブ・フィロソフィー社のキュレーションによるもので、病院の建築様式に合わせた幾何学模様をテーマにしている。
サウジアラビアのRexChouk氏やトルコ系アメリカ人のレフィーク・アナドール氏など、有名アーティストや新進アーティストによる作品の展示に加え、ワークショップやセミナー、およびストリートアートの様々な要素に焦点を当てたアクティビティが開催される予定だ。
この祭典は、ライブミュージック、ストリートウェアショップ、ストリートフード、ブレイクダンス、スケートボードと共に、10月30日まで開催される予定だ。