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レバノンのグラフィティ(落書き)アーティスト、日本のアニメのキャラクターを革命のシンボルに

「人々の戦士」という文言が付いたグレンダイザーのストリートアート・グラフィティ、レバノンのベイルートのアシェクマン(Ashekman)による作品。(提供)
「人々の戦士」という文言が付いたグレンダイザーのストリートアート・グラフィティ、レバノンのベイルートのアシェクマン(Ashekman)による作品。(提供)
片目を覆ったグレンダイザー、デジタル・アート・ポスター、アシェクマン(Ashekman)作。(提供)
片目を覆ったグレンダイザー、デジタル・アート・ポスター、アシェクマン(Ashekman)作。(提供)
ふたごのアシェクマン(Ashekman)、オマール、モハマド・カバニ。(インスタグラム/アシェクマン)
ふたごのアシェクマン(Ashekman)、オマール、モハマド・カバニ。(インスタグラム/アシェクマン)
ふたごのアシェクマン、壁にグレンダイザーをスプレーペイント、レバノンにて、オマール、モハマド・カバニ。(インスタグラム/アシェクマン)
ふたごのアシェクマン、壁にグレンダイザーをスプレーペイント、レバノンにて、オマール、モハマド・カバニ。(インスタグラム/アシェクマン)
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02 Feb 2020 12:02:44 GMT9
02 Feb 2020 12:02:44 GMT9

Carla Chahrour, Dubai

多数のレバノン人が、警察や兵士が抗議集団に向けて発射したゴム弾やガス弾によって部分的に目が見えない状態になっている。損傷は宗派争いで分断された国で革命の骨組みとなっている一体化した地盤を壊すおそれがある。

赤十字社とレバノン市民防衛総局のチームが提供した数字をAFPがまとめた死傷者数によれば、今月ベイルート中心部で起こった機動隊と抗議集団の衝突で負傷した人は少なくとも540人で、多くの人がゴム弾や催涙ガスに過度にさらされ重傷を負い、数人は視力を失ったり、失明したりした。

失明、または視力を失ったデモ参加者と結束したレバノンの活動家らは、ソーシャルメディアでキャンペーンを開始し、同時に、抗議運動を鎮圧するために治安部隊が不相応な力を行使したことを浮き彫りにした。

活動家らは、アラビア語のハッシュタグ「私たちの革命はあなたたちの目だ」の下に、片目を覆った自分たちの写真を投稿した。

このキャンペーンを支持するレバノンのストリート・アートの二人組、「アシェクマン(Ashekman)」の名で知られる一卵性双生児のオマール氏とモハマド・カバニ氏はインスタグラムやツイッターにデジタルアートのポスターを投稿した。ポスターには1976年の日本のスーパー・ロボットのアニメテレビシリーズと連載漫画の象徴的作品、漫画家の永井豪原作の「UFOロボ グレンダイザー」--アラブ世界では「グレンダイザー」で知られている—が描かれ、片手で片目を覆い、背景には一本のヒマラヤスギがあり、ハッシュタグ「私たちの革命はあなたの目だ」が添えられている。

https://www.instagram.com/p/B7oG2wUHxTa/?utm_source=ig_web_copy_link

アーティストはポスターのグレンダイザーの右目の上にシャダー(shaddah)と呼ばれるアラビア語の発音区別符号を付けた。「強度、あるいは強調の記号」と訳されるshaddahは、文法的には長子音を示すために使われる。

「私たちはshaddahを使いました。これは普通は文字を発音するとき、子音や母音にアクセントをつけるために使われます。これは私たちのサインの一つで、ある境遇とか考えを強調するために使います」とオマール・カバニ氏は述べた。

アシェクマン(Ashekman)は、漫画を取り巻く状況を徹底的に作り直して、彼ら自身のストーリー、現在の現実を反映させて、人気の日本の連載漫画の幻想的なキャラクターに再び声を上げさせようとした

「グレンダイザーはレバノンの活動家を代表するものとしては理想的です。なぜなら、昔懐かしいスーパーヒーローとして、このロボットは世界を悪から救ってくれるというのが私たちの集合的記憶の一部になっているからです。機動隊が発射したゴム弾や催涙ガスによって視力を失ったり失明したりしたデモ参加者に関するキャンペーンがメディアに流れる中で、彼らとの連帯感を示し、積極的な、人々を一体化させるシンボルが必要な様々なコミュニティのレバノン人に手をさしのべるために、日本のスーパーヒーローを使おうと思いました」と、オマール・カバニ氏は説明した。

グレンダイザーは中東では、幅広い世代にわたり、最も人気のあるアニメ・キャラクターの一つだ。これはアラブニュースが主導したYouGov調査で確認されており、あらゆる年齢層の回答者の56%が、長期間続いた日本の漫画シリーズ、「UFOロボ グレンダイザー」は常にお気に入りのアニメだと評価し、この地域で日本のコミックブックのジャンルがもてはやされていることが裏付けられた。

アシェクマン(Ashekman)は2001年に活動を開始し、その作品はグレンダイザーをモチーフにしているところが特徴であり、作品のいたるところで、いろいろ異なる状況下で繰り返し使用されている。その着想は15年にわたるレバノン内戦の最中やその後に得られ、その時、彼らは戦争が人々や国にもたらした破壊的損害を目撃した。そのため必然的に、グレンダイザーを描くことには、混迷の時代に平安をもたらすために、この日本のスーパーヒーローに安らぎを求めた子供時代を象徴的に描くという意味があった。

これは、「人々の戦士」という文言が付いたグレンダイザーの絵に特に表れており、再三現れる救済者という考え、誰かに悪の力を完全に破壊してほしいという願いを暗示的に集約している。

アシェクマン(Ashekman)は、アラビア語の書道(カリグラフィー)と都会の現代的なグラフィティ(落書きアート)の際立った組み合わせを通して創造的な才能を披露しており、そのスタイルをアートワークの中で「カリグラフィティ」と呼び、政治的、社会的概念に取り組んでいることを伝えている。

「結局、すべては象徴主義であり、それが変化を起こすと私は知っています。もし、私たちの仕事が誰かを笑顔にすることで1%の変化を起こすなら、もっと考えるか、前向きなものに向かって行動するべきで、そうすれば、任務を完了したことになります」と、オマール・カバニ氏は述べた。

このジャンルにアラブ世界が夢中になっているのは、アシェクマン(Ashekman)が日本のスーパーヒーローを使って、混迷の時代に救済者を望んでいたこと、社会政治的アーティストとして、革命に携わる人々との連帯感を象徴的に表現していることを通して理解できる。

 

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