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サウジアラビア、温室効果ガス排出権制度発表

2023年中東・北アフリカ気候週間に出席した、アブドルアジーズ・ビン・サルマン王子兼エネルギー大臣。Twitter:@MoEnergy_Saudi
2023年中東・北アフリカ気候週間に出席した、アブドルアジーズ・ビン・サルマン王子兼エネルギー大臣。Twitter:@MoEnergy_Saudi
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10 Oct 2023 10:10:30 GMT9
10 Oct 2023 10:10:30 GMT9

ラワン・ラドワン

リヤド:サウジアラビアは9日、2060年までに温室効果ガス排出量の実質ゼロを達成する取り組みの一環として、企業が温室効果ガス排出量を相殺するクレジット(排出権)を購入できる制度を発表した。

サウジアラビアのクリーン開発メカニズム(Clean Development Mechanism、CDM)担当部局(Designated National Authority、DNA)は、リヤドで開催された2023年中東・北アフリカ(MENA)気候週間でこの取り組みを発表した。

「温室効果ガス排出権取引・相殺制度(Greenhouse Gas Crediting and Offsetting Mechanism、GCOM)」は2024年初旬に開始する予定で、ウェブサイトによると、「各種プロジェクトや活動のために、あらゆる分野への資金投入の支援を通じて、気候変動に関する目標達成を目指す国内の各団体間の協力強化を目的としている」

この制度の概要は、2022年11月、エジプトのシャルム・エル・シェイクでのCOP27開催中に開催された「サウジ・グリーン・イニシアティブ(SGI)」において、サウジのエネルギー大臣アブドルアジーズ・ビン・サルマン王子によって初めて発表された。

企業は、炭素クレジット市場の制度において、企業が許されている温室効果ガス排出量を表す、一定数の炭素クレジットが与えられる。もし企業が割り当てられたクレジットよりも多くの排出量を出した場合、割り当てられたクレジットよりも排出量が少ない他の企業からクレジットを購入する必要がある。

サウジアラビアでは「国別排出削減目標(Nationally Determined Contribution)」が2倍になった、とDNAの持続可能性の専門家ノラ・アル・スデイリー氏は語った。

国別排出削減目標とは、温室効果ガス排出量を削減し、気候の影響に適応するための気候行動計画である。パリ協定の各締約国は国別排出削減目標を策定し、5年ごとに更新することが義務付けられている。

「我が国は現在、2030年まで年間2億7800万トンの(排出)削減を目標にしています。また、2060年までにネットゼロ(を達成するという目標)など、気候に関する目標が多くあります。GCOMは我が国サウジのニーズに合わせて策定および設計されました。民間部門がプロジェクトを事業化し、排出量を削減できるようにします」と、アル・スデイリー氏はアラブニュースに語った。

同氏はまた、民間部門に対しても排出量削減の取り組みを奨励することになると述べた。

DNAの上級環境エンジニア、アシール・アル・カブシ氏は、新制度の導入により、サウジ国内の炭素クレジット市場を通じて、企業や個人が炭素削減プロジェクトを支援することで排出量を相殺できるようになるだろうと述べた。また、企業にクリーンエネルギー技術へ投資するよう奨励することにもなると述べた。

「GCOMには、事業化や計画からクレジット発行に至るまでに8つのステップがあります」と、同氏はアラブニュースに語った。

アル・カブシ氏は、排出量削減の持続可能な取り組みを確実にするためには新たな技術に投資する必要があると強調した。「(企業が)排出量を削減できる技術を開発したりプロジェクトを立ち上げたりしたら、GCOMの資格が確認でき次第、GCOMに登録し、クレジットを発行できるようになります。このクレジットや資格証明はプロジェクトの収益化に役立ちます。また、自社の排出量を相殺するためにも利用できます」と付け加えた。

ハーバード大学環境保健学部のディレクターで持続可能な技術・健康プログラムの研究員であるラモン・サンチェス氏によると、持続可能性を確保するための最初のステップは、地域コミュニティレベルで脆弱性が何であるかを突き止め、問題を特定することだという。

同氏は、「変化し続ける気候に耐えうるビジネスモデルの成功の鍵は…簡単に言えば、企業として儲かるか、経費節約になっているかにかかっているのです。そして同時にそれが、地球を救うことになるのです」と語った。

同氏は、企業が周囲の環境や地球規模の問題についての知識を持ち、あらゆる変化に対応できるように従業員のスキルを開発する必要があると述べた。

「持続可能性のための取り組みは、途切れなくつながっているべきです。何か持続可能性にとっていいことをしていると、気がつくようではいけないのです」と付け加えた。 

気候回復力のためのプロジェクトは、二酸化炭素排出量を削減するために不可欠である。というのも、このプロジェクトは、将来的にエネルギーを大量消費する適応手段が必要となるケースを減らすのに役立つからだ。さらに、カーボンファイナンスは国別排出削減目標の達成の鍵となる。パリ協定は第6条を通じて、このような市場メカニズムの活用が可能となり、炭素市場への関心も高まっている。

第6条は、気候変動緩和に関する国際協力の枠組みを提供することにより、排出量削減のコストを削減し、クリーン技術への投資を促進するのに役立つ。

「プロジェクトは、GCOMのような制度がなければ、投資や非常に高価な技術にインセンティブを与える、時にはそこまで高価ではないにせよ、同様に高価な自然ベースのソリューションへの投資にインセンティブを与える、実行可能なものには必ずしもならないでしょう」と、DNAの国際政策アドバイザー、マリア・アルジシ氏がアラブニュースに対して語った。

同氏は、「これはまさに、先程言及があったサウジ・グリーン・イニシアティブ(SGI)のような取り組みを支援することを意味します。国内レベルで取引される炭素クレジットからある種のインセンティブが必要となる場合、GCOMがいい働きをします。このインセンティブは、GCOMが定める要件やガイドラインに従えば、GCOMを活用できるようなものなのです。そして、GCOMはプロジェクトの実行可能性を高められるように収益を上げる方法を生み出し、国としてより多くのことを達成できるようにします。また、我が国はすでに非常に野心的ですが、さらに高い目標を設定することができます」とも述べた。

パリ協定第6条は、炭素クレジットが実際に検証可能な排出量削減によって生成されたものであることを保証する方法を提供しているという理由から、炭素市場にとっても重要である。炭素市場の健全性を維持するため、そして企業や消費者が購入した炭素クレジットが気候変動との闘いにおいて、実際に効果があると信頼できるようにするために重要である。

「このような炭素市場は、我が国、そして実際にはこの地域全体の人々にとって、新しい市場となります。GCOMはMENA地域全体において、この種の初の市場メカニズムだと思います」と、アルジシ氏は述べた。

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