
フランク・ケイン
ドバイ:サウジアラビアは水曜日、同国の産油量をさらに増強し、新記録レベルに引き上げる計画を発表した。この計画のもと、サウジ王国は世界最大の原油生産国に返り咲くとみられる。
サウジアラビアのエネルギー大臣であるアブドゥルアジズ・ビン・サルマン王子は、サウジアラムコに対し、その持続可能な最大生産能力(長期的に生産できる原油の限界)を1日当たり1,300万バレルに増やす準備をするよう指示した。
これにより、サウジ王国は米国を跳び越して原油生産国のトップに躍進し、ロシアを3位とすることが可能となる。アナリストは、新たな生産能力は既存の油田からの生産拡大と強化により達成されるという。
世界最大の石油会社であるアラムコは、先週末のウィーンにおけるOPEC+合意崩壊後、生産量を1,230万に増やす計画と世界中の顧客に対する価格の引き下げの意向についてすでに明らかにしている。
アラムコから同社株価が値付けされるタダウル証券取引所に宛てた声明では、2017年の国王政令に準拠し、「サウジアラムコは、エネルギー省から、持続可能な最大生産能力を1日当たり1,200万バレルから1,300万バレルに増強するよう指示を受けたことを発表します」と述べている。
[caption id="attachment_11212" align="aligncenter" width="800"]サウジアラビアが石油輸出量急増を準備しているもう1つの兆候として、国営海運会社Bahriがサウジ王国からの原油輸出用に少なくとも8隻のスーパータンカーの借船を検討中であることが報告された。
サウジアラビア当局の動きは、ウィーン後の「価格戦争」がさらにエスカレートしていることの表れといえる。そんななか、中東のもう一つの石油大国であるUAEも産油量を劇的に増やすと表明した。
アブダビ国営石油会社(ADNOC)は、顧客に対する大幅な価格の値引きに加え、来月から産油量を1日当たり300万バレルから400万バレルに引き上げ、1日当たりの合計を500万バレルまで引き上げる計画を加速させる予定であると表明した。
「市況に対応するとともに、お客様が将来を見通しやすくなるよう、3月と4月の先物価格を間もなく発表します」とADNOCのスルタン・アル・ジャベル最高経営責任者(CEO)が表明。さらに、新価格は同グループの旗艦商品であるマーバン原油に基づく価格となること、またこれは新設のICEフューチャーズ・アブダビで取引される予定であることを付け加えた。
ナイジェリアやイラクなど、その他の石油大国も産油量を引き上げると表明している。国際市場でのブレント原油価格は4%近く下落して36.25ドルとなった。
サウジアラムコの株価は5%近く下落して29.70ドルとなり、サウジ・タダウル全株指数(TASI)は3%近く下落した。
さらなる産出減産への参加を渋ったことにより価格戦争に火をつけることになったロシアでは、アレクサンドル・ノヴァク・エネルギー相が国内の石油大手を明日の会合に招集し、世界市場の混乱について討議することを決定した。
大臣は、サウジアラビアによる産油量の引き上げおよび価格引き下げの決定は「おそらく最良の選択肢ではない」が、OPECの大臣たちと電話連絡は続けており、今月後半のOPEC +技術委員会に参加する予定だと述べた。
サウジアラビアと強いつながりを持つ別のロシアのビジネスマンは、緊張緩和を試みた。
ロシア直接投資基金のキリル・ドミトリエフ最高経営責任者(CEO)は、両国は今後も投資パートナーシップを発展させていくだろう、と述べた。「このパートナーシップを解消させようとする試みがあるにもかかわらずだ」
ロシアとサウジアラビアの共同投資基金は「今後も有効」とCEOは記者たちに語った。
「エネルギー問題で多少の相違はあるが、ロシアはサウジアラビアとのパートナー関係を発展させており、この関係は今後も続いていくだろう」とドミトリエフ氏は述べた。
国内の石油産業が価格戦争に対して特に脆弱であると見なされている米国では、テキサス州やペンシルバニア州といった政治的に敏感な州のシェール企業に対し、連邦政府が援助を検討していることを政府が表明した。
トランプ大統領は、原油価格の下落を「消費者にとっては良いこと」と歓迎しているが、多額の債務を抱えるシェール企業への影響について懸念しているとみられる。
世界中の株式市場でコロナウイルス・パニックや原油価格戦争が引き金になりジェットコースター状態が2日間続いた後、ウォール街の主要株価指数であるS&P 500は約3%下落した。