


東京:世界でエネルギートランジションが進められる中、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の調査部門は昨年夏、サウジアラビアのエネルギー系シンクタンクであるカプサルクと合同ワークショップを実施した。
JOGMECエネルギー事業本部の豊田耕平氏はアラブニュース・ジャパンのインタビューに応じ、同機構が取り組んでいる主なプロジェクトの概要について語った。
豊田氏は、サウジアラビアと日本の間で最も重要な事業の一つはペトロ・ラービグ石油化学プロジェクトであると述べた。2005年から、サウジアラムコと住友化学が石油化学製品を共同で供給している。
またエンジニアリング企業などをはじめ、最近では観光・エンターテインメント企業などが巨大プロジェクトの多いサウジアラビアに進出しているという。
エネルギー分野では、日・サウジ共同で共同石油備蓄事業を行っている。豊田氏は「日本がサウジアラムコに対して民間の石油タンクを貸与し、有事の際には日本企業に対して優先的に供給する事業」であり、「JOGMECも実施主体の一つとして関与している」と説明した。
「この事業は、日本のエネルギー安全保障と、サウジアラムコのアジアでの原油販売の両方に資する。このほかJOGMECとしては技術研修を実施しており、これまでにサウジから計 8 人を招聘している」
日本にとってサウジは最大の原油輸入先であるが、エネルギートランジションをはじめ、様々なエネルギー分野で共に進展してきた。
「サウジは豊富な資源を国内に有しており、日本は逆に資源がほとんど存在しない。全く立場が異なる国ではあるが、化石燃料はサウジアラビアにとって、国内の資源を活用するという意味で重要であり、日本にとっては、エネルギーの安定供給という意味で化石燃料は欠かせない」
豊田氏は、日本とサウジは急進的に再生可能エネルギーにシフトしていくのではなく、現実的で実行可能な形でエネルギートランジションを進めていくという意味で、ビジョンを共有したパートナーになりうると指摘する。
日本企業の中でも、再生可能エネルギー事業に長く取り組んできた企業、水素アンモニアの利用などを進めてきた企業もあり、両国のエネルギートランジションが今後は具体的な事業として進展していくと期待されている。
「日本にとって中東は石油供給地域であり、重要視されてきた」と豊田氏は語る。「サウジ以外にもUAEやクウェート、天然ガスではカタールなど、アラブ地域全体が石油・天然ガスの供給地域として重要視されてきている」
「民間企業はエネルギー以外の分野でも、非産油国に対する投資を試みてきたが、いまだ投資規模は限定的である。メインとなるのは石油生産、石油輸出だが、そのほかでも関係拡大に向けて努力している」