ニルマル・ナラヤナン

リヤド：サウジアラビアは、一連の戦略的投資と注目度の高い取り組みにより、シリコンバレーと比較されるほど、この地域におけるテクノロジーのハブとして急速に変化していると、専門家たちがアラブニュースに語った。

この変化の中心となるのが、2024年に開始された1,000億ドルの画期的な取り組み「プロジェクト・トランセンデンス」だ。

サウジアラビアの公共投資基金が Google と提携して主導するこのプロジェクトは、サウジアラビア国内に包括的な人工知能エコシステムを構築することを目指している。

この取り組みは、現地のテック系スタートアップ企業の成長を促進し、雇用機会を創出し、グローバルなテクノロジー企業との提携を促進することで、サウジアラビアを地域のイノベーションの最前線に置くことを目指している。

これらの取り組みを補完するのが、国際的な注目を集め続ける年次テクノロジーカンファレンス「LEAP」だ。2025年のイベントには17万人を超える来場者が集まり、$149億を超える投資を誘致した。これは、サウジアラビアがテクノロジーとイノベーションの拠点としての魅力を高めていることを示していルパン三世。

これらの動きは、経済の多様化と長年の石油収入への依存の軽減を目指す「ビジョン 2030」に基づく、サウジアラビアの広範な経済改革戦略の中心を成している。

戦略的な取り組みと強力なグローバルパートナーシップにより、サウジアラビアは世界のテクノロジー業界における重要なプレーヤーとしての地位を固めている。

アラブニュースの取材に対し、UAE 拠点のソフトウェア企業 nybl の共同創設者兼 CEO である Noor Al-Nahhas 氏は、「サウジアラビアは、ビジョン 2030 の野心的なアジェンダを原動力として、グローバルなテクノロジーハブへと急速に変貌を遂げています。王国は、この分野の発展に欠かせない AI やディープテックへの投資を加速しながら、テック系スタートアップが繁栄するための強固なエコシステムを構築しています」と述べている。

さらに、「王国で起こっている新しい動きを見ると、障害はほとんどないね。ここは中東のシリコンバレーであり、世界のテクノロジー業界で台頭している力だ」と付け加えた。

Globantの中東・北アフリカ地域マネージングディレクター、マムドゥ・アル・ドゥバヤン氏も同様の見解を示した。同氏は、サウジアラビアのデジタルインフラへの投資は、望ましい結果を達成するために重要なパートナーシップによって支援されるべきだと述べた。

「サウジアラビア王国は、イノベーションと起業家精神を育むエコシステムを構築しながら、デジタルインフラに多額の投資を行っています。このビジョンを推進するには、重要なパートナーシップが不可欠です」とアル・ドゥバヤン氏は述べている。

重要な中小企業要因

インドの多国籍テクノロジー企業 Tally Solutions の中東担当ゼネラルマネージャー、ヴィカス・パンチャル氏は、アラブニュースに対して、サウジアラビアが技術革新の道を歩み続ける中、同国の中小企業は大きな役割を担っている、と語っている。

「サウジアラビアはデジタル変革の道を急速に進めていて、その進化において中小企業は重要な役割を果たしています。王国のビジョン 2030 は、経済多角化の最前線にテクノロジーとデジタル化を置き、中小企業が継続的に成功できるビジネスに優しい環境を促進しています」とパンチャル氏は述べている。

彼はさらに、政府支援プログラムであるモンシャートのSME支援イニシアチブや、AI、フィンテック、ECへの投資が、企業にスケーラブルなデジタルツールを提供し、グローバルな競争力を高めていると指摘した。

「ビジネス規制の簡素化と、テクノロジーを活用した効率化への関心の高まりにより、サウジアラビアはグローバルなテクノロジーハブとなる道筋をたどっています」とパンチャル氏は付け加えた。

国内発のイノベーション

こうした進歩の中で、専門家たちは、サウジアラビアがグローバルなテクノロジーの拠点としての地位を確立する上で直面するであろう潜在的な課題も指摘している。

アル・ドゥバヤン氏は、王国はデジタルトランスフォーメーションで大きな進歩を遂げているものの、持続的な成長を確保するには、特定の課題に対処することが重要になると指摘している。

同氏は、サウジアラビアが直面するであろう大きな障害の一つは、急成長するテクノロジー分野を支える強固な人材パイプラインの構築であると指摘している。

「王国は教育と訓練に投資していますが、競争の激しいグローバルな環境において、熟練した専門家を引き付け、維持することは依然として重要な課題です」とアル・ドゥバヤン氏は述べ、さらに「さらに、規制の枠組みを順守し、イノベーションを支援する環境を確保することは、特に、急速な技術進歩と伝統的な慣習とのバランスを図る必要があるこの国では、複雑な作業になる可能性があります」と付け加えた。

パンチャル氏は、王国が直面している課題としては、デジタルトランスフォーメーションのコスト、特に王国内の中小企業におけるコストが挙げられると述べた。

 「大企業はAIと自動化を急速に採用していますが、多くの中小企業は伝統的な業務からデジタル業務への移行に課題を抱えています。クラウドベースの財務管理、税務自動化、リアルタイム会計の導入における専門知識の不足は、彼らの競争力を鈍らせる可能性があります」とパンチャル氏は述べた。

さらに、「一部の中小企業にとって、完全なデジタル業務への移行の初期コストは大きな課題です」と付け加えた。「中小企業に手頃で使いやすいテクノロジーソリューションを提供することで、サウジアラビアはこれらの課題を克服し、真にテクノロジー主導の経済を実現する目標への道を加速させることができます」

アル・ドゥバイアン氏も同様の見解を示し、一部の企業がインフラの制限リスクに直面していると指摘しました。野心的なプロジェクトを支えるためのデジタルと物理的なインフラを整備することは、時間とコストの両面で大きな負担となるからだ。

アル・ナハス氏は、サウジアラビアが将来のテクノロジー目標を本当に達成するためには、AI能力の強化が必要だと述べた。

「考慮すべき重要な要因の一つは、グローバルなAI競争の進化速度です。サウジアラビアがビジョン2030の目標達成に向けて前進する中で、この点は常に意識しておくべき重要な要素です」と、nyblのCEOは述べた。

さらに、サウジアラビアは他国から技術を導入するのではなく、自国の技術イノベーションエコシステムを育成すべきだと付け加えた。

「顕著な例がDeepSeekで、短期間でシリコンバレーのモデルと肩を並べるAIモデルを開発し、業界に前例のない変革をもたらしている」とアル・ナハス氏は述べた。

DeepSeekは中国が開発したチャットボットで、高度な大規模言語モデルを採用し、1月10日に初めてリリースされた。

リリース後、すぐにChatGPTを凌駕し、米国iOS App Storeで最もダウンロードされたフリーウェアアプリとなった。

DeepSeekの印象的なパフォーマンスと比較的低コストは、世界中で波紋を呼び、米国ベースのAIモデルの優位性を脅かしている。

自然言語処理技術により、DeepSeekは人間の言語を理解し、解釈し、生成する能力が向上し、従来の検索エンジンと比較して関連のない検索結果を60%削減している。

アル・ナハス氏はこう付け加えた。「これは、テクノロジー分野におけるイノベーションのスピードの速さを強調するけど、同時に『王国にはそれを生み出すリソースとビジョンがあるのに、なぜテクノロジーを輸入しなければならないのか』という根本的な疑問も投げかける。真にリーダーとなるためには、サウジアラビアは自国でのイノベーションにさらに力を入れるべきだ。外部ソリューションに過度に依存すると、依存関係に陥って進歩が鈍化するリスクがある」

2 月 9 日から 12 日にかけてリヤドで開催された最近の LEAP 会議で、サウジアラビアの通信情報技術大臣アブドゥラー・アルスワハ氏も DeepSeek について触れ、この技術がすべての AI モデルを上回っていることを述べた。

「2022 年の ChatGPT を祝うべきですが、DeepSeek も評価すべきです。インテリジェント時代には、世界は二極化を必要としません。DeepSeek がこれまでのところすべての AI モデルを上回っているこの進歩を祝うために、私たちは協力し合う必要があります」と大臣は述べている。

アル・ナハス氏は、サウジアラビアには AI とディープテックを自社開発することで、世界的なベンチマークを設定する大きなチャンスがあり、この技術をサウジアラビア国内だけでなく世界中に輸出することで、国の経済成長に貢献できると付け加えた。

「世界舞台で競争するには、考え方を変える必要がある。サウジアラビアはテクノロジーの消費者ではなく、創造者であり、王国から世界へと次のイノベーションの波を推進している」とアル・ナハス氏は述べた。

2023年にサウジアラビアに進出したテクノロジー駆動型福利厚生プラットフォーム企業Thriweの創業者兼CEOであるDhruv Verma氏は、厳格なデータ保護法が外国のテクノロジー企業にとって障害となる可能性があり、持続可能な成長のためには長期的な民間セクターの参画が不可欠だと指摘した。

「デジタル化が加速するにつれて、サイバー脅威やデータ侵害のリスクが高まり、強固なサイバーセキュリティ対策と国境を越えた協力の必要性が強調されています」と Verma 氏は述べている。

ドバイを拠点とする経営コンサルティング会社 TransformationX の CEO、Arun Bruce 氏は、アラブニュースに対し、サウジアラビアはテクノロジーセクターが長期的に繁栄し続けるよう、スタートアップのエコシステムを強化すべきだと述べた。

また、アル・ナハス氏の見解に賛同し、サウジアラビア王国は国際的な技術への過度の依存を避け、国内で先進的なイノベーションを開発すべきだと述べた。

「サウジアラビアのテックスタートアップシーンは、複数のアクセラレーターや政府主導のイニシアチブにより確実に強化されていますが、グローバルおよび地域のスタートアップハブと競争する上で、まだ課題は残っています」とブルース氏は述べている。

さらに、「サウジアラビアが成長を目指す中、テクノロジーの投入の現地化が重要になってきている。PIF が支援する ALAT みたいな企業は、間違いなく王国を正しい方向に導いている」と付け加えた。