
フランク・ケイン
ドバイ:世界経済が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の大流行(パンデミック)から立ち直っているという新たな兆しが見え、23日、原油価格の回復が進んだ。
都市封鎖を解除する国が増える中、世界的な指標である「ブレント」がヨーロッパ市場において、3月初旬以来の高水準となる一時1バレル44ドルに到達した。
ドナルド・トランプ大統領が米中間の通商合意は「まったく無傷」と述べたのを受け、貿易摩擦終結への期待から株式市場も上向きとなった。
原油トレーダーは、パンデミックによる需要の落ち込みが想定よりもはるかに小さかったとする、コンサルタント会社Energy Aspectsの専門家の新たな報告を消化した。
チーフ石油アナリストのアムリタ・セン氏は次のように語っている。「結局、COVID-19によるロックダウンが最盛期を迎え、世界の製造業の90%が集中する北半球の大部分が閉鎖されていた4月の世界の石油需要の落ち込みは20%未満で、1日当たり約1850万バレルでした」
当時は多くのアナリストが、ロックダウンにより世界需要が1日当たり約3000万バレル減ると予測していた。
世界経済の回復にとっては良い知らせだが、産油国は板挟みの状況に置かれている。4月にサウジアラビアとロシアが中心となって合意された「OPECプラス」の歴史的な減産は、「必要以上に厳しい条件だった」とセン氏は言う。
それ以来、サウジアラビアなどの自主的な減産や厳しい法令遵守の体制により、供給がさらに減っている。
OPECプラスの中には、現在の1日当たり960万バレルという減産体制をさらにひと月継続することを望む国もあるが、ロシア側は継続の必要はないと見ている。
現在の減産体制が6月末に期限を迎えた時点で原油供給を増やしたいロシアなどの国にとって、需要増や株式市場の落ち込みは攻撃材料となるだろう。