
東京:日立製作所は、日本企業の典型的な人事慣行である年功序列型の給与体系に終止符を打とうとする動きを加速させている。
こうした動きは、同社が経営の軸足をハードウェアの製造業からサービスプロバイダー事業に移す中で進められている施策であり、多くの日本企業にとって、旧来の人事政策がもはや現実的でなくなってきていることを物語る。
創業110周年を迎えたコングロマリットはまた、在宅勤務の活用をグローバルなレベルで推進する必要に迫られている。ABB社からの70億ドルのパワーグリッド事業買収を今月完了し、現在、全世界で31万人いる同社の従業員のうち半分以上が海外で勤務している。
当面は、国内の従業員を対象に職務内容を明確に定め、それらを最終的に報酬とリンクする業績評価基準として使用する方針だ。
同社の中西宏明会長はインタビューで、年功序列型の給与体系は、製造現場が主な人材育成の場であり、新入社員がテレビやディスプレイ、チップなどの製造を一から指導されていた時代には、合理的なものであったと述べている。
「しかしそのモデルはもはや機能しない」と彼は言う。同社は、2008年の世界的な経済危機の後、ハードウェアビジネスの大部分から撤退した。現在日立は、社会インフラ事業と関連するデジタルサービスに注力している。
これらの分野において従業員が期待されるのは創造的なビジネスのアイデアだ。
日立を含む日本企業は、一部の従業員に成果主義を部分的に採用している。しかし、労働問題の専門家は、年功序列型の給与体系が依然として標準的であると言う。
同志社大学で組織論を専攻する太田肇教授は、「我が国で成果主義を採用する動きにおける半歩の前進」だと述べ、明確な職務内容の定義が欠けている点が、完全な成果主義を実現するための課題だと指摘する。
日立の最高人事責任者である中畑英信氏によると、ジョブ型人材施策の導入により「相当な規模のポジションのミスマッチが起こる」と想定しているという。
日本の労働人口の流動性が低いことを問題視する意見もある一方で、中畑氏は、国内にいる同社の15万人の優秀な従業員のプールが、解雇をすることなく再編を進めることを可能にすると語る。
他社にも同調の動きはある。富士通も同様の施策の採用を進めており、ジョブ型の人材施策を導入するとしている。
一方で、労働政策研究・研修機構の濱口桂一郎研究所長は、多くの日本メーカーは、製造現場の従業員にジョブ型の人材施策を採用することに消極的であろうと予想する。ジョブ型の導入で、本来幅広い職務を遂行できる能力がある従業員を、特定のプロセスに紐づけることになってしまうのがその理由だという。
製造現場の柔軟性は、日本企業の屋台骨でもあった。
「日立のようなテクノロジー企業は、製造部門をすでに売却しているか、受託業者に移管しているため、フロントランナーとなりえている」と同教授は指摘する。
「しかし、日本の自動車メーカーが、ゼネラルモーターズやクライスラーなどと同様のシステムを、製造現場の従業員に導入したいと本当に考えているかは疑問です」
ロイター