
ニューデリー:どうみても日産自動車は、インドで恐ろしい経営状態にある。同社低価格車種ダットサンの回復への後押しが大失敗し、売り上げは過去5年で60%落ち込み、インド国内に1カ所ある工場は生産能力を大きく下回る稼働状況だ。
しかし、スキャンダルに打ちのめされ45億ドルという記録的年間営業損失を見込む日産がインドでその運を好転させるべく費やす資金とエネルギーは、ある1車種の販売にかけられている。新コンパクトSUV「マグナイト」だ。3名の情報筋が明かしてくれた。
このSUVはまた、日産と同盟パートナーであるルノーがインド市場でそれぞれの役割をじっくり検討するなか、日産がどれだけの影響力を行使するかを見定めるものになるかも知れない。
今月発表され今年末か来年2021年初めに発売予定のマグナイトは、日産がインドで2年ぶりに新発売する車種だ。さらにこの車は4月からの排気規制厳格化を受けて別の2車種が撤退した後、日産がインド市場で展開する3車種のひとつとなる。
「マグナイト」により、日産にはインド戦略を考えるのに2年という猶予が与えられたことになり、このSUVの結果によってインドにもっと投資するか事業を縮小するかを決定することになります」と1名の情報筋は述べた。
別の情報筋は、このSUVを日産にとってインドで復活するための「最後の希望」と呼んだ。
しかし日本第2位の自動車メーカーである同社は、インドから撤退することは計画していない。インドへはこれまでに8億ドル以上投資しており、戦略についての議論も進行中であるとその人物は述べた。彼らはメディアに語ることは許可されていないために匿名を条件に語ってくれた。
ダットサン・ブランドは世界戦略見直しの一環として徐々に廃止していくと彼らは言う。インドにおける他の日産モデルはダットサンの3車種だ。
ロイターへの発言で日産は、インド市場に全力を注ぐと述べ、同社には「持続可能で収益性の高い事業」に向けての明確な戦略があるとした。しかしマグナイトの販売目標についてのコメントは控えていた。
一人目の情報筋によれば、社内計画ではマグナイトの月間売上目標は1500台から2000台だという。もしこれが実現すれば、7車種展開していた昨年度のインドでの平均月間売上を超すことになる。
今回のSUVは「強気」な値付けがされるとその人物は述べた。元はダットサンモデルとして開発されたこの車には、タッチスクリーンやクルーズコントロールなど中価格帯車種で普通にみられる機能が付くとされる。
しかし市場は変化した。新型コロナウイルス感染拡大で需要が打撃を受け、インドのコンパクトSUV部門はせめぎ合っている。マグナイトも、マルチ・スズキの「ブレッツァ」やヒュンダイ自動車の「べニュー」などといった業界をリードするメーカー車種としのぎを削ることになるだろう。
問題をさらに複雑にしているのがディーラーの離反で、2018年には約270あった日産の販路は半分近くに落ちている。
元会長カルロス・ゴーン氏の2018年の衝撃的な逮捕・追放劇を受けて日産とルノーが根本的構造改革をするなか、インドは日産にとって特に厄介な市場となっている。
資源を節約し、意思決定を明確にし、重複を回避すべく、両社は主要市場において「リーダーとフォロワー」方式をとることを取り決めた。一方が陣頭指揮をとり、もう一方が後方に控えるという戦略だ。
例えば日産は、米国、中国、日本で指揮をとっている。しかしインドはそのような決定がなされていない唯一の主要市場だ。そこでは共存・競合することになると両社は述べている。
ロイター