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相互に利益のある協力関係

28 Oct 2019 12:10:43 GMT9

トム・グラウス、ロンドン

日本と湾岸諸国は、大きなニュースとなる取引から長期的な協力関係の約束まで、相互に利益のある新たなプロジェクトによって経済的な絆を構築している。

両国の関係を巡る噂では、サウジアラビアが史上最大規模になると予想されるアラムコのIPOの海外での上場場所として、東京を検討しているとの憶測がある。

両国間のより具体的で同様に注目を集める事例が、日本人実業家の孫正義氏が所有するソフトバンクの「ビジョンファンド」に対する、サウジアラビアの投資だった。

サウジアラビアの政府系ファンド「パブリック・インベストメント・ファンド(公共投資ファンド)」は、ビジョンファンド最大の投資家の1つである。孫氏は今後数年内に王国へ多額の投資を行うと期待されている。

そのような思惑が、密接な経済協力関係に対する両国の計画の一部を形作っている。この協力関係は、サウジアラビア経済の多様化を目指す皇太子の「ビジョン2030」の一環である、「日・サウジ・ビジョン2030」の下で正式なものとなった。

サウジアラビアと日本は歴史的に密接な関係を持つ。日本が石油に依存しているからだ。天然資源の少ない日本は、石油の85%を湾岸地域から輸入しており、その40%がサウジアラビアからのものである。

興味深いことに、サウジ国民は同国の石油に対する日本の依存度を過小評価している。YouGov社とアラブニュースによる調査では、2018年における日本の石油の85%が湾岸協力会議諸国産のものだったことを知っているサウジ国民は32%のみにとどまり、回答者の49%が40%を大幅に下回る数字を答えた。

これら全てが示すのは、日本と湾岸協力会議諸国の間の協力関係は拡大を続けるということである。最近の傾向に注目すれば、経済協力が今後拡大することに楽観的な見込みを持つ理由が分かる。

例えば、日本は2018年においてドバイの7番目に大きな貿易相手国だった。両国間の石油以外の貿易も、昨年は2011年と比べ44%増加し、110億ドルに達している。

ドバイ商工会議所に登録された日本企業の数は着実に増え、131社に上る。これらの数字は、ドバイが望ましいビジネスハブとしての信用力を増し、成長チャンスを期待する日本の企業や投資家たちを引きつけていることを反映している。

ドバイ商工会議所のハマド・ブアミム会頭兼CEOは、UAEと日本のビジネス関係に関するコメントで次のように述べている:「ドバイと日本の絆は、両国トップによる互いの国の訪問や、ビザの制限緩和、両国間の直行便の拡大、そして戦略的協力協定の締結に支えられ、最近数年でますます強くなりました」

サウジアラビアに関して言えば、日本との関係性が拡大を続けているのは、主にビジョン2030計画に組み入れられている石油経済からの変革に取り組む同国の努力の結果である。

2017年3月に「日・サウジ・ビジョン2030」プロジェクトが公式に発表された時、サウジ外務省は公表した提案書の中で、サウジアラビアにとって日本は「理想的なパートナー」であると強調した。日本は「知識資本と技術的優位性」を持っているため、サウジは「その高度な最先端技術を活用することで経済の多様化と強化を進めるチャンスを探っている」からだ。

日本側にとっては、「サウジと日本の協力は、日本企業がサウジアラビアでの投資規模をさらに拡大するチャンスを見つけて発展させるのに役立つ」だろう。

この種の経済交流の良い例が、ソフトバンクのビジョンファンドに対するサウジアラビアによる投資である。この投資は、次にサウジの新たなハイテク都市NEOMに対するソフトバンクからの投資となって返ってくるだろう。

評論家の中には、サウジアラビアは日本を、石油を超越して技術や「知識集約型」産業へと移行するためのモデルとして見ていると考える者もいる。ワシントンのジョンズ・ホプキンズ大学でライシャワー東アジア研究所の所長を務めるケント・E・カルダー氏は先月、ジャパンタイムズへの寄稿記事の中で、「両国は炭化水素埋蔵量において全く対照的であるとしても、サウジアラビアが石油を超越した世界についていかに真剣に考えているか、そして日本が資源の有効利用に関する指導者としていかに重要性を持って浮上しているか」ということについて述べている。

経済を「知識集約型」産業へ多様化しようとしているサウジアラビアは、1970年代にこの方向へ舵を切った日本の動きに倣おうとしていると、カルダー氏は言う。

日・サウジ・ビジョン2030の一部を形成する多くの構想が、この移行を促進するために設計されている。日本の上村司駐サウジ大使は今年行われたアラブニュースとのインタビューで、日本の技術と専門知識を王国に移転するのを支援している機関に注目した。そのような機関には、エンジニアを目指す若い学生を教えるジッダの産業用ロボティクス研修施設「サウジアラビア日本自動車技術高等研修所」が含まれる。

「それらのプロジェクトを通して、私たちの現場での体験や知識の多くがサウジの研究者や学生たちに移転されてきたと信じています」と、上村大使は6月にアラブニュースに語った。

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