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「厄介で時代遅れ」な固定観念がアラブ世界に対する欧米の認識を歪めている

重要な新調査は、アラブ世界に対する欧米の認識とアラブ地域の現実との間の溝を浮き彫りにしている。(AFP)
重要な新調査は、アラブ世界に対する欧米の認識とアラブ地域の現実との間の溝を浮き彫りにしている。(AFP)
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18 Jul 2022 09:07:24 GMT9
18 Jul 2022 09:07:24 GMT9
  • バイデン大統領の中東訪問の前夜、トニー・ブレア・グローバル・チェンジ研究所による調査が発表された
  • 2つの調査により、欧米の意識とアラブ地域の実態との間の深い溝が明らかになった

ジョナサン・ゴーナル

ロンドン:欧米諸国の目には、中東諸国は「後ろ向き」で、非友好的で、敵対的でさえあり、自分たちと価値観や願望を共有していない国々と映っている。

これらは、トニー・ブレア・グローバル・チェンジ研究所のために実施された新たなアンケート調査で明らかになった、欧米4ヶ国(イギリス、米国、フランス、ドイツ)の人々が持つ厄介で時代遅れな認識だ。

しかし、この調査が同時に明らかにしているのは、実はサウジアラビア、エジプト、イラク、レバノン、チュニジアのアラブ人は「米国とその自由・革新・機会という価値観を深く尊重している」という事実だ。

ユー・ガブは3月20日から3月28日の間、欧米4ヶ国の成人6268人(米国1418人、イギリス1780人、フランス1065人、ドイツ2005人)を対象にオンラインアンケートを実施した。

一方、ゾグビー・リサーチ・サービスは3月17日から4月7日の間、アラブ5ヶ国の成人4856人(エジプト1043人、イラク1044人、レバノン857人、サウジアラビア1043人、チュニジア869人)を対象に対面インタビューを実施した。

ジョー・バイデン米大統領のサウジアラビア訪問の前夜にタイムリーに発表されたこの調査とそれに付随するレポート「Think Again: Inside the Modernization of the New Middle East(再考:新しい中東の現代化の内側)」は、アラブ地域に対する欧米の認識と実態との間の溝を浮き彫りにしている。

イギリスの元首相でブレア研究所の創立者・理事長のトニー・ブレア氏はこう語る。「中東・北アフリカの人々、特に若者は、宗教的に寛容な社会、経済的に進取的な社会、隣人と仲の良い社会を望んでいる」

「そのような改革に取り組む指導者は支持される。宗教や部族の違いを利用しようとする指導者は支持されない。そして、調査対象となった国のほぼ全てにおいて、西側諸国、特に米国・欧州・イギリスについての意見は驚くほど肯定的だ」

残念ながら、「欧米の意識は遅れている。我々は依然としてアラブ地域のことを、後ろ向きで、厄介で、我々に対して救い難く敵対的だと考えている」と同氏は付け加える。

「そして、中東の一部にそのような意識があるという証拠は当然あるが、多数派ではないことを今回の調査は示している」

同氏はこう警告する。欧米にとってのリスクは、「アラブの人々の実際の考え方についての時代遅れな誤解によってアラブ地域への関与をやめてしまうことだ。今こそ、アラブ自体だけでなく我々自身の安全保障へのメリットのために、アラブやその現代的要素と提携する機会だというのに」

ブレア研究所のレポートは「新しい中東が共有する変化へのビジョン」の例としてサウジアラビアの社会的発展を指摘しているが、このビジョンや同国が既に成し遂げた進展は今のところ欧米の意識に印象付けることはできていないと結論している。

欧米の調査対象者の半数以上が、中東の人々は自分たちと同じ価値観(世俗政治の支持、違いの尊重、表現の自由など)を共有していないと考えている。

また、「希望を特徴とする前向きな地域だとは考えておらず、中東を厄介な紛争や暴力的な過激主義と結びつけている」とレポートは付け加えている。

しかし、そこに住む人々の観点からは「新しい中東は全く異なる場所」であることを今回の調査は明らかにしている。

例えば、「制度改革、社会の自由化、経済の多角化を進めるサウジアラビアの現代化プログラムや同様の取り組みを圧倒的多数が支持している」

同様に、「逆行的な宗教運動やその政治における役割に多数が反対している」

レポートは、サウジアラビアの未来を描く「ビジョン2030」構想のもとでムハンマド・ビン・サルマン皇太子殿下が推進する現代化プログラムを「植民地独立後の期間以来、最も包括的で、地域先導型で、変革的な計画」だと称賛している。

アラブ地域全体にわたる調査対象者の73%が、法律・政策の自由化や経済の多角化などのサウジアラビアの変革的な取り組みを支持すると回答している。サウジアラビア自体では89%に上る。

宗教的権威の影響力の衰えなど、サウジ社会の変わりつつある性質について、今回の調査は多くのことを明らかにしている。

実際、調査対象となったアラブ5ヶ国全てのほぼ全員にとって、教育改革や宗教の役割は重要な問題だ。イラク人の77%、サウジ人の73%、チュニジア人の71%、レバノン人の65%が、自国の宗教教育と慣行には改革が必要だと考えている。

「明確なのは、人々が求めているのは、時代遅れで破壊的なイスラム主義イデオロギーに結びついた指導部ではなく、世俗的で実利的な政府だということだ」とレポートは述べている。

「現在、政治化された宗教運動がアラブ地域に損害を与えているという意見に、75%という圧倒的多数が同意している」

この数字はサウジアラビアではさらに高く、80%に達している。

サウジアラビアの当局、議員、宗教学者は、「女性の権利や司法制度(および)検閲の法律の現代化、男女分離の法律などの社会的制限の撤廃に取り組んできた」とレポートは述べている。

サウジ人の多数は、「優先度が高い」のは経済の現代化・多角化だと回答している。60%はテクノロジーやイノベーション、44%は雇用創出のための理想的な部門としての観光だと答えている。

サウジアラビアでは、自分の子供に身に付けてもらいたいものとして、技術的スキルと回答した人が宗教教育と回答した人より多かった。

サウジアラビアが非石油部門の潜在的可能性を引き出すべく動いている中、未来についてのサウジ政府の考え(と行動)は国民の意見と一致しているという事実を今回のレポートは浮き彫りにしている。

例えば2021年には、スタートアップ資金が前年比54%増となり、情報通信技術への投資額は330億ドルとなった。レポートは、サウジのテクノロジー部門には現在30万を超える雇用があることも強調している。

世界起業家会議は45ヶ国中、サウジアラビアの経済・規制環境を起業にとって最高の環境だとランク付けしている。

女性の権利に関しては、民間・公共部門において男性と同等の雇用上の権利を女性も持つべきだという意見に、2対1の割合で多数のサウジ人が同意している。

ビジョン2030では、2030年までに女性が労働人口の30%以上を占めることを目指している。また、サウジアラビアでの女性の経済参加率は2017年の19.4%から2020年の33%以上にまで増加している。

これらの展開は全てサウジアラビアにおいて支持されているとレポートは結論している。同様に重要なのは、欧米、特に米国がそれを支持することだと、ブレア研究所は述べている。

1945年2月にスエズ運河上の米国戦艦クインシー号で行われたフランクリン・D・ルーズベルト大統領とアブドルアジーズ国王(サウジアラビア建国者)の会談にまで遡る、友好関係と経済・軍事協力の歴史を反映して、「反米主義が高まっていると欧米は何十年も想定してきたにもかかわらず、サウジ人は米国を世界における一番のパートナーと見ている」

サウジの回答者は、最も好感の持てる国という評価を中国、米国、イギリスに与えているが、66%は自国のパートナーとして最も望むのは米国だと答えている。

「サウジアラビアとその国民が社会・経済の変革において前進している今こそ、米国とその同盟国が同国の未来に投資する時だ」とレポートは述べている。

サウジアラビアが自国の遺産の保全・促進と、(若い国民が喜ぶ)欧米文化の受け入れの間で巧みにバランスを取っていることもレポートは指摘している。

「かつては保守的な国だったサウジアラビアにおいて、ビジョン2030は文化的表現を優先事項として3つの目標を掲げている。寛容・プロフェッショナリズム・規律・正義・透明性の促進、サウジ・アラブ・イスラムの文化遺産・歴史の保全、未来の世代へ継承するための国民意識の保全・促進である」とレポートは述べている。

また、「商業的な意味合いもある(…)。サウジアラビアはグローバルなアプローチを取って、フェスティバル、アート、ミュージアムのための海外のパートナーを求めている。2030年までに文化部門は200億ドルをもたらし、10万の雇用を創出し、GDPの3%に寄与することが見込まれている」

同時に、「音楽フェスティバルや国際スポーツイベントは、中東の変化を活用している」

リヤド郊外の砂漠で開催され世界から70万人以上を集客した昨年のMDLビースト・サウンドストーム・フェスティバルが引き合いに出されている。

国が出資したこのイベントでは、「若い男女がオープンに混ざり合い、非伝統的な服を着て、デヴィッド・ゲッタ(その登場にサウジの若者は大興奮だった)など欧米の人気ミュージシャンによるパフォーマンスを楽しんだ。フォーミュラ1などのスポーツイベント(…)も世界から観客を引き寄せている」

サウジアラビアが国を挙げた「文化的変革」の一環として、海外アーティストの訪問を奨励する新しいビザ制度や、アーティストが永住できる居住プログラムを導入したことを、レポートは強調している。

「文化的交流の自由度を上げ、芸術・文化部門を加速する同国の計画を下支えすることが目的だ」

ブレア研究所のために調査を実施した国際調査会社ゾグビー・リサーチ・サービスのマネージングディレクターであるジェームズ・ゾグビー氏はレポートの序文において、アラブ世界に対する欧米の認識は「現実ではなく、偏見に満ちた意見を正当化するのに使われる否定的な固定観念や逸話的な証拠によって作られていることがあまりにも多い」と指摘する。

結果として、「アラブ人はどのような人々か、彼らはどのような価値観や願望を持っているかについての我々の理解は、的外れであることがあまりにも多い」という。

欧米の政策立案者や政治アナリストは「アラブ人について、またアラブに向けて語るが、彼らの生活、ニーズ、未来への希望を十分に理解するためにアラブ人の話を聞こうとすることはめったにない」

このことの一つの帰結として「複雑な地域が過度に単純化され、犠牲の大きい政策上の大惨事が起こっている。そのような失敗を認識しながらも、否定的な認識によって作られる意識に依然として阻まれ、アラブ地域への関与をやめることを求める声が欧米の一部から上がるようになった」

ゾグビー氏から欧米の政策立案者や政治専門家に向けてメッセージがあるという。「まず自分の偏見をチェックしてから、何を望むかを語るアラブ人の声を聞くこと」

「私の母がよく言っていたように、『話を聞いてほしかったら、まず相手の話を聞くこと』」

「研究所のおかげで、アラブの声があなたに語りかけている。彼らが言っていることに耳を傾けよう」

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