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レバノンの一流病院がウイルスとの戦いで疲弊

2021年1月22日(金)、レバノンのベイルートにあるラフィク・ハリリ大学病院の集中治療室で新型コロナウイルス感染症の患者の治療を行う医療従事者。危機に見舞われた地中海の国レバノンでは、厳重なロックダウンが行われているにもかかわらず、国中でコロナウイルスの感染者数が急増しており、病院の対応能力が限界に達しつつある。(AP通信)
2021年1月22日(金)、レバノンのベイルートにあるラフィク・ハリリ大学病院の集中治療室で新型コロナウイルス感染症の患者の治療を行う医療従事者。危機に見舞われた地中海の国レバノンでは、厳重なロックダウンが行われているにもかかわらず、国中でコロナウイルスの感染者数が急増しており、病院の対応能力が限界に達しつつある。(AP通信)
2021年1月21日、レバノンのベイルートにあるラフィク・ハリリ大学病院で、コロナウイルスに感染した患者のための集中治療室で働く医療従事者。(ロイター通信)
2021年1月21日、レバノンのベイルートにあるラフィク・ハリリ大学病院で、コロナウイルスに感染した患者のための集中治療室で働く医療従事者。(ロイター通信)
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23 Jan 2021 08:01:01 GMT9
23 Jan 2021 08:01:01 GMT9
  • レバノン全国の病院はほとんど病床に空きがない
  • レバノンでは、コロナウイルスの感染者数が劇的に増加している

ベイルート:ベイルートのラフィク・ハリリ大学病院の廊下には死がつきまとっており、1日に何人もの患者をCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)で失うことが新しい日常になっている。金曜日、若い女性がコロナウイルスとの戦いに敗れ、病院職員の間ではさらに重々しい雰囲気が漂っていた。

30代になったばかりの女性が息を引き取った時、現場は沈黙していた。その後、短い騒ぎとなった。看護師は必死に彼女を蘇生させようとした。最終的に、疲れ果てた看護師らは静かに酸素マスクとチューブを取り外し、茶色の毛布で彼女の体を覆った。

この女性は、プライバシー保護のために名前は伏せられているが、金曜日に死亡した57人の犠牲者の1人であり、レバノンではこれまでに2,150人以上が新型コロナウイルスに感染して亡くなっている。レバノンは人口約600万人の小さな国で、昨年から同国の近代史で最悪の経済・金融危機を克服するために取り組んでいる。

ここ数週間でレバノンでは、コロナウイルスの感染者数が劇的に増加している。感染者数の増加は、規制が緩和されて数千人の国外居住者が一時帰国していたホリデーシーズンに続いて起こった。

現在、レバノン全国の病院はほとんど病床に空きがない。酸素タンクや人工呼吸器の供給が不足し、そして最も致命的なことに医療従事者が極端に不足している。医師や看護師は疲れ果てていると言う。極度の疲労により、多くの医療従事者が退職した。

他にも多くの医療従事者がウイルスに感染し、病欠を余儀なくされ、さらに数を減らした医療従事者がこの負担を背負うために残業を行うこととなった。

死者が出た後に空いたベッド1台に対して、3~4人の患者が救急救命室で自分の順番を待っている。

病院の看護師のモハメド・ダルウィーシュさんは、急増する入院患者の世話をするために週6日働いているが、家族にはほとんど会っていないという。

「疲れます。最近全く良くないのは医療部門です」とダルウィーシュさんは話した。

2月以降、レバノンの医療従事者のうち2,300人以上が感染しており、レバノン医師会によると、レバノンに14,000人いる医師のうち約500人が危機に瀕したレバノンをここ数か月で離れた。昨年夏にベイルート港で起きた大規模な爆発で約200人が死亡し、数千人が負傷し、同市の全域を破壊したことに加え、レバノンの通貨暴落とインフレで、すでに危機に瀕していた公衆衛生システムに、このウイルスはさらなる負担をかけている。

世界銀行のサロジ・クマール・ジャ地域局長は金曜日のオンライン記者会見で、「レバノンが崩壊しつつあるというのが我々の認識だ」と記者団に語った。

政府の主要なコロナウイルス対応施設であるラフィク・ハリリ大学病院は、現在40台の病床がICUにあるが、すべての病床が埋まっている。世界保健機関によると、ベイルートの病院の病床使用率は98%に達している。

町の反対側にある民間病院、アメリカン大学医療センター(レバノン最大級の名門病院)では、より多くの患者を受け入れるためにスペースの確保を行っている。

しかし、呼吸器・救命救急部門の責任者であるPierre Boukhalil医師によると、それだけでは十分ではないという。AP通信が最近訪問した際には、同氏の病院の医療従事者は明らかに能力の限界に達しており、患者の状態を監視する機械の絶え間ないビープ音が響く中、患者から患者へせわしなく移動していた。

この状況は「災害に近いか、津波が発生しているとしか言いようがない。我々はここ1週間ほど対応能力を増強し続けてきたが、需要にさえ追いついていない。この状況は止まらない」と、同氏は患者をチェックする合間にAP通信に語った。

Boukhalil氏の病院は先週、同病院の医療従事者は能力の限界に達しており、「最も重篤な患者にさえも病床を割り当てることができない」という声明を発表して警鐘をならした。

ホリデーシーズンの開始以来、レバノンでは1日の感染者数が5,000人付近で推移しており、11月の約1,000人から増加している。1日の死亡者数は過去数日で60人以上になり、過去最高を記録した。

医師らによると、検査の増加に伴って症例数も増加しており、これは通常の傾向だという。レバノンのワクチン接種プログラムは来月から開始される。

看護師のダルウィーシュさんによると、ラフィク・ハリリ大学病院に入院しているCOVID-19の患者、特にICUに入院している患者の多くは若く、基礎疾患や慢性疾患を持っていないという。

「彼らはコロナウイルスに罹患しても、全く大丈夫だと思っています。しかし突然、患者の状態が悪化していることに気付きます。彼らの病状は突然悪化し、不幸にも彼らは死んでしまいます」

木曜日の夜、65歳のサバ・ミレーさんが呼吸困難で入院した。彼女は呼吸を補助するための酸素療法を受けた。彼女の2人の姉妹もウイルスに感染していたが、2人の姉妹の場合は軽症だった。ミレーさんは心臓に疾患があり、入院しなければならなかった。

「この病気はゲームではありません」と彼女は言い、呼吸を維持するためにどれほど苦しんだかを説明した。「この病気に注意し、軽視しないで下さい」

1月14日に発令された全土での終日外出禁止令は木曜日、ウイルスの急増に対処する医療部門を支えるために2月8日まで延長された。

「私は今でも、亡くなった30歳の人を見ると悪夢にうなされる。この病気は防げたかもしれない」とBoukhalil医師は話した。

「だから、ロックダウンを続けるべきだ…… ロックダウンには効果がある」と同氏は言う。

AP通信

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