
カイロ:世界の七不思議の1つ、ギザのピラミッドを歩く観光客もまばらだ。今月、受け入れを再開した日にルクソール神殿の列柱を見に来た観光客はわずか12人だった。エジプトの紅海沿岸のリゾート地では観光客の数が前年を大きく下回っている。
国際便の運航と観光地の営業が再開し、エジプトの新型コロナウイルス感染者数も抑えられているが、当局、ホテルのオーナー、ツアーガイドは10月から始まる重要な冬のシーズンは厳しくなると覚悟している。
これは経済にとって悪いニュースになるだろう。エジプトの国民総生産に占める観光業の割合は最大15%だ。今年は新型コロナウイルスのパンデミックの影響で、観光部門はほぼ休業となり、3月から毎月約10億ドルの損失を出していた。
エジプト当局は、観光客に安全性を保証しつつ来訪を促すためにあらゆる努力をしており、観光部門が徐々に復活することを願っている。
観光の落ち込みに直面しているのはエジプトだけではないが、同国は今年に入ってIMF(国際通貨基金)から新たに80億ドルの融資を受けているため打撃が大きい。
かつてはここに50台ほどのバスがありました。今は一台もありません」と言うのは土産物を販売するサミルだ。彼はカイロの南にあるピラミッドで30年以上仕事をしているが、息子の学費のために私物を販売している。
「1週間前に1台だけバスが来ました。乗客は全員ロシア人でした。彼らは何枚か写真を撮って去って行きました」
ピラミッド隣の大エジプト博物館は来年オープン予定のため、2021年には急速に回復する必要性がある。
西洋人は通常、自国の寒さや猛烈に暑いエジプトの夏を避けて10月から3月にエジプトの史跡や黄金の砂浜に押し寄せる。
観光部門は準備を進めているが、観光業のスタッフや当局によると、ホテルリゾートの稼働率は半数以下で、主要な施設もほとんど空いているという。
エジプト観光考古学省のガーダ・シャラビ次官によると、7月1日以降にシャルム・エル・シェイクリゾートのある紅海沿岸から南シナイ地方を訪れた観光客は22万人ほどだが、これは前年の同時期の10%にも満たない。
シャラビ次官は、観光客が徐々に沿岸のリゾートに戻ってきていたが、観光客の人数を増やすより身の安全を最優先にしたと述べた。
現在、ホテルは保険規則に従って定員を50%に制限している。
観光省の関係者によると、シャルム・エル・シェイクリゾートの稼働率は30~35%、エジプトの紅海県とハルガダリゾートは35~45%だという。
エジプト観光協会の同地方支部長のサルワット・アガミ氏によると、王家の谷からナイル川を挟んで向かいにあるルクソール遺跡は9月1日に再開したが、12人の観光客一組がハルガダから訪れただけだった。それから一日に訪れる観光客は少し増えたという。
ナイル川クルーズは10月に再開予定だが、チャーター便が再開しない限り予約が回復する見込みはほとんどない。
「来年の観光はうまくいくことを願います」とアガミ氏。
エジプト政府は緊急の資金提供を行い、観光部門を保護するために動いており、9,000人以上の政府公認ツアーガイドは年末まで月32ドルを受け取ることになっている。旅行会社は、一部の料金の免除を延長するよう求めている。
ナイル川のクルーズ船、ホテルを所有し、南エジプトでカルチュラル・ツーリズムを販売するモハメド・オスマン氏は、11月に少しは予約が入ると期待しており、「一晩で人が殺到することはない」にしても再開は重要なシグナルになると話した。
新型コロナウイルス感染者の公式発表数は、6月中旬には1日1,500人とピークを迎え、現在は1日200人を下回っている。当局によると、観光地やホテルは厳しい規制の対象に置かれている。入国者はPCR検査が義務付けられている。しかしEUは安全な渡航先リストにエジプトを加えていない。
「我々は観光客を最大限に呼び戻すためにあらゆる措置をしっかりと講じ、観光客に安心感を広めるための努力を惜しみません」とシャラビ次官。
観光客に人気の買い物スポットであるカイロのハン・ハリーリ市場では、多くの店が閉まっている。
銀細工ショップのオーナー、サイード・アベル・ハリクさんは「誰もいません」と述べた。
ロイター通信