
ロンドン:COVID-19治療薬から大きな利益を挙げようと賭けている投資家たちは、製薬会社のギリアド・サイエンシズが今月、四半期決算を報告する際、嬉しくない驚きを受けるかもしれない。同社のレムデシビルは、コロナウイルス初の重要な治療薬であるが、当初の期待通りに使用されず、複雑な保険金の問題に直面している。
同社の一番の期待は、米国とその他の北半球諸国の政府が冬の患者の急増を懸念し、この場合に備え、実験的なCOVID-19の抗体治療と併用して試験中でもあるこの抗ウイルス薬を備蓄し始めることであるかもしれない。
レムデシビルは、重篤なCOVID-19入院患者の標準治療薬となった。しかし、多くの医師はより広くこの治療薬を使用することに依然として慎重であり、新たな治療薬によって結局は影をひそめてしまう可能性のある薬に関する、高名なアナリストの売上予測に疑問を投げかけている。
世界保健機関は木曜、COVID-19治療における国際的な治験で、レムデシビルが患者の入院や生存率の長さにおいて、実質的効果はなかったことが明らかになった、と述べた。本試験は外部専門家による再調査は行われていない。アメリカ食品医薬品局が5月にレムデシビルの緊急使用を許可して以来、株式が22パーセント下落しているギリアドは、WHOの知見は「さらに多くの確たる証拠と矛盾している」と述べた。
同企業は早期需要を満たすことに苦心しており、レムデシビルが重症患者の入院日数を短縮させることが証明された唯一の治療薬となった際、パンデミック早期に約25万クール分を提供した。
それ以来、低価格のステロイドがCOVID-19重症患者の死亡リスクを低下させる効果があると実証されたが、医師は中程度の症状の患者にレムデシビルを使用することの医療価値について疑問視している。
リフィニティブによると、米国金融市場は、世界中における今年のレムデシビルの売上は25億ドルだと予測している。
しかし、本治療薬の第2四半期の流通を監視しているアメリカ合衆国保健福祉省(HHS)は、病院は使用できる50万クール分のうち32パーセントのみ購入した、と述べた。1クール分につき3,120ドルで、約5億ドルの価値がある。
EUは7月、別の7,400万ドルの価値がある3万クール分を購入した。EUは最近、今後6ヵ月で50万クール分のレムデシビルの契約を結んだが、この契約では購入の必要はない。ギリアドは、世界中の多くの国にレムデシビルを販売し使用権を認めているが、同社は米国や欧州から収益の大半を受け取ると予想されている。
ギリアドのコマーシャル部門責任者、ジョアンナ・メルシエ氏は、「入院率は本来予測していたものよりはるかに低かった」と認めた。
「多くの人々が本治療薬の供給について心配しており、病状が最悪の患者のためにレムデシビルを保管しておきたかったのです」と彼女は述べた。
彼女はギリアドの販売予測について話し合う記者会見への出席を断ったが、米国の供給過剰のいくつかは、備蓄のためHHSによって吸収されており、一部は欧州へ転用されたと述べた。
本治療薬は、ギリアドの製品販売の一部しか占めておらず、2019年で総計217億ドルであった。しかし、アナリストによると、同企業は7月に2020年の見通しを上向きにし、レムデシビルの売上が最大30億ドルまでになったと暗に伝えた。
公共の保健機関は、COVID-19患者は費用が原因で治療薬を拒否されてはいないと述べたが、米国の病院のインセンティブは複雑である。
高齢者向けの連邦医療保険プランであるメディケアのような多くの民間営利保険会社は、診断内容に基づき、治療において患者一人に付き定額料金を支払っている。
こうすることで「病院に患者を留めることを避ける」インセンティブが生まれ、入院費用を低減させる治療薬を効果的に活用できる、とECGマネジメント・コンサルタントの医療費償還のスペシャリスト、リチャード・トレンボビッツ氏は述べた。
メディケアは3月にCOVID-19関連の入院費の20パーセント値上げを承認したが、5日のクール分で3,120ドル、または政府購入者で2,340ドルかかるレムデシビルを直接償還はしていない。
米国の病院は、費用は臨床決定に影響を与えないと述べている。「価格は全く法外ではありません」とヒューストン・メソジスト病院の感染病専門の薬剤師であるキャサリン・ペレス氏は述べた。「患者の皆様が早く退院できることを願っています」しかし、彼女は「より軽度の感染症にレムデシビルを使用することをデータが裏付けているとは思いません」と付け加えた。
それでも、8月にFDAは軽度の疾病の患者を含めるよう、レムデシビルの使用許可を拡大した。
「私は高齢者や薬で免疫系の働きが低下している人にレムデシビルを使用すると思います」とボストンにあるマサチューセッツ総合病院の感染病専門医のラジェッシュ・ガンディー博士は述べた。「30歳の経過良好の患者には、こうしたことはまず起こりません」
ギリアドのメルシエ氏は、酸素が必要な患者のためにレムデシビルを保管しておくことは、この治療薬の「必ずしも最適な使用方法ではない」と述べた。これは抗ウイルス薬が、損傷を与えるのに十分なほどウイルスが増殖する前の、感染の早期に一番効果があるためである。
エボラの治療薬としては失敗した本治療薬は、ウイルスが複製し宿主の免疫系を圧倒するのを防ぐ目的で作られている。
一方、ギリアドは非入院患者に効果があるかどうか確認するため、吸入処方化を試験することなど、レムデシビルの開発に向けて前進している。
ロイター