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カルロス・ゴーン氏「最後にはいつも真実が勝つ」

記者会見中に語る前日産自動車会社会長カルロス・ゴーン氏。レバノンにあるカスリク大学(USEK)総長とともに。危機に陥った国を救う共同の取り組みを立ち上げる。2020年9月29日、ジュニーエの北部都市にて(AFP)。
記者会見中に語る前日産自動車会社会長カルロス・ゴーン氏。レバノンにあるカスリク大学(USEK)総長とともに。危機に陥った国を救う共同の取り組みを立ち上げる。2020年9月29日、ジュニーエの北部都市にて(AFP)。
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10 Nov 2020 05:11:05 GMT9
10 Nov 2020 05:11:05 GMT9
  • アラブ·ニュースの特別インタビューで、カルロス·ゴーン氏が著書「真実の時」出版に際し、真情を吐露した。
  • 「フランスは私を見捨てていない、という人は話を追えていません。理解できていません」 

エルサ·ヤズベク·キャラバティ

カルロス·ゴーン氏、最も認めがたい真実は何ですか?

一つだけではなく多くの真実、むしろ認めがたい現実があります。私がキャリアのかなりの大部分を、死に体にあった企業に捧げたのは事実です。2016年末にポジションを退いたので、17年間日産の経営全般に携わりました。恩知らずとは特に考えられていない国でです。そして突然、このショック、この扱われ方、この憎しみ、この復讐に遭いました。

二つ目の現実はフランスに見捨てられたことです。日本へは観光客として行ったのではなく、フランスの大企業の責任者として、フランスの利益が優位な連携関係の責任者として行ったのです。

数日後、突然彼らは、「フランスの最大の関心はこの連携と日本との関係を守ることだ」と言いました。

そうして私は路傍にうち捨てられたのです。

鼻が利き先見の明があると知られるあなたのようなやり手が、それを予期できなかったのはなぜでしょうか?

常に時々疑いを抱き、慎重にしています…。しかしすべての行動に驚いたのは本当です。特に決定も支払もされていなかった退職後の給与の約束など、誤解があったとはいえ、このようなことで逮捕されるとは想像もしないショックなことでした。実際、逮捕の理由はそれではありません。

これは大きな策略です。

逮捕の理由は日本人が、「ルノーに対するフランス国家の影響力とフランス政府の日本への要求にはうんざりだ」と言ったからです。そして彼らはその影響力を断ち切る唯一の方法は私を追い出すことだとすぐに認識しました。

ではあなたはスケープゴートなのですか?

私がスケープゴートかどうかはわかりませんが、動きはありました。別のやり方があったかもしれません。私は堅実で断固としていますが、強硬なやり方は好みません。(…)日本がこの連携を望まなくなれば、存続は難しいだろうとはよくわかっていました。

ですから、彼らがすぐに私に伝えていてくれれば、私は去り、このような破壊を避けることができたでしょう。なぜなら、私はもちろん被害者ですが、私だけではないのです。企業としての日産や企業としてのルノーも被害者です。いつか、この作戦を計画した小賢しい天才たちが全員責任を取らされることを願います。

カルロス·ゴーン氏、あなたは瞬く間に一人の人物から「取引材料」となりました。これについてどう述べられますか?

まず、これは不当な取引であり、私にとっては陰謀、非常に上手く仕組まれた計画です。日本政府と検察を結ぶ小さなグループから始まり、すぐさま集結した日本のマスコミの共謀で、180度状況が変わりました。逮捕されるまでは賞賛しかありませんでしたが、24時間で突然終わりました。

私は悪者、貪欲な独裁者とされました。これが驚いた日本の聴衆に向けられた説明です。私は逮捕後数か月間日本で過ごしましたが、東京を歩いていると人々はいつも何事もなかったかのようにとても親切でした。彼らは、17年間「ロールモデル」として示されてきたこの人物が、突然、卑劣なことばかり行い、酷い経営管理をした忌避すべき存在となり驚いていました。ご存じのように、参考となる経営に関する著書が複数あるにも関わらずです。理にかないません。

この本を書くのはあなたにとってカタルシスでしょうか?

私は自分を癒すためにこの本を著したのではなく、国際的な報道機関の自己満足の中で多くの嘘や操作が行われてきたことを知り、起こったことをありのままに伝える確固たるものがどこかに必要だったからです。最後にはいつも真実が勝利します。

この本だけでなく、3月か4月には異なる2冊目の本が出版され、その後ドキュメンタリーのテレビシリーズと、フィクションのテレビシリーズがあります。なぜなら、この話は極めて深く、非常に複雑で、私たちが生きる時代の複数の側面に関わっているからです。

全体を通して、最も不快な瞬間はありますか?

私の家族の扱われ方です。理解できません。

尋問で最も気に障った質問は何ですか?

気に障る質問などありませんでした。検察官から繰り返し同じことを言われました。「もしこの罪状について自白しなければ他の罪もあるのだから、自白した方が良い。…この態度を続ければ、あなたの妻や家族も探す。…」実際のところ、自分に不利が無かったとしても、疑いを持ってマスコミに名前を挙げられた時点で、もう手遅れです。

それは「人物破壊」のことでしょうか

そうですが、「集団的人物破壊」です。

このシステムは日本では「人質司法」と呼ばれます。私の命名ではなく、国連に採用されたものです。国連は4年前に既に日本の人質司法について指摘しています。

これに関して実に衝撃的なのは、日本が人権尊重を前提にヨーロッパとの自由貿易を含む国際協定を得ていることです。つまり、署名をして尊重しない。愚かなやり方です。

あなたはいわゆる「転落」が起きたとき、どのように感じましたか?

私は、3つの会社のトップの地位にあり、年間を通してスケジュールで一杯の生活をしていました。それが突然すべて無くなってしまったのです。突然拘置所に送り込まれて、何も持っておらず、時計も、ベルトすらなく、本が数冊あるだけ。独房にただ一人、そんな状態に一夜にしてなってしまいました。そのショックに耐えるのはとても辛かった。しかし、起きてしまったことには、対応していくしかありませんでした。

日毎にマスコミに「リーク」されたあなたについての情報は、日本の検察のお膳立てによるものと言われています。そんな中で、あなたは周到な準備により、言わば世紀の大脱走を成功させ、日本の当局へ大胆に反撃しました。あの脱出についてはどう感じていましたか?

正直なところ、私が日本を離れたのは挑戦的な意図によるものではありません。私は絶望、正義に基づく絶望から日本を離れたのです。日本のどこかで私に対する「死刑判決」が出されて、その刑が執行されようとしていたのです。観衆のいない死刑宣告です ― 刑務所に入れられ、判決が出るのに5年もかかり、その間にこれまでの生活は台無しになり、社会的な評判は失墜してしまい、なのに声をあげる機会すら与えられないのです。

これは、日産旧勢力や日本政府の一部と共謀した、日本の検察による悪意ある嫌がらせなのです。少なくとも日本で非常に強力な経済産業省のイニシアチブではないにしても、この種の事件は共謀なしには決して起きなかっただろうという点を忘れてはなりません。 

ジュファリ氏の件(サウジアラビアの実業家、ハルド·ジュファリ氏にゴーン氏から不正送金がなされた疑い)だけでなく、オマーンの件(オマーンの販売代理店への不透明な支払い)もまた注目を集め、検察があなたを拘置所に送り返す理由となりました。アラビア湾岸地域の人物にばかり焦点が当てられているようにも見えますが、この点はどう思われますか?

まず、検察側は私が中近東地域と関係が深いことを知っていたということがあります。私はかつて、中近東でのビジネスのためにレバノンに頻繁に来ていましたからね。

それに、私がアラブ世界から大きな共感を得ていたということがあります。私は、アラブ世界で数少ない偉大なビジネスリーダーの一人でした。そんな事情がありますから、検察は日本のディーラーをターゲットにすることもできたかも知れませんが、それではサウジアラビアやオマーンの人物らほどダーティな印象を与えられない、ということなのでしょう。

彼らは、私が多数のアラブ世界の人たちと友好関係にあることを知っていたので、意図的にあのようにしたのでしょう。しかし、私とアラブの友人たちとの間柄は妥協を伴うお友達関係などではありません。彼らは非常に優れたディストリビューターであり、ビジネスマンなのです。それについては異議はまったく唱えられていません。日本サイドは、「中東ではビジネス関係が他の国に比べて曖昧なところがある」と考えて、少しいかがわしい側面をほじくりだそうとしたのです。彼らはそうした印象操作を非常に上手く行いました。一連の動きは、社会的評判を失墜させることを専門とする会社が複数協力して計画されたものだということは明らかだと思います。計画には多額の出費がなされました。ブルームバーグによると、日産は推定500万ドルの損害に対し2億ドル以上を費やしたとされています。

日本の人たちへのメッセージをお聞かせください。

日本の皆さんに最初に申し上げたいことは、本当の私は、私を陥れようとした人たちが言うような人間ではなく、皆さんが17年間見てきた、そのとおりの人間だということです。第二に、この人質を監禁するような制度を廃止しなければ、日本は世界的な経済大国であり続けることも、人々に喜んで訪れてもらえる国であり続けることもできないということです。実際、大勢の日本人が制度の改革を求めています。

この本であなたは、日本に裏切られ、フランスに見放されたと書いていますね。最終的にあなたが見つけた落ち着ける場所はレバノンでした。レバノンは、今あなたが信頼できる唯一の国と考えて良いでしょうか?

それは否定できない事実です。レバノンのアウン大統領は、この問題に特に政治的関心を持ってはいませんが、非常に勇気のある態度を取ってくれています。私はルノーと日産の頂点にいましたが、レバノンの大企業のボスだったわけではないのです。それにもかかわらず、大統領だけが勇気ある態度を取ってくれました。日本の当局、日本大使に問い質したのは彼だけです。私の妻に会ってくれたのも彼だけです。今回の件ですばらしい対応をしてくれたサルコジ元大統領を除いて、フランスの当局者は誰も彼女に会おうとしませんでした。フランスは私を見捨てていない、という人は話を追えていません。またそもそも理解していません。

私が今日レバノンにいるのは、とりわけ、レバノン当局の側に誠実さと真摯さを感じたからです。例えば「この人がいったい何をしたのか、落ち着いて説明してもらえませんか?」というふうな姿勢なのです。

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