
フランク・ケイン
ロンドン:キリル・ドミトリエフ氏は、サウジアラビアと密接に連携して共同投資を行うロシアの政府系ファンド、ロシア直接投資基金の総裁だ。両国間協力への貢献が評価され、アブドゥル・アジズ国王功労賞勲章を授与された。そしてその彼が、G20サミットでロシアが何を期待しているかをアラブニュースに語る。
Q:あなたの見解として、リヤドでのG20 サミットから何が現れることを期待しますか?
A:我々は、G20 が新型コロナウイルスパンデミックに対する国際協調を主導すべきだと考えています。現時点では、数種類の有効なワクチンがパンデミックに勝利する唯一の方法であることは明確です。
世界保健機関(WHO)によれば現在、治験最終段階にある生産間近のワクチンが10種あります。ヒトアデノウイルスベクター・プラットフォームに基づくロシアのワクチン「スプートニクV」もそのひとつです。
しかし世界にとって、どのワクチンもそれひとつだけでは十分ではありません。ソリューションはいくつも揃えることが重要であり、どの国もワクチンのポートフォリオを備えることが必要です。シームレスな集団予防接種プログラムを実現させるべく、各国は様々なテクノロジーに基づく数種のワクチンを備えたポートフォリオを備えなければなりません。当然、治験済みで安全なヒトアデノウイルスベクターのプラットフォームに基づいたワクチンも、そのポートフォリオに加えるべきです。
我々は、G20が今後のワクチン政策の明確な指針を発表し、加盟国のみならず、それ以外の国のポートフォリオ作成にも役立てることができればと期待しています。また、来年初めには世界で集団予防接種を開始できるよう、ワクチンの世界的増産を促進するような決定がなされることを期待しています。
Q:サウジは新型コロナ危機のさ中に議長国を務めました。この状況に対処したサウジの指導力についてはどのように思われますか?
明らかに今回の議長国を務めるのはG20 創設以来最も厳しい任務でしたが、サウジアラビアのリーダーシップ、そして個人的にはサルマン国王とモハメド・ビン・サルマン皇太子のリーダーシップが、G20 の議題を推し進めていくにあたり素晴らしい仕事を果たしたと思います。特に、サウジの指導力の下、OPECプラスの減産合意への支援を通して2020年4月の原油市場安定化に寄与したG20 の役割は、素晴らしかったと思います。新型コロナパンデミックのさ中にあって、原油価格がバレル10ドルにまで下がれば世界経済にとって避けられなかったであろう混乱を回避させたことは、歴史的な決断でした。
Q:もしあなたがG20 のコミュニケの原稿を書くとして、最も欠かせない項目をひとつ挙げるとすれば何になるでしょうか?
A:我々は、G20 のコミュニケには経済復興計画に関する勧告を含めるべきだと考えています。しかし復興は、新型コロナワクチンがいつ入手できるかに大きく依存することになります。ワクチンの集団接種が可能になれば、経済活動が再開し、多くの分野でまた成長が見られるようになるでしょう。市場はすでに楽観的な見方を示しています。ファイザー、モデルナ、スプートニクVなどのワクチンの有効性データに関する肯定的なニュースを引き金とした急回復も見られます。それを考えれば、コミュニケには今後のワクチン政策に関する指針も含めるのがいいかも知れません。
Q:ワクチン「スプートニクV」に関する最新情報を教えていただけますか?
A:11月11日に、ワクチン「スプートニクV」の有効性が92%に達したとの重要な発表がありました。ロシアで現在4万人のボランティアが、スプートニクVの二重盲検無作為プラセボ対照第3相臨床試験に参加しており、そのうちの2万人以上が1回目のワクチン接種を受け、1万6000人以上が1回目と2回目の接種を受けています。
ワクチンの有効性が、初回の注射から21日後に得られた初回の中間解析で実証されました。試験中に不測の有害事象は観測されませんでした。参加者のモニタリングは現在も継続中です。
また、ロシアでは緊急使用承認制度に基づいて8月11日に世界初の新型コロナウイルスワクチンが登録されたことにより、医師や教師といったハイリスク集団のボランティアに対して、臨床試験外でのワクチン投与が可能になりました。
ガマレヤセンターによる中間分析データが、世界有数の論文審査のある医学雑誌上で間もなく発表されます。
スプートニクVの臨床試験はまた、ベラルーシ、アラブ首長国連邦(UAE)、インド、ベネズエラにおいても進行中です。
Q:スプートニクVが広く入手可能になるのはいつでしょうか?
A:ワクチンは現在、ロシア国内の4つの生産拠点で製造されています。本拠であるガマレヤセンターに加え、3社のロシア企業、ビノファルム社、ジェネリウム社、ビオカド社です。さらに2つの生産拠点を増やすことになっており、Rファルム社とファルマシンテス社が稼働させます。
ロシア直接投資基金は、インド、ブラジル、韓国、中国でスプートニクの国際的生産を保証する数多くの契約を締結しています。技術移転が完了して必要な機材がすべて設置されれば、我々の国際提携企業は年間最大5億用量の生産が可能になります。我々は現在、世界上位30社にランクされる大手製薬会社数社と共同製造の可能性について協議中です。
12億用量以上の予備申請を受けており、27カ国40事業者との合意を締結しました。現地の承認が下り次第、11月から12月にワクチンの提供開始を計画しています。メキシコに3200万、ブラジルに5000万、インドに1億、ウズベキスタンに3500万、ネパールに2500万、アルゼンチンに2500万用量を供給する予定です。
我々の調査によれば、ヒトアデノウイルスベクター(「スプートニクV」プラットフォーム)の信頼度は、他の非ヒトアデノウイルスベクター・プラットフォームに比べて9倍との結果が出ています。
Q:サウジアラビアとロシアの関係はどのように進展していくと思われますか?
A:サウジアラビアは引き続きロシアの戦略的パートナーです。我々はワクチン「スプートニクV」に関しても、サウジアラビアとは長期的パートナーシップを見据えています。
今年、サウジ保健省からモスクワのガマレヤセンターへ派遣団の訪問がありました。我々はすでに、サウジのある大手製薬会社と密接な提携関係を結んでいます。サウジのパートナーたちとは定期的にスプートニクVに関する情報を共有しています。