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地球を救うにはいくらかかるのか、そして誰が支払うのか

サステナブル投資「分野」の規模は、運用資産額で20兆から40兆ドルの間にまで成長している。(シャッターストック)
サステナブル投資「分野」の規模は、運用資産額で20兆から40兆ドルの間にまで成長している。(シャッターストック)
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10 Dec 2020 12:12:13 GMT9
10 Dec 2020 12:12:13 GMT9

アンソニー・ローリー、東京

地球を気候変動や他の全体的な脅威から救うにはいくらかかるのだろうか。誰が支払い、どのように救済を実現するのだろう。これらは今日の大きな、答えの出ない質問であるが、「サステナブル投資」が魔法のように解決をもたらしてくれるという思い込みが根付いているようである。

この思い込みは、もし企業が善良な企業市民のようにふるまえば環境関連を始めとする様々な問題は消え去り、我々はみな再び自由に呼吸できるという見方に基づいている。これはあまりにも短絡的なのだが、投資家たちはこのギャンブルに何兆ドルもの資金を注ぎ込んでいるのだ。

サステナブル投資(これは「グリーン投資」や「責任投資」など様々な呼び方があるが、現在では主に「環境、社会、ガバナンス(ESG)投資」に関連付けられている)は、南海泡沫事件のような状況までではないにしても、その目的は疑いようもなく「曖昧」だ。

定義にもよるが、サステナブル投資「分野」の規模は、運用資産額で20兆から40兆ドルの間にまで成長している。何千ものサステナブル投資ファンドが誕生しており、それらが金融業者にかなりの手数料を生み出している。

そのような中、環境を始めとする大きな問題は、政府がただ促進役を務めている間に金融市場や企業が対処してくれるだろうと考えている人々は、ほぼ確実に思い違いをしている。地球救済の資金調達には、基本計画がないのだ。

ほとんどの人々がこれに気付いていない。なぜなら、「地球を救え」の救援活動に投資したいと考える人々は(現在、実に多くの人々がそう考えている)、小さな一般投資家や慈善家から大手の機関投資家まで、アドバイザーによってサステナブル投資の分野へと誘導されてしまうからだ。

企業行為の改善や監視を望むこと、それがESGの本質なのだが、それを悪いと言っているわけではない。しかしこれは、今日の世界が直面している社会経済的問題の、たかだか部分的な解決策でしかないのだ。何が起こっているのか、鋭い質問が投げかけられなければならない。

取り返しのつかない気候変動がますます切迫し、新型コロナの感染拡大が医療や公衆衛生に巨額の支出が必要なことを浮き彫りにし、加えて、投資不足のために輸送や他のインフラが崩壊したり建設されなかったりしているというのに、協調的な行動計画が欠如しているのだ。

我々は、地球を救うためにどこへ到達すべきかを知っているが、そこに到達する道筋計画は、明確なビジョンを持ったより良い未来への前進というよりも、迫り来る災難からの混乱した撤退といったほうが相応しいものとなっていることが分かりつつある。「リーダーに従う」前進というより、「自分の身は自分で守る」という状況なのだ。

国連は、2015年に我々が目指すべき「17の持続可能な開発目標」を策定したが、しかし目標達成のための具体的な方法や手段を提言するには至らなかった。この隙間の中に、おそらくはこの曖昧な状況から利益を得ようとした金融業界が入り込んだのだ。

必要なのは、疑う余地なく国やグローバルレベルでの国主導の行動であるというのに、無数の企業が、地球を救うために少し手を貸せばすべてうまく行くのだと事実上信じ込まされている。タイタニック号の船長は、氷山から逃れる舵取りこそが必要なのであり、単にデッキチェアの位置の移動命令をすれば済むわけではない。

産業排出量制限、炭酸ガスの「回収」、炭酸ガス排出量取引市場といった構想は、公害や地球温暖化の削減に有益ではあろうが、これらを協調的な世界戦略の一環としてではなく個々の企業レベルで適用しても、その効果は限られている。

しかしこれがESGの取り組みの本質であり、このコンセプトは2004年に当時国連事務総長であったコフィー・アナン氏が主要なCEOたちに署名を求めたのが始まりだが、アイデアは、それから10年後に出された国連の持続可能な開発目標のニーズを満たすほどには前進していないように見える。

策定された目標が網羅するのは、気候変動対策、清潔な水と公衆衛生、手頃な価格のクリーンエネルギー、経済成長、産業発展、イノベーション、インフラの発展、持続可能な都市やコミュニティー、責任ある消費、健康と福祉、その他諸々だ。

この社会的、経済的な目標のショッピングリストのようなものは、国連に加盟する157カ国の政府間の、そして世界経済の官と民の間の、協調という新たな時代への手掛かりを与え、ビジョンを作り上げるために必要なことをまさに示したにように見えた。

国連は、これを達成するのは、世界の財源の規模を考えれば不可能ではないにしても、費用がかかると述べた。これにかかる支出は、2030年までの持続可能な開発目標の実施期間である15年間毎年5兆ドル、総額で約75兆ドルかかる可能性がある。

これはざっと1年分の国内総生産(GDP)に匹敵する大金である。しかしそれでも75兆ドルという額はほぼ確実に、基本的なインフラや、新型コロナ感染拡大を受けた医療施設の改善などの分野に必要となる支出を十分に考慮していない。

政府が公共財に資金を出すのが通例だが、しかし国連は、政府がその全額を負担することなどできないのはほぼ確実だと述べている。公共部門が年間に必要な額の半分以上を供給する可能性は低いだろう。

これはつまり、もう半分の額は、民間資本市場の救援団体や資本家から供給される必要があるということだ。年間約2兆5000億ドルとなれば、ここでも繰り返しになるが大金だ。しかし資本経済における民間貯蓄に存在が見積もられる270兆ドルに照らし合わせれば、この額も手強いとは思えない。

問題は、持続可能な開発目標に投資するのが簡単ではないということだ。「持続可能開発目標ファンド」というようなものがあるわけではないため、投資家たちは裏口を経由するか、ESGや、あるいは似たような間接的経路を通すしかない。つまり、資産運用会社がこの曖昧さから巨額の利益を得ることができるということだ。

東京を拠点とする金融アナリストのイェスパー・コール氏が言うように、「資産運用ビジネスにおけるESGの最大の特徴は、誰もそれを定義できない点」だ。これはつまり、善意の投資家たちからの非常に多額の資金が、真の優先分野からそれほど重要でない投資へと流用される可能性があるということだ。

必要なのは、個々の持続可能な開発目標義務をめぐる具体的な組織を置き、それらの事業体が、企業部門全体にではなく、目標とする対象に直接収益が行くような証券を発行するようにすることだ。金融系技術者にとって、そのような対象を工夫することはやりがいのある課題だ。

国際通貨基金(IMF)のクリスタリナ・ゲオルギエヴァ専務理事や、「気候の権威」であるマーク・カーニー氏(元イングランド銀行総裁であり現在は国連の気候変動関連金融特別顧問)は、気候変動対策には企業の「透明性」が必要であると述べてきたが、しかしサステナブル投資とは何であるかという点にこそもっと透明性が必要なのである。

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